藤枝から愛知へ流れていく2016(2)豊橋の絶品紅茶

 65日(日)
豊橋の紅茶

翌朝は雨上がり。牧之原の茶畑も何となく潤っている。朝6時には起きて、付近を散歩すると何とも心地よい。雨で空気も澄んでいる。茶畑、特に元気な茶畑を見ているとこちらも元気になるのはなぜだろうか。既に2番茶の摘み取りも終わり、夏に向けた準備が行われている畑もあり、また今日の摘み取りを待っているような畑も見えた。今日の茶摘みがないのは残念だ。お母さんが朝ご飯を用意してくれ、ずうずうしくも、たらふく頂く。日本はいいな、と思う瞬間がここにある。

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Sさんの車に乗り、豊橋に向かう。今日は前々から一度訪ねたいと思っていた、Gさんのところへ向かう。Gさんとは2年半ぐらい前に、名古屋のお茶会で知り合った。豊橋で紅茶作りをしていると聞いたので、興味を持ち、一度訪ねたいと申し入れたが、その後機会がなかった。昨年11月の下田サミットの会場ですれ違った時、『来ませんね』と言われたのが引っかかっていた。どうしても行きたいと思い、今回の藤枝セミナーを引き受ける条件としてS氏に『Gさんのところへ連れて行ってくれれば』と伝え、実現した。ただもし今日が晴れなら、自分で電車に乗って行くところを、なぜか雨が降る。この辺が農業の難しいところであり、また人生のあやか。

 

牧之原から1時間半ぐらいで豊橋に着く。特に標高があるわけでもない、普通の畑が続く。そんな中にGさんの茶畑はあった。挨拶もそこそこに茶工場に入り、茶を飲み始める。若いGさんは、様々な試みをしており、実に研究熱心。茶工場はまるで実験場のような雰囲気で、紅茶や烏龍茶など面白いお茶が出てきた。それをSさんが飲むと、かなり専門的な話が飛び出し、私などはついて行けないこともしばしば。更にはお父さんも加わり、完全な茶農家談義が繰り広げられる。

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Gさんは4代目。数年前に勤めを辞めて、実家に戻り、家業を継ぐことに。こちらのG製茶は1927年の創業、元々は煎茶を作っていたが、50年ぐらい前に紅茶を数年作ったらしい。残念ながらその紅茶は輸出用で国際競争力がなく、数年でとん挫。以降こちらで紅茶を作られることもなく、作り方も伝わらなかったが、10年前に復活。無農薬、無化学肥料で紅茶を作り、好評を博し、昨年は尾張旭の紅茶フェスでグランプリを獲得するまでになる。Gさんは茶葉の組み合わせと揉み方を研究して、最高のものを追及している。その熱意は相当のもので、ストイックに行っている。

 

茶畑を見学する。茶樹に蜘蛛の巣が掛かっている。虫も所々に見える。虫よけの棒が刺さっている。無農薬とはこういうことだろう。無農薬茶園を作るには長い時間が掛かっている。『有機JASで認める農薬も一切使わない』という話には刺さるものがある。『正しい整枝法を実行すれば、茶樹は健康になり、少ない肥料でより「うまい茶」を作ることができる』という話も出る。この辺になる正直私にはよくわからないのだが、S氏とG親子の間では盛んに議論がなされている。枝の切り方、落とし方で茶の味が変わるのだろうか。科学的なことは分らないが、ここのお茶が美味しいとすれば、それは正しい方法ではないかと思う。その他土壌造りなどにもこだわっており、この農業をやっていく、特にこれをきちんと管理していくことは大変なのだと感じる。

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現時点では収量がそれほど多くなく、G製茶の紅茶はなかなか手に入らない貴重品となっている。何しろ現地まで買いに来たというのに『在庫はありません』と言われてしまうのだから、驚きである。ウンカにかまれた茶葉を見て『烏龍茶生産にも』と意欲を示す。とにかくGさんは『うまい茶を作る』という一点に集中している。勿論ご両親がいるからできることだが、Sさん同様、両親が元気な間に新しい日本の茶を作ってほしいと思ってしまう。

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あっという間に時間が過ぎていき、昼頃になってしまった。Sさんは安城に用事があるというので、また車に乗せてもらい、名残惜しい豊橋を離れた。豊橋から安城まではすぐだった。この辺の土地勘はまるでない。いつもお世話になっているIさん宅を訪問。なぜか今晩はここに泊めて頂くことになる。何という展開。この家は一種のサロンになっており、SさんやGさんのお茶もここに来れば手に入るようになっていた。私は2階の部屋に荷物を置く。

 

茶心居へ

私の次の目的地は名古屋にある大学だった。その大学がどこにあるのかわからない、というと、Iさんが『そこは茶心居さんの近くだから一緒に行こう』と言い出し、Sさんが車を出して、何と名古屋へ向かって走り始めた。まあ茶旅とはこういう展開だとは思うものの、日本でこの展開はなかなかない。茶心居、お茶好きの人に聞いたことがある名前だが、初めて行くところである。車は小1時間で、名古屋のどこか分らない所に着いた。

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