島根横断茶旅2019(3)奥深い出雲へ

ちょっと早いお昼を食べようかと、かんべの里という場所へ行く。そこは20年前に歩いた神魂神社の近く。出雲風土記の世界を味わえるとても良い神社だった記憶がある。その時はかなりの距離を歩き、神社とは何か、などを考えていた。かんべの里は道の駅のようなところだったが、土曜日のせいか、大変混んでおり、昼ご飯を食べ損ねて去る。

 

宍道湖を回り、車は出雲方面に出ていく。30分ぐらい行くと山道を登り始め、かなりの山の中に着く。そこにはコテージなどの表示があり、一瞬ペンションにでも来たかと思ったが、よく見るとお寺だった。一畑薬師。入っていくとすぐに『お茶湯』があり、お茶を掛けてお参りする。番茶もそこで販売していた。薬師というぐらいだから薬と関連があり、お茶との関連も垣間見える。

 

実はかなり大きなこのお寺。本堂からは読経が流れてくる。仏像が並んでいるところを見ていると何と『赤塚富士夫、天才バカボンのレレレのおじさんのモデル』と書かれた像があったので驚いてしまった。注荼半諾迦というひたすら掃除をして、人の心の汚れは落ちにくいと悟ったとある。もう少し行くと水木しげるの漫画に出てくる『のんのんばあ』の像もある。何だか観光地に来てしまった感が強く、少し違和感はあるが面白い。

 

お腹が空いている。少し下ったところにお店があるというので車で向かう。本当は階段で行けばよいのだが、帰りの上りが怖い。お店には番茶の大きな袋が売られており、『この辺の人は800gも入っているものがお得だから買うのよ』と言われて、この周辺の番茶文化を知る。温かいのと冷たい出雲そばを両方頂き、別の店でまんじゅうも食べて、お茶も飲ませてもらい満足。

 

そこから山道を10分ぐらい下ると茶畑が見えてきた。ここが一畑番茶の畑かと思ったが、防霜ファンがあり、寒冷紗が掛かっており、玉露でも作るのかと思うような設備になっている。しかも茶樹は若く、最近開拓されたようにも見える。この辺りにも新しい動きがあるのかもしれない。

 

更に30分ぐらい走ると、寺の入り口が見えてきた。鰐淵寺と言い、弁慶修行の地とある。武蔵坊弁慶は出雲の生まれだった。京都に出る前にこの寺にいたようだ。ここは1つの山全体が寺になっており、かなり広い。ただ入り口で入山料500円を徴収するというのは如何なものだろうか。推古2年(594年)開山、天台宗の古刹とはどういう意味だろうか。我々は茶旅中で時間もないのでパスしていく。

 

山登りを続けていくと、唐川という場所に着く。とてもきれいな茶畑が並んでおり、思わず写真を撮る。Uさんによれば、ここがぼてぼて茶の番茶を供給している地区だという。農家のおじさんの言葉も訛りが強くて少しわかり難いが、そこがまた情緒があってよい。ここにはまだかなりの茶農家が残っており、春にはお茶祭りも開かれるという。『今茶はないよ、春においで!』と言われ、また来たくなるような風景を去る。

 

田舎の路は分かり難い。ナビもあまり役に立たない。同じ場所をぐるぐるしていたが出られない。いつの間にか辿り着いたのは、韓竈神社。出雲風土記にも登場する由緒ある神社。名前からして朝鮮半島から渡来した人が作ったものだろう。いや、この辺は半島と近く、ゆかりの場所は沢山あるはずだ。

 

神社は高いところにあるようだが、石段は滑りやすいので、上るのを諦める。船石があるというので、小川の横の道を上がっていく。船石と言えば、高橋克彦の小説ではUFOということになっているのを思い出す。小さな滝などもあり、自然に満ち溢れていたが、夕方ということもあり、ちょっと神秘的で恐ろしい雰囲気もある。何かに付かれたように歩いてしまい、Uさんに『行き過ぎです』と言われるまで気が付かなかった。大きな石もあり、いわゆるパワースポットなのだろうか。

 

今日はどこに泊まるか決めていなかった。Uさんがネット検索すると、我々がこれから向かう西の方には安くて手頃な宿はないようだった。今日は土曜日なので、既に満員なのだろうか。仕方なく、出雲市に戻り、宿泊先を探す。辿り着いたのは、郊外のホテル。何と地元の人がサウナや岩盤浴に来るところの上がビジネスホテルとして泊れるようになっていた。週末は出張者の宿泊もなく、閑散としている感じだった。

 

夕飯を食べる所もあまりなく、名物を食べるのは早々に諦め、普通の食堂に入った。『かつ柳川』というメニューがあり注文すると、いわゆるカツ煮、かつ卵とじが出てきた。柳川とは、ゴボウが入っていれば柳川なのか、それともこの鍋を使っていれば柳川なのか、地域性も含めてちょっとした考察をした。

 

更にはUさんと人生について語り合っていると、あっという間に閉店の時間なり、宿に帰ってサウナにでも入ろうかと思っていたら、何と既に時間を過ぎていて入れなかった。女性用岩盤浴は遅くまでやっているのになぜ、と思いながらも、少し疲れていたので、すぐに眠りについてしまった。

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