島根横断茶旅2019(2)松江でぼてぼて茶

街中にある「はんのえ」というお店に入り、ぼてぼて茶碗などを見た。抹茶茶碗とさほど変わらない。茶筅は奈良の高山町産だという。ただ扱っているお茶は地元産ではなく、ぼてぼて茶の由来についても収穫はなかった。最後に出雲大東町の方まで出向く。ここには20年以上前、須賀神社の総本山を訪ねてきたことがあり懐かしい。神社は立派な鳥居などが出来てかなり変わっているようだった。降りてゆっくり眺めたかったが、茶旅にはその時間もなく通り過ぎた。

 

藤原茶問屋を訪ねる。ここで島根茶の歴史について、教えを乞う。藤原さんはお茶作りにも熱心であり、地元の茶の歴史にも熱心だった。大東茶の起源は松平不昧公がこの地に来て、番茶を飲んだことから始まるらしい。250年の歴史あるお茶。水もよい土地だったという。古い茶業史資料が出てきて面白い。お茶も美味しく頂く。

 

長い一日のドライブを経て、車はついに松江市内に入った。松江に来たのも20年ぶりだが、街の様子はそれほど変わっていないように見えた。駅前のホテルを予約しており、チェックイン。思ったよりずっと良いホテルで、パッケージツアーの良さを知る。続いてUさんが急きょ泊ることになったゲストハウスを探したが、なかなか見つからず苦戦する。

 

それが済むと、Iさんの店に向かった。Iさんとは5年ほど前、香港、広州で一緒に旅をしており、その後彼は故郷で中国茶荘を開いていた。一度は訪ねたいと思いながら、開店して5年以上、来る機会がなく過ぎてしまったが、ついに今晩実現した。お店は茶町と書かれた通りに面していたが、その通り自体、多くの店が閉まっていた。せっかく茶町なのに、茶の雰囲気はない。

 

お店の中はかなりきれいで雰囲気が良い。お茶の種類も豊富で、お客さんも多いだろうと思って聞くと『松江は保守的で、新しい物に手を出す人が少なく、中国茶の認知度が非常に低い』というではないか。これには正直びっくり。松江と言えば茶文化というぐらいだから、さぞや各地のお茶に精通しているものと思っていたが、全く様子は違うようだ。

 

隣の鳥取や広島から来るお客さんもいるというのに、地元の人が来ないとは困ったものだ。それでも昨今の台湾ブームなどもあり、豆花を出すなど工夫をしており、興味を持つ人は増えているらしい。外部への出張なども行っているようだが、是非店を続けられるようにして欲しいと願う。

 

3人で夕飯を食べに行く。私の泊まるホテルに車を駐車したところ、宿泊代とは別に一晩1000円の駐車料が掛かるというので驚いた。日本というのは本当に恐ろしいところだ。それから歩いて、松江名物のおでんを食べに行った。ところが今日は金曜日の夜、8時過ぎに店に入ったところ、もうほとんど食べるものは残っていないという。

 

あり合わせのおでんを注文してつまんでいると、いつの間にかお客さんはいなくなっている。まだ腹も満ちていなかったので、今度はしじみラーメンを食べに行って見る。しじみは宍道湖の名物だが、ラーメンがあるとは初めて知る。しじみが金属の笊に分けられて出てきたのはちょっと驚く。味は意外とうまい。長い1日目はこんな感じで暮れていく。

 

3月9日(土)
松江から出雲へ

泊まっていたホテルは快適だった。ビジネスホテルではあるが、東横インなどからすると2段階も上と言う感じだ。昨晩帰る時に酔っぱらったサラリーマンが『今回の出張、ここに泊まれてうれしいです』と大声を出していたのを思い出す。朝食も充実しており、和食にオムレツまで付けてもらい、朝から嬉しい悲鳴?

 

今日はまず、ぼてぼて茶を実際に飲んでみることにした。お城の堀端にあるお店へ行くと、堀沿いの外の席に案内され、ぼてぼて茶がやって来た。茶碗に既にお茶が入っており、具として、豆腐、黒豆、高菜など7種類を入れて、塩も振る。このお茶は番茶だという。茶筅を茶碗にぶつけるのはバタバタ茶と同じ原理だ。

 

味はかなり飲みやすいのだが、飲み方は片手でひょいと口に持っていき、こぼさないようにさっと飲むらしい。だがこれは全くできない。お店の人から、ぼてぼて茶の由来などを調べた資料を見せてもらったが、当然ながら不昧公の逸話などが載っており、バタバタ茶やブクブク茶とは違うことは分かったが、その歴史的背景を探るのは難しかった。

 

松江の郊外に出てきた。造園業の傍ら、宝箱、という茶業をしているMさんのところにお邪魔した。島根茶の復興、農薬や化学肥料を使わないお茶作りを進めているという。事務所ではお嫁さんが対応してくれ、車で山を上がると、お父さんが待っていてくれた。非常に眺めの良い場所に茶畑が見える。

 

大庭空山、有機の畑。造園業をされているので、林と茶畑の共生などにも配慮され、合わせて他の場所から飛んで来る農薬などの侵入も防いでくれるのだという。何しろ景観が素晴らしい。茶工場も横にあり、紅茶製造の機械なども導入されている。脇には井戸があり、水が良いことも分かる。やはり信念をもって茶作りをしている茶畑はちょっと違う。

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