シンガポールで老舗茶商を探す2019(4)シンガポールを歩き回る

8月1日(木)
シンガポール散策

本日もまたバスに乗り、老舗茶商を訪問する。今回の場所はチャイナタウンからもかなり離れており、正直行けるのか不安だったので、事前に電話を入れてみた。これは安渓会館が役に立った。電話に出たオーナーは初めあまり乗り気ではなかったが、私が厦門の王さんとの繋がりで電話したと言うと、『会いましょう』と言ってくれた。こういうご縁も面白い。

 

バスはチャイナタウンを通り過ぎた。隣の華人女性が英語で『どこへ行くの?』と声を掛けてきた。観光客が行き先を間違えていると思ったのだろう。私がスマホで行先を見せると納得して『エンジョイしてね』と言いながら降りて行った。こういう親切も、日本ではなかなかない。

 

指定のバス停で降りてもそれらしい場所は見つからず、スマホ地図を頼りに歩いた。着いたのは完ぺきな工業団地の一角。目の前は倉庫だったが、会社名が私の目指したものだった。思ったより規模が大きく、従業員も何人もいる。何の用だと言われ、オーナーと約束していると言うと何とか通してくれた。事前に電話していなければ門前払いだったろうか。

 

オーナーの魏さんは例の『新嘉坡茶商公会史略』を編集した人で、公会にも大いに関わり、また歴史にも詳しい人だった。既に公会のオフィスもなくなった今、公会の資料、辞めていく茶商の残したものも含めて、後世に残そうとあの本を書いた。当然膨大な資料があり、それは大変な作業だったという。

 

だが最近は滅多に取材は受けないらしい。皆がいいように歴史を書いてしまう現実を好まないようだ。私も厦門の王さんがいなければ会うことはなかっただろう。王さんが魏さんを紹介してくれなかった理由も何となく分かった。それでも会ってしまう、それが茶旅というものだ。

 

 

 

 

魏さんの会社、南苑は1960年に設立された。それ以前から茶業は行われており、ちょうど対中国向け購買会社、岩渓茶行が設立された年だから、これと関連があるらしい。昔に比べれば規模は縮小しているようだが、小売りはせずに、卸に専念していて、業務は継続されている。ただ将来については、はっきりした展望は見えてこない。

 

魏さんと別れてまたバスに乗る。今度は国立博物館へ行こうと考えた。シンガポールのバスは本当に便利だ。また一本で近くまで行けた。既に昼は過ぎていたので、その辺でランチを食べる。どうやらチェーン店らしい。メニューにチキンカツ麺があり、思わず注文する。これがなかなかイケる。セットに付いてきたコーヒーとも合う。不思議な融合だ。

 

博物館は立派な、100年以上前の建物だった。ただ入場料がS$15もして、ちょっと躊躇したが、思い切って入ってみた。年代ごとにきちんと展示が分かれており見やすい。老舗茶商の展示などもある。コーラは1960年代には既にあったが、氷はいつ頃一般に普及しただろう?

 

シンガポールの大体の歴史が頭に入ってくる。1965年この国は独立したのだが、それはこちらの意志ではなく、マレーシアから捨てられた、という説明が意外だった。もう一度勉強し直す必要を感じる。当時の東南アジアの各国情勢は、決して今の尺度では測れないと思われ、この辺の都市間の歴史にも大いに興味を持つ。

 

ついでに近くにあるペラナカン博物館にも寄ってみようと出向いたが、何と改修工事中で閉鎖されていた。ペラナカンの歴史を合わせて考えれば、華人の歴史が自ずと見えてくると思ったので残念だったが仕方がない。更には1㎞以上歩いて、アジア文化博物館にも行ってみたが、疲れてしまい中に入らず、しばらくは外で川を眺めていた。ラッフルズがシンガポールに上陸して今年がちょうど200年であることを知る。

 

更には川沿いを歩いていき、ボッキーに出る。20年ぐらい前に家族旅行で来た時に、知り合いとここで食事をしたことが何となく思い出された。先日訪ねた源崇美など数軒の茶荘は、元々はこの付近にあったらしい。今はスイスホテルになっているところなど、如何にもそれらしい。貿易商は必ず川沿いを抑えるので、多分間違いはない。

 

最後にクランキー付近を散策した。かなりの暑さの中、よくもこんなに歩いたな、と自分で驚いてしまった。何とかバス停を見つけてバスに乗り込む。今日も図書館で勉強しようと思ったがその気力はなく、とにかく宿へ帰った。元は4日ぐらいで去るはずだったシンガポール。意外と楽しいので延泊することに決定。

 

夜は先日会ったNさんと待ち合わせて、ゲイランで飲茶を食べる。焼売も餃子も何となく美味しく感じられる。特に豚バラ炒飯がうまい。今日は相当体力を使ったので、食べ物がどんどん入っていく。ゲイランの夜に賑わいは相変わらずで、中国人観光客だけでなく、地元民、在住日本人もやって来る。やはり食事が安くて旨ければ人は集まる。

 

 

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