遥かハバロフスクに茶旅する2019(1)ルーブル調達に失敗

《遥かハバロフスクに茶旅する2019》  2019年3月14-18日

3年前に突き付けられた課題。それは明治時代に九州茶をシベリア、モンゴルに売り込んだ男の足跡を知りたいという、ある意味で途轍もない要求だった。私のところに話しが来た理由は『台湾で亡くなった』というそれだけだった。それでも台湾サイドでの調査は困難を極めたが、少しずつ前進していた。

 

ただ本題であるロシアはいけない。ロシアは言葉も通じず、文字も読めないことを3年前の万里茶路の過酷な旅で存分に味わっていた。しかも120年も前の日本人の足跡など追えるはずもなかったので、残念ながら早々に諦めていた。

 

最近ロシア極東に行く人が増えているとは聞いていた。ビザも緩和されているらしい。地球の歩き方も最新版が出るという。その取材をしていたNさんとは以前2-3度会ったことがあり、何となく、『ウラジオストックかハバロフスクで歴史に詳しい人を知らないか』と問い合わせた。

 

すると3日ほどして、『ポボロツキーさんから「あなたの探しているハバロフスクの可徳商店のあった場所などは、分かっているので、来るなら案内する」との完璧な日本語のメッセージを受け取った』という何とも驚くようなニュースがもたらされた。しかもポボロツキーさんは、私が月刊茶に書いた『可徳乾三』についての話も既に読んでくれたというではないか。彼は一体どんな人なのだろう、などとは考えず、これは行くしかあるまい、と日程を調整する。

 

3月14日(木)
ハバロフスクへ

ロシア極東、北方領土問題などで緊張しているかと思えば、ロシア側は近年日本人に対してビザを緩和していた。ウラジオストック、ハバロフスク、サハリンの内1か所だけの訪問、8日以内であれば、PCで申請書を打ち込めば、3日ほどでビザがメールされてきて、それを印刷して持ち込めばよいという。3年前はロシアの旅行社から招聘状を取り寄せ、それを持ってロシア大使館に行き、数日待って4000円払ってビザを取得したことから考えれば、とんでもなく楽だ。可徳の足跡はウラジオストックにもあったが、今回は取り敢えずこのビザを使い、ハバロフスクだけに行く。

 

フライトも調べてみたら、成田からハバロフスクへの直行便が飛んでいる。しかもフライト時間は2時間40分と表示されており、そんなに近いのかと驚く。これなら台湾へ行くより近い。私の極東ロシアへの心理的な距離はかなり遠いものがあったが、実際の距離は驚くほど近いのだ。

 

成田まで行き、S7というロシアの航空会社を探してチェックインする。すると係の女性は私が印刷しておいたビザを詳細に確認して、更に上司にも見せに行って何とか発券にこぎつけた。あれ、ビザ緩和から結構経っているのにどうして、と不安が過る。預け荷物の料金は予約の時に払っていたので問題はなかったが、この航空会社はロシアのLCCだとやっとわかった。

 

搭乗時間に行って見ると並んでいるのはほぼロシア人だった。S7は機体の色が独特、企業カラーらしい。機内は完全なアウエー状態。CAは英語が出来るので救われるが、ロシア語の渦に巻き込まれる。機内食はLCCながらサンドイッチとドリンクが出た。ちょっとフラッと寝ていると、もう着陸態勢に入っている。実質搭乗時間は2時間ちょっとだった。因みに時差はハバロフスクの方が1時間早い。

 

ハバロフスク空港のイミグレは混むので早く並べ、とどこかに書いてあった。確かに皆が先を争ってイミグレに突進している。だが意外とそのスピードは速かった。それでも私の番になると緊張する。もしここで入国拒否されたらどうなるのだろうか。これも案に相違してすぐに解放され、むしろ荷物が全然出てこないことにいら立つ。ここで初めて日本人出張者らしい人を2-3人見掛け、ちょっと安堵する。

 

荷物を取り出し、税関を通る。基本的に荷物は何もチェックしないのだが、パスポートを見た女性職員がいきなり『マネー』と言ったのにはびっくりした。所持金はいくらかと聞いているのかとも思ったが、どうもそんな雰囲気ではなかった。『なぜ?』と英語で問い返すとそのままパスポートを返してきたのは何だったのだろうか。20年前ではないのだ、袖の下を要求したとも思えないが。

 

出口を出ると、この空港が如何に小さいかを知る。まずはルーブルを調達しなければならない。両替所はなく、ATMが1台あるだけ。そこに中国の銀聯カード、ビザカードなどを入れてみたが、全て最後のところでスタックして、お金が出てこなかった。シムカードを買うところすらなく、国内線ターミナルへ行けと言われ、何と外へ出される。現在新ターミナルが建設中なのだろうか、その向こうに国内線はあった。予想していたより寒くはないが、すでに日が暮れようとしており、不安が募る。

 

国内線でもATMからお金は出なかった。そしてシムカードを買おうと店に入ったが、こちらもクレジットカードの読み取り機が壊れていると言われ、購入できず途方に暮れる。3年前のロシア旅行で残っていたルーブルを持っていたが、僅か300ルーブル。それではカードは買えず、更にタクシーにも乗れない額だった。

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