《雲南お茶散歩 2006》昆明、景洪(2)

2月12日(日)
(3)昆明2日目の朝

朝はゆっくり起きた。9時になっていた。昨夜F夫人からは昆明の観光地である花博物館(2001年に花博覧会の会場)や雲南民族村(雲南には少数民族が多い)に行こうと誘われていたが、これも断っていた。一つは彼らも疲れているはずで申し訳ない、もう一つ私は観光地に本当に興味が無かったから。

ホテルは朝食付きなので1階のレストランへ。ブッフェ形式は中国のどこのホテルも同じである。しかし食事をしている人々の顔が違っていた。中国人はあまり多くなく、パキスタン系と思われるファミリーが沢山いた。何故なのだろうか??偶々団体旅行に来ていたのだろうか??お陰でフルーツなどはきれいに食べられていた。私は粥をすすった。

そして外に出た。今日は日曜日であったが、両替をしようと銀行を探す。日本では日曜日は休みであるが、中国の銀行は大抵開いている。ホテルの斜め前に大きなビルの銀行があったので入ってみたが、中国銀行以外外貨の両替は出来ないと言われる。銀行が開いている理由は中国人の個人客向けのサービスだそうだ。

中国銀行を探し出す。取り敢えず市の中心部に向かう。大きな通りは立派な商店などが並んでいるが、一歩路地を入ると昔ながらの町並みが見える。道の両側に露店が並び、道に品物を並べる人々がいる。80年代の面影である。

やがて般龍江という川に出る。双龍橋という橋の袂に花が満ちていた。さすがに花の都。川沿いに歩いてみると老人が転寝していたりする。川面をじっと眺めている人民服を着た老人もいる。この風景は昔よく見た。

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少し行くと水を売る店が有る。中国では生水が飲めないので、一度沸かしたお湯を使うが、最近は豊かになり蒸留水を使う家庭が増えている。恐らく18?で10-20元と日本と比較すると破格の料金ではある。その水をどのようにして運ぶのか?見ると自転車の後方に両側に2つずつ収納できるケースを取り付けてある。成る程一度に4本自転車で運ぶらしい。お茶に興味を持って以来、水にも無関心で居られなくなった。

川沿いに犬が二匹繋がれている。昔は食べていたかもしれない犬を飼う中国人が最近は増えている。この二匹は胴体に服を着ている。ペットであることは明らかだ。犬はギャンギャン吼えている。繋がれていることが余程不本意なのであろう。何となく現在中国の状況を感じさせる。

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どんどん北に向かって歩いて行く。川から離れ、住宅街を行く。やがて金馬広場に出た。大きな2つの門に『金馬』『碧鶏』と書かれている。どんな謂れがあるのであろうか??広場は観光スポット化している。広場の道路と反対には土産物を売る商店が並び、中にはプーアール茶を売る茶荘もある。

南に行くと塔が見える。西塔。公園のようになった広場の奥に囲われている。849年に創建され、1499年の昆明大地震など数回の地震で倒壊し、現在の塔は1983年に再建されたもの。35m。塔には小さな凹みがいくつもあり、その中には1つずつ仏の像が入っている。塔の後方には古めかしい建物もあるが全体的にはかなり新しいイメージである。

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東の方を見ると遥か向こうに東塔が見える。そこまで行く間は如何にも観光地といった舗装道路がある。両側に商店があり、建物は皆新品である。残念ながら私はこういう光景が好きではない。確かに昆明も観光で潤っているのだろうが、如何なものであろう??

横道に入るとそこにも新しい城壁、新しい城門が見られる。全て昔の物を復元したのだろう。昆明の歴史とはどのようなものなのか??不勉強で何も分からない。確か三国志には諸葛孔明が西南の国を攻めたと思う。当時は南方の野蛮な国として描かれているが、そうなのだろうか??

