華人と行く安渓旅2019(6)元気な96歳に会う

6月18日(火)
更に歴史を知る

今朝は先日もちょっとお会いした張彩雲の親族で、張水存氏の息子さんと再会する。目的は今回紹介してもらい、無事に会うことができた大坪の張秀月さんに関する報告であった。水存氏と秀月さんはいとこに当たる。そして合わせて、5階建てビルの上に水存氏が書いた張家の歴史の碑を見たことも伝えた。

 

張一帆氏から、今回さらにこれまで知らなかったいくつかの情報を得ることができた。これは秀月さんと会って、彼女が言っていることを確認する過程で、出てきた新事実だった。勿論家族内のことであり、公にする必要はないのだが、『なぜ彼女はこう言ったのか』『なぜ大坪の秋月さんとヤンゴンの兄弟は疎遠なのか』などを理解する上では重要なことだった。やはり歴史は足で確認していくことも大切だ。

 

張源美の屋号、白毛猴についても、これはあくまで茶の品種名であり、他にもこのマークを使っていることなども分かる。張源美については、既に3回の連載を終えたが、どうしても秀月さんの現状など、歴史に翻弄され、埋もれて行った歴史を理解したいと考え、もう1回書くことにした。

 

昼ご飯に何を食べるか。以前樟州に行った際に食べた麺が美味しかったので、樟州麺を探して歩く。ようやく見つかった店の味も、私の意識している麺とはかなり違う。よく見ると隣のOLさんたちは土鍋麺などを食べている。今度はこちらを試してみたいと思う。まあ麺は、食べ過ぎないでちょうどよい。

 

午後は昨年一度訪ねた張乃英さんの家を再訪した。張さんも大坪の出身であり、前回は台湾木柵に鉄観音を持ち込んだ張乃妙についてヒアリングしたのだが、張彩雲についても知っているだろうと思い、聞きに行ったわけだ。やはり彼らは張家の資料を持っており、その中には彩雲の長男、樹根が周恩来と会っている写真などもあり、かなりの収穫があった。張さんも私が張彩雲の歴史を調べていることを喜んでくれているようだった。

 

更には中国茶業界の泰斗、張天福氏との交流についても訪ねたところ、現在も存命で一番親しかったのは、李さんだと言い、何といきなり電話を掛けてくれた。そして明日の朝会いに行く段取りまで付けてくれたのは、何とも有り難いことだ。実は李さんには会いたいと思っていたが、ここでご縁ができるとは。

 

乃英氏の息子も、歴史や文化に大変興味を持っており、張家一族の歴史を掘り起こしているほか、閩南語と日本語の相関性などについても、その研究成果を発表しているのには驚いた。日本語と台湾語は近い、それは台湾統治の影響もあるのか、などと近視眼的な感覚でいたが、その大きな流れの中では実に興味深い歴史が出てきそうだ。

 

6月19日(水)
96歳に会う

翌朝は早く起きて、昨日言われた場所を目指してバスに乗る。思ったよりスムーズにバスが動き、予定より早くバス停に着いた。李冬水さんは96歳だと言うが、何とバス停まで迎えに来てくれるという。それは申し訳ない、というより、96歳では歩くのも大変だろうと勝手な心配していたのだが、それは全くの杞憂に終わる。

 

私の前をスタスタと軽快に歩いていく老人がいたが、どう見ても80歳、いや70代にしか見えなかった。だがその人がバス停でキョロキョロと人を探していたので、思い切って声を掛けたところ、まさに李さんだったので、本当に驚いた。背筋は伸びており、腰も曲がっていない。

 

李さんは、やはり安渓の生まれで、家が貧しく、9歳から14歳までマレーシアのペナンに働きに行ったこともあるという。その後独学し、更に農業経済の勉強のため大学まで行った努力家だった。そして解放後の1952年、福建省農林庁に勤め始め、その時の同僚が張天福氏だったという。張氏はその後右派として迫害されるが、李さんは旧正月の初日は欠かさず張氏の家を訪ねて年賀を述べていたことから、張氏から『真の友人』として遇されていたらしい。

 

李さんの健康の秘訣はウオーキングや水泳などの運動だと言うが、体だけでなく、頭も気力もすごい。実は昨晩、彼は張天福氏に関する思い出や出来事などを、紙に纏めてくれ、私に渡してくれたのだ。こんな元気な96歳、考えられない。そして何よりその誠実さが素晴らしい。

 

李さんの中国語は非常に標準的だった。もし厦門や安渓で過ごしていたら、こうはならなかったと思う。長年福州で生活していたからこその中国語だろう。私にとっては、介添え者なしで、はっきりと理解できるのがなんとも嬉しい。そしてその話の内容は、苦労してきた人だからこそ、と思わせるものが随所にあった。

 

因みに李さんのお子さんは日本に留学し、日本企業で働いていたらしい。一緒に朝ご飯でも食べようという李さんのお誘いは嬉しかったが、中茶のお店で李さん持参のお茶を頂いただけで十分だった。漳平水仙、実は張氏も李さんもこのお茶が好きだという。理由は『昔の茶の味がするから』だそうだ。

 

またバスで30分ほど戻り、ホテルで休息した。このチェーンホテルの常連へのサービスは実によい。チェックアウトは午後4時でよい。フライトは午後5時だから、何とも有り難い。昼に鴨肉定食を食べに行き、更にフラフラしてからホテルを出て空港に向かった。今回は前回に懲りて、厦門航空にしたので、台湾から出るチケットを見せろなどとは言われず、さらっとチェックインして、さらっと搭乗、松山空港からフラッと宿泊先に戻れた。これだと厦門はやはり近いな、と感じられる。

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