台湾茶縁の旅2014(3)北埔 東方美人の里で蜜香を

3月18日(火)

3.北埔

北埔まで

翌朝はその北埔へ行く。Sさん、Iさん、S女史の3人は同じホテルに泊まっており、タクシーで台北駅へ向かっていた。実は北埔にどうやっていくのか、は分かっていなかった。私の旅としてはごく普通のことだが、日本人チームとしては異例かもしれない。取り敢えず電車で新竹まで行くという。だがSさんから電話が入り、『このタクシーで北埔まで行くことになった』という。運転手と話すと、『電車を使い、新竹からバスで北埔まで行くことを考えたら、4人でタクシーに乗った方が効率的』との結論に達したらしい。私は指示に従うだけ。何しろ北埔がどこにあるのかさえ分かっていないのだから。

 

駅前で落ち合う。朝ごはんを買うというので駅に入り、Sさん達はスタバのコーヒーとミスドのドーナッツを買っている。何だかこれでは日本だな、と思ったが、私は不要なので黙っていた。素晴らしいのが運転手にもちゃんと渡していること。この辺の気遣いはさすが、凄い。

 

車は一路高速を走る。昨日通ってきた空港へ向かう道を入らず、その先までどんどん行く。高速は空いていて、スムーズに進む。どこで高速を降りたのか、ウトウトしていると何と北埔に着いてしまったらしい。僅か1時間、確かにこれなら車が速い。料金は1台1600元、もし電車とバスに乗ったら、一人300元ぐらいかかるのだろうか。まあ楽ちんで着いたので、良かった。

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水井茶堂

北埔の街、と言っても何もない所に見えた。そして4人の誰もが、この街のどこへ行ってよいか分からない。ではなぜここへ来たのか。それはこの街が東方美人と呼ばれる茶の集積地だからだった。でも何の手がかりもなしにやってきた。如何にも私の旅なのだが。まず目についた慈天宮にお参りする。平日の午前中、観光客は誰も歩いていない。地元の人も殆どいない。実に静かな宮の中。皆神妙に拝む。これからいいお茶に会えますように、という祈りだろうか。

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この街には客家の人々が住んでいると聞く。そして古い街並みが最近台湾人の人気で週末は観光客が結構来るとガイドブックにも書いてある。るるぶにも載っている場所だ。だがちょっと歩いて見ても、何も見いだせない。お店に『東方美人』と書いてあるところはあるが、お店をやっている気配もない。そういえばエコ茶会でお世話になっているあるきちさんに先日東京で会った時、『北埔に行くなら水井茶堂に行くだけでいいですよ』と言われたのを思い出す。るるぶにもその店は載っていたようで、何とか探し出す。

 

非常に凝った作りの入り口、中に入ると所々日本家屋を思わせる、実に独特の造りの家が建っていた。部屋へ入ると、何となく昔の学校の教室を思い出す。とても落ち着く空間があった。そこに居た女性がゆっくり見てね、と声を掛けてくれた。東方美人もいくつか置いてあり、また北埔付近のお茶の歴史が書かれた本などもあった。もっと知りたくなり、そこに偶々やってきたオジサンに声を掛けた。驚いたことにオジサンは相当詳しく、説明してくれた。彼がこの店のオーナーだったが、普段は奥さんと妹さんが店を見ているらしい。

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Sさん、S女史の2人の美女がいたせいか、オジサン、お話に段々熱が入ってきた。何と通訳は私。彼のノリについていけないほど。そしてどんどんいいお茶が出て来る。お茶屋さんに行く時は美人と行くのが良い、と心底思った。本当に香りのいい東方美人が出てきた。甘い香り。蜜香とは何なのか、これは言葉の説明ではなく、実際に体験するのが良い。品評会で賞を取ったお茶が出てきた。これが本当の自信作だというのも出てきた。確かに既に我々は完全に虜になっていたのかもしれない。出されるがままに飲み、そして香りに浸る。

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平日なのでお客は殆ど来なかったが、1組だけ日本人女性がやってきた。隣の部屋の椅子に座り、擂茶を頼んで作り始めた。それを見たSさん達は、そちらへ移動し、何と彼女らが擂茶を混ぜているところを写真に撮っていた。擂茶は客家の飲み物、豆類やゴマ、緑茶葉等を擂り20種類もの漢方類を混ぜ、茶を注いで作るものらしい。自分で作るのが面白いとか。

 

永光紅茶、日本統治時代、この付近で作られ、ヨーロッパなどへ輸出された紅茶の古い缶を見せて貰った。この辺に歴史が感じられる。日本人も台湾人も飲まないお茶を作る、外貨獲得政策、植民地の現実が見えてくる。この辺の歴史はオーナーが本にも書いており、とても詳しい。

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実はこのお店、母屋以外にも茶室があり、茶道具なども展示されている。とてもとても広い空間がある。更には向かいの家にもお店?があった。オーナーは元ファッションデザイナーだというが、確かにおしゃれな空間である。

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何と3時間半もここに居た。あるきちさんの言ったとおり、『ここだけ行けばよかった』らしい。腹が減ったが移動しなければと思っていると、オーナーが『名物の麺を食べていけ』と言い、奥さんが我々を食堂へ案内してくれた。この北埔食堂、とてもレトロで気になっていたところ。何と100年以上経つ古民家を改造したとか。

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店の中もレトロ。骨董品のような家具が並ぶ。既に午後2時でお客はいなかったが、電話していたのか、我々が到着するとすぐに客家板條と呼ばれる平べったい米麺が出てきた。これがまたウマイ。スープもあっさりしており、あっという間に平らげた。代金を払おうとすると『茶屋のオーナーのおごりだ』と言って受け取られなかった。何ということだろうか。

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