奈良、吉野、熊野、堺茶旅2020(2)奈良を歩く

因みにYさんとは初対面だったが、何と彼女は3日前にNHK西川きよしの番組に出演しており、初めて会った気がしなかった。彼女は抹茶アートをやっており、その活動が認められ、呼ばれたようだ。コーヒーのラテアートはよく見るが、抹茶で行うとは初めて聞く。だがこれは中国の宋代からある伝統的な技法らしい。これについては少し調べてみたいと思った。

その新婚さんの家に私とUさんがまさにお邪魔してしまったわけだ。それにしてもこの古民家、2階の天井が低いなど、往時はどのように使われていたのか、その歴史が知りたくなる逸物でとても魅力的。そしてNさん制作の急須や茶碗なども置かれており、お世話になるには大変興味をそそる家だった。夕飯は2階で美味しく鍋を頂く。それから私が調子に乗って暴走茶旅話を展開してしまい、全員を寝不足に追い込んだ初日となった。

10月12日(月)奈良を歩く

今朝は短時間睡眠なのに寝覚めが良かった。広い縁側には陽の光がまぶしい。今日は京都へ行くUさんと別行動となり、私は和束へ向かうYさんの車で平城京跡まで連れて行ってもらい、そこから一人散歩が始まった。平城京といえば、奈良時代が始まった710年に遷都された都。唐の長安を模して碁盤の目のような道が並んでいたというがどうだろうか。今やその様子は全く分からない。

こういう話は資料館へ行けばすぐに分かると思ったのだが、何と今日は月曜日で休館だった。仕方なく、広々とした跡地を歩き回る。私は裏の方から入ったようで、正面の近い場所では、復元工事が行われており、往時の様子が見られるようになりそうだ。正門である朱雀門は復元されている。そして遣唐使船が復元されておかれている場所があり、当時の遣唐使に関する資料が展示されていた。だが残念ながら平城京を上手くイメージできなかった。

平城京跡からトボトボと歩く。30分ほど行くと、鑑真和上が建立した唐招提寺に到着した。このお寺、修学旅行で来たかもしれないが、名前だけで全く覚えていない。最近は鑑真を日本に呼んだ僧侶などの歴史も勉強しており(最澄、空海より前の遣唐使で茶を持ち帰った者はいないのか)、唐招提寺にも興味が出た。

この寺は戒律を学ぶ人たちのための修行の道場として作られた。そもそも鑑真が日本に呼ばれた理由は、日本には仏教は伝来していたが、戒を与えられる僧がいなかったため、仏教が乱れていたことによるという。現在でも奈良時代建立の金堂、講堂、宝蔵などが残されており、世界遺産となっている。

どんどん奥まで歩いて行くと、木々に囲まれた中に、鑑真和上のお墓、御廟がひっそりとある。元々コロナで参観者は多くないが、ここの静寂、風情はとても良い。鑑真については井上靖の『天平の甍』などに詳しいが、我々の想像を遥かに超えた壮絶な世界を思い描いてしまう。

更に10分ほど歩くと薬師寺があった。この寺は天武天皇によって飛鳥に建てられたが、平城京遷都で奈良に移された。東塔は奈良時代から現存するというが、何だか疲れてしまい、門の前を曲がると鉄道の駅(近鉄橿原線西ノ京駅)が見えたので、電車に乗ってしまった。

一度乗り換えて近鉄奈良まで30分ぐらいで行けた。駅には行基の像が建っている。そこから緩やかに坂を上ると興福寺に出る。興福寺といえば奈良公園の鹿、というイメージはあるが、寺自体をじっくり見たことはなかったように思う。興福寺は710年平城京遷都共にここに移された(建立された)藤原氏の寺。その後歴史の舞台には何度も登場する。遣唐使として渡った僧たちもここに関連しており、茶の将来との何らかの繋がりがあるのかもしれない。

急な階段を上ると、そこに何とも形の良い南円堂があった。観光客は少ないが、ここでは熱心にお参りしている人の姿が見られる。続いて中金堂が見える。今日は天気が良いので、いい雲が流れ、何となく映える。五重塔も健在だ。興福寺はかなり敷地が広く、ゆとりがあるため、公園を歩いているような気分になる。観光客がいないので、鹿も暇そうにしている。

東大寺まで歩こうかと思ったが、疲れてしまい、目の前にあった立派なスターバックスで休む。昨晩車で通りかかり、きれいなライトアップが気にかかっていた。外の席に座り、ただボーっと景色を眺めているのがとても心地よかった。東大寺他の寺へ行くのは諦めて休息に努める。やはりStay Homeで体力が落ちていることを痛感する。

午後は以前より一度は訪ねたかった茶荘、心樹庵へ行く。途中奈良茶飯などの看板に心ひかれたが、店は開いていなかった。奈良駅からほど近くには、昔の街並みがしっかり残っていた。そしてその中にひっそりお店はあった。これまで毎年1度、東京のエコ茶会で短時間顔を合わせるだけだったが、店主のYさん夫妻とはどこか通じるものがあり、是非ゆっくりお話したいと思っていた。

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