藤枝から愛知へ流れていく2016(3)茶心居、そしてインドから来た娘

 このお店、外観から見ると街の喫茶店のようにも見えるが、中に入ると、プーアル茶などが並んでおり、かなりのこだわりが感じられ、普通の喫茶店ではないことが分かる。そしてその中にSさんやGさんのお茶が置かれている。店内はこじんまりしているが、居心地のよさそうな空間だった。常連のIさんが『お茶下さい』というと、何も言わずに香りのよいお茶が出てきた。『スイーツは』というと、美味しそうなスイーツが出てくる。

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店主のTさんは15年ほど前にこの店を開いたというが、ミュージシャンでもあると聞き、驚く。そして料理もうまいらしい。こだわりは強く、茶に関する知識も豊富だ。こんなお店が名古屋にあるのか、と感心する。この周辺のお茶好きが集まるサロンのようだった。ゆっくりお話を聞きたいと思ったが、今回は突然の訪問でもあり、また次の約束の時間が迫っていたため、先に失礼してしまった。とても残念な思いが残った。次回ここに来るのはいつなのだろうか、果たして再訪の機会はあるのか。

 

後ろ髪惹かれる思いで店を出て、Sさんの車で大学まで送ってもらった。住宅街を曲がりくねり、最後は少し坂を上った。確かに近かったが、3㎞以上はあり、とても歩いていけるような距離ではなかった。その正門で待ち合わせていたのは、あのインドでお世話になったラトールさんの娘、ナイニーカだった。彼女は正門の前で心細そうに立っていた。2年ぶりに見る彼女はかなり大人びており、背もすらっと高くなっていた。

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インドから来た娘

ナイニーカと最初に会ったのは確か2009年の暮れ、私が初めてインドに行った時だった。ラトールさんのガイドのもと、エローラなどの遺跡などを見て回った後、自宅で出会ったはずだ。その時、彼女は12歳。ニコニコして聞き取りやすい英語を話し、その利発さを覗わせていた。その時の記録を紐解くと『お嬢さんに英語で話しかけると完璧な英語が返って来た。「学校は楽しいけど、数学嫌いなの。クラスは女性ばかり59人」。ミッション系の私立中学に通っている。めがねを掛けている。日本や中国と変わらない。違和感なし』

 

その後も3年前には一緒に北インドのデリー・リシュケシュの旅に行ったし、2年半前には彼らの親族の結婚式で、華麗な衣装も披露してくれた。15歳で一族の人々に花嫁候補としてデビューした時だった。2年前にはお母さんと一緒に初の日本旅行に来たが、我が家は奥さんと次男(リシュケシュでも一緒)が一日同行した。そして今回17歳になり高校を卒業して、大学に進学する前、初めて一人で6週間の短期プログラムに参加して、日本にやってきた。日本語を学ぶのだという。

 

私が一番心配したのは食事。何しろベジタリアン家庭だし、日本語は少し話せて読める程度だろうから、食べる物には神経を使うはずだった。門の前で『日本はどう?』と聞くと『いい』と言いながらも次の言葉が『おなかが空いた』だったのは、やはり悪い予想が当たっていた。学内の食堂を見に行く。土曜日の午後で閉まっていたが、当たり前ながら、インド人が食べそうなものはメニューにはない。コンビニがあったので入ってみたが、食材表示は全て日本語であり、しかも小さい文字。とても彼女が理解できるとも思えない。

 

仕方なく、どう見ても安全なリンゴジュースを買い、座って飲みながら、話を聞く。問題は食事だけではなかった。同じ寮に中国人の女性がおり、自炊しているのだが、豚肉を炒めているにおいが耐えられない、ともいう。これは単に好き嫌いの問題ではない。生活習慣上、有ってはならないことではないだろうか。当然部屋を変えて欲しいと要請したが、事務方は、週明けしか対応できない、と返事したという。海外から多数の留学生を受けている大学が、こんなことでよいのだろうか。そこにはノウハウの蓄積はないのだろうか。彼女が言うには、インド人は今回初めてこのプログラムで来たらしいが、イスラム教徒は来たことがないのだろうか。

 

そしてネット環境も万全ではなかった。部屋でネットが繋がりにくい、ロビーまで行く必要があるという。だから私の連絡に対しても対応が遅かったわけだ。インドでも数年前はWi-Fiなどないところが多かったが、今ではあっという間に普及して、彼女の家にだってWi-Fiがあり、私も使わせてもらったことがある。日本を科学技術先進国だと思ってきているアジアの若者はこの事態を目の当たりにして、どんな感想を抱いて帰っていくのだろうか。日本人として、ちょっと目の前が暗くなった。

 

大学の近くにはインド料理屋がなく、昨晩は同室の日本人が、名古屋