藤枝から愛知へ流れていく2016(5)醤油、みりん、そして常滑

67日(火)
醤油やみりんや

翌朝は朝からTさんが茶を淹れてくれる。お茶好きが集まると、気楽なお茶会がすぐに始まるのが嬉しい。彼は日本に20年住んでいた人で、ある意味では日本人以上に日本に詳しく、またお茶への造詣も実に深い。今はワルシャワに帰っているが、今回も日本滞在中に様々な場所を訪れ、日本を体感しようとしていた。その後は中国へも入り、お気に入りのお茶場を訪問するらしい。すごい情熱だ。

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本日彼はこの三河地方で、醤油屋さんやみりん屋さんへ行くという。面白そうなので、Iさんとともに付いていくことにした。運転はKさんという女性がやってきて担当してくれた。彼女は自然保育のような活動をしているという。『えこども=絵+子ども、エコ+子ども、笑顔+子ども。世界の素敵な人々と創造力溢れる保育』。何だか面白そう。Iさんのところには色々な人が集まってくる。

 

Tさんたちは約束の時間があるので先に出掛けていた。我々は追い掛けていく。車は碧南市というところへ入る。周囲には古めかしい家が並ぶ。事務所ではTさんと日東醸造の社長が面談していた。突然押し入る形になり恐縮。醤油屋さんと聞いていたが、出てきたのは『しろたまり』という商品。日本で醤油を名乗るには大豆を原料として使わなければならないが、こちらでは小麦を使っているので、そのような名前になっていると説明を受ける。

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製造場所が『足助』と聞いて、Iさんの目が輝く。実は寒茶作りをしている場所だったという。兎に角水がいい。空気が言い、環境が抜群だと社長もIさんも言う。木の樽で天然醸造、などと言われると、それだけですごい商品に思えてくる。是非一度足助、という場所には行ってみたい。創業1938年の老舗である、この会社のこだわりがTさんをも驚かせている。

 

続いて向かったのはみりん屋さん。道が狭く、どこから入るのか迷う。背の高い煙突が目印。明治43年創業の角谷文治郎商店。外国語ができる社員がきちんと対応してくれた。勿論Tさんは日本語堪能なので、会話は日本語だったが。三河みりんというのは、原料にしょうちゅうを使い、醸造期間も1年以上で、他のみりんとは違っている。工場を見学すると、もち米が大きな容器に入れられ、蒸されていた。

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みりんを試飲した。まるでリキュールのようにほんのり甘く、濃厚だった。リキュールグラスで飲むとその印象が一層増す。これはちょっと衝撃。製造法を聞いていても、焼酎を使って発酵を抑制するなど、何だかこの辺の商品はお茶に繋がるものがあるようにも思える。最近はみりんがマクロビに使われるなど、その効能にも注目が集まっているようだ。それは大規模大量生産ではなく、伝統製法で作られるみりんにのみ適用される。

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茶の旅で歩いている私だが、このような日本の伝統製法に触れると、その良さが実感でき、茶のみならず、その作り方、こだわりを十分に理解して、消費者としてそれを守っていく必要があると強く感じる。大量・安価な商品に流されてはいけない。Iさんのように料理が得意で、食材にもこだわりのある人だけではなく、一般人が少し昔に戻らないと、良い方向には行かない。

 

常滑

Tさんたちと別れて、車は常滑へ向かった。先日お知り合いのWさんから『ぜひ常滑へ行って』と言われたのだが、焼き物に興味があるわけでもなく、知る人もないので、当面行かないだろうと言ったばかりだったが、なんとその舌の根も乾かないうちに、常滑に連れてこられてしまった。これもご縁というのだろうか。

 

常滑へ行ったのは、焼き物を見るというよりは、ランチを食べに行ったという方が正しい。車で常滑の街を通ったが、焼き物屋さんが目立つなというぐらい。ただ聞いてみると、以前はこんなに店はなかった。特に日本茶が売れない原因の1つが急須離れだ、という意見もあり、急須の産地には打撃が大きかっただろう。確かに焼き物は売れなくなっていたのだが、努力して、店が増えて行ったのだという。確かに中国人や台湾人が日本の焼き物に関心を示しているとはよく聞くが、そういう外国人パワーのお陰なのだろうか。

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常滑屋さん、という、古民家を改造したレストランに入った。何とも雰囲気の良いお店。平日だがお昼は混んでいるようだった。ランチはハヤシライス。器がよい。ご飯ができるまで、オーナーにお話を聞く。常滑の急須を愛し、陶芸家さんを支え、育ててきた様子がよくわかる。常滑の復活?はやはり地道な努力による。そしてこれから、更に発展していけるかどうか。2階には焼き物のほか、地元の商品などが置かれており、買い物ができる。今回は心の準備がなく常滑に来てしまったので、次回はもう少し落ち着いて街歩きがしたい。

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すぐに時間は過ぎていく。車で名古屋駅まで送ってもらう。常滑は空港セントレアからもかなり近く、名古屋駅へも遠くはない。1時間程度で行くことができるので、今回は名古屋駅から新幹線で東京を目指すことにした。

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