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東塔。西塔とほぼ同じ形である。塔の横に茶花園がある。5角を払って入る。塔もこの花園の中にある。バラの花が咲く下にテーブルといすがある。決してきれいとはいえないその家具が輝いて見える。別のテーブルでは老人がお茶を飲みながら話し、また別のテーブルではトランプに興じている。この空間には理想の匂いがある。ゆっくり流れる時間がある。ここに座ってお茶を飲みたかったが、そろそろ時間である。ホテルに戻る。結局ホテルの向かい側に中国銀行があり、両替できる。両替先を求めた午前中の旅は意外性を持って終わる。こんな散歩が楽しい。

(4)円通寺と昼飯
昨夜F夫妻と昼食を取る約束をした。というよりFさん達が昆明の名物の麺を是非食べさせたいと誘ってくれたのだ。有り難い。待ち合わせ場所が円通寺の門前というのも面白い。念の為間違えないようにタクシーに乗ると『今日は正月15日だから人が多いよ。』と言う。そうか、今日は元宵節。

門前に到着すると確かに人が多い。入場券を買う窓口には人が溢れて、次々にお札を窓口に押し込んでいる。傍では乞食が手を出している。Fさんはまだ来ていないようだ。周りを眺めてみると線香を売る人、果物を売る人、様々な人々が市をなしている。

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Fさんと合流。寺に入る。円通寺は唐代に創建された1,200年以上の歴史を誇る昆明の古刹。円通山の麓にあることから途中で円通寺と改名される。門を潜ると何と下って行く。珍しい。下り切ると池が見える。池には放生と呼ばれる仏教の功徳として、亀、鯉などが放たれている。

池の前では所謂焼香が行われている。大勢の人々が線香を焼いて祈っている。更に奥にいくと宝殿がある。輝かしい仏像が安置され、人々が祈っている。その前には麒麟の像が両側に置かれ、皆が像に触れている。自分や家族の悪い所に触れると直ると言う言い伝えがあるそうだ。取り敢えず頭を撫でておいた。

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寺を出て道を渡る。向かい側のビルの1階に仏具を売る店がある。その一角にプーアール茶を売るコーナーがあった。Fさんは立派な箱を取り出す。上の段にはお守りや数珠などが入り、下段には餅茶、沱茶などが納められている。Fさんも関係して出来た豪華版だそうだ。お寺がお茶を売るなんて、と言う考えはもう古いかもしれない。中国では誰でも収益を上げて生きていかなければいけない。

写真を撮っていると店員の女性に怒られてしまった。確かに宗教関係の写真を撮るのには注意が必要だ。しかも店の商品や品揃えを撮るのはやはり拙かった。Fさんが取り成してくれたが、写真には注意しなければ。

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お昼は昆明でも美味しいと評判の過米線城というレストランに行く。日曜日の昼ということも有り、満席である。F夫人も加わり、3人で過米線を頂く。先ずは前菜として小皿が4品。これが美味い。山菜の漬物、セロリとピーナッツなど日本人には食べやすい。というより日本と同じようなものを食べているというべきであろう。

 

続いてスープ。鶏がらのスープでコクがある。ワンタンが入っている。あっと言う間に飲んでしまう。学生の時に近所の肉屋に鶏がらを貰って学園祭でスープを作ったことがある。その味に似ている。勿論こっち方が遥かに美味いのであるが。

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スープを口に入れていると大きな椀が来る。スープが入っている。麺が来る。分かれている。小皿に肉、魚、山菜、生卵などが盛られてくる。何故か菊の花まである。飾りかな??Fさん達は携帯に頻繁に電話が入り、その間を縫って麺と具を椀に入れている。ここに入れて半生で大丈夫なのかな??心配になりながら、入れた具を眺める。菊の花も入れる。

少し間を置いて食べてみる。スープが熱いのか、生で入れた肉や魚が上手い具合に温まっている。菊の花の香りが非常に良い。麺は日本のうどんのようで食べやすい。卵もいい感じになっている。駅の立ち食いうんどに生卵を入れた感じである。これもあっと言う間に片付ける。Fさんがお替りするかと聞く。何と替え玉が頼めるらしい。今回は腹いっぱいで遠慮した。このセットで一人20元だそうだ。ご馳走になってしまい恐縮。

店を出ると次の仕事が待っている。全てFさん夫妻のアレンジがスムーズなお陰である。店の横は昆明動物園である。今は野生動物園が郊外にあり、動物が少なくなっているそうだが、人通りは多い。ここで何と、今日の夜に行く西双版納景洪行きのエアーチケットを受け取る。旅行社の人間が待っており、大胆にも路上で金銭を渡し、チケットを受け取る。一瞬緊張したが、治安は悪くないようだ。夜8時に出発だ。しかしそれまでまだまだ時間がある。どうなるのやら??

(5)茶卸市場へ
ここでFさんと別れ、F夫人と二人でタクシーに乗る。どこへ行くのか??着いた所がどこかも良く分からない。するとF夫人が目の前のレストランを指し、『最近まで経営していたレストランだ』という。

羊肉料理を出していたそのレストランは繁盛していたが、家主から場所の一部返却を求められ止む無く人に譲ったという。今は別のレストランとなっていた。彼女はまたレストランを始めたいという。日本のラーメンはどうかと真剣に考えている。彼女の弟が日本に留学中アルバイトでラーメンを作っていたことを知る。兄弟で知恵を出し合って何かを作り出す、素晴らしいことではないか。私としては日本に過米線の店を出してもらった方が有り難いが、恐らくコストが合わないだろう。

そうこうする内にFさんが何故かバイクで登場。そしてプーアール茶の専門家であるという男性を連れている。FKさん。どうやら一緒にお茶の卸市場に行くらしい。昆明には2つの卸市場があるという。今回は南にある新しい方へ行く。

突然また男性2人がいなくなる。どうなっているのか?少し待つと何とFKさんがバンを運転して来た。急いで乗り込む。聞くとFさんは自家用車を持っていたが、脊髄を痛めてしまい、医者から運転禁止を言い渡されたらしい。

車に乗ること30分、康楽茶葉交易中心に到着。この2年前にオープンした卸市場には当初はなかなかテナントが集まらなかったが、その頃始まったプーアール茶ブームが追い風となり、現在308軒の茶荘が軒を並べる。広々とした敷地にはプーアール茶中心として、思茅、景谷、版納など雲南各地の地名を付けた看板が並ぶ。

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1軒の茶荘に入る。FKさんの親戚の店だという。早々に秘蔵のお茶が取り出される。しかし会話が全て雲南語(昆明語)で聞き取れない。FKさんは入れられたお茶をちょっと飲んで、直ぐに捨ててしまう。気に入らないらしい。私にはそんなに不味くは感じられないが。Fさんもここでは茶商の顔を出す。彼はこの商売を本格的に始めて2年とか。ある意味ではFKさんの弟子として修行中なのかもしれない。

もう1軒入る。ここはお客さんが多い。案内書を見るとここのオーナーは現在雲南省で最もプーアール茶を出荷している孟海茶廠の茶師を20年に渡って務めた女性だという。有名人らしい。店にはニコニコしたお姐さんがお客に愛想を振りまいている。何となく面白い。

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ここで餅茶の生と熟を飲み比べる。FKさんなどは生茶を飲むと胃が受け付けないという。生茶は30年ほど前に開発された物でそれまでは全て熟茶であった。飲んだ生茶は本当に緑茶のようであった。聞けば作って1-2年のお茶である。ここ昆明では香港や台湾で売っている所謂ビンテージ物などは殆どないという。殆どないから貴重なのであり、その辺に転がっていれば価値はない。地元の人は数年物を日常的に飲むのである。考えてみれば当たり前の話である。では香港や台湾にあるビンテージ物は一体何なのだ??

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その中で1984年作製の餅茶が出てくる。面白いのは餅の形にしたのは10年後ぐらいだそうだ。どうしてそうするのかは分からなかったが、現地に来ると色々と発見がある。やはり外地で売る時は情報が段々いい加減になり、伝言ゲームのように信憑性が無くなっていくものらしい。

この店はかなり広く、竹筒茶や正月飾りの茶などデザインが凝らされたものも売っている。ここで小さなサンプルを貰う。菊花プーアール茶。Fさんから日本人が好きなお茶はどんなものか?と聞いてきたので、さっきの過米線の中に入った菊花が気に入ったので、これを選んでみた。実際香りがよく、プーアールのかび臭さを消している。

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茶馬古道の話も聞く。FKさんから説明を受ける。店に有った雑誌に載っていたので確認する。この道は隋唐時代に始まり、シルクロードと同様の方式で雲南省の茶葉を遠くは西アジアにまで輸出していたもの。ルートは西双版納から大理、麗江を経由し、チベットにぬけると言う壮大なもの。また別ルートでは昆明から西安を通って北京まで行っている。

馬の背に乗せる茶葉として餅茶、沱茶の形が適していたような気がする。大量の茶葉を載せて、高い山々を越えて行く馬の姿を想像すると何となくワクワクする。行って見たくなる。

近年降って沸いたプーアール茶ブームである。この卸市場も開業当初は入居者が少なく、3ヶ月のフリーレントを付けて何とか入ってもらっていたが、最近は空きがない状況。プーアール茶の出荷量も倍倍ゲームの伸びを見せている。訊くと普通の店舗で年間3万元程度の家賃だそうだが、これから値上げがあるだろう。

プーアール茶は昔から香港や広東省などでは良く飲まれていたが、90年代に台湾人がお茶ブームの中でビンテージ物のある事に注目し、古い餅茶などを骨董品のように売買した。(他のお茶は新しい方が良いのでビンテージなどはない)40年物、50年物などのお茶が実しやかに店頭に並び、数十万円、数百万円単位で売買された。その流れが台湾人から香港人、香港人から大陸中国人に移ってきている。現在はお茶と何の関係もない人々がこの卸市場にも買いにやって来る。市場が繁盛することは喜ばしいことであるが、その内容については残念ながら首を傾げる。

(6)南塀街
FKさんの車で街中へ戻る。もう直ぐ景洪へ行く飛行機の時間であるが、ホテルをチェックアウトしていることもあり、Fさん達が町を案内してくれるという。ほぼ町の中心で車を降りる。

南塀街、広い道は観光用にきれいな街路樹に石畳。しかし一歩横道に入ると昔の中国であった。多くの屋台がひしめき合う。少数民族の多い昆明のこと、タイ族などにより竹筒飯など南の物品が運び込まれる。見慣れない木の実や草葉も売っている。漢方薬用であるらしい。

建物もレトロである。1階が商店、2階が住居という南国の典型的な造りである。木造のものもあり、屋根に瓦が載っているものもある。この辺りで一番古い建物は漢方薬屋として使われている。何となく効きそうな薬を売っている雰囲気がある。

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2億年前の石を売っている店もある。結構きれいで部屋の飾りとして使われているようだが、さすが2億年前を信じている人はいるのかどうか??雲南ならではといった感じで、なかなか面白い。

広い通りに戻ると例えば上海の南京路の遊歩道のようなちょっと洒落た道がある。中心には昔の昆明の地図が描かれており、足で踏みながら位置を確認したり出来る。昆明は古い町なのである。

般龍江の畔に出ると大きな牛の像が囲みの中にある。この辺の守り神のようで、大切に置かれている。以前は囲いがなく、寺の麒麟のように自分や家族の悪いところを触って拝んでいたようだ。観光客の増加と共に守り神を守る必要が出てきたのであろうか??

午前中に通った金馬広場に出たところで、Fさん夫妻と別れてタクシーに乗る。ホテルに戻って預けていた荷物を受け取り、そのまま空港へ。夕方のラッシュ時で渋滞が予想されたが、あっと言う間に空港に着いてしまう。

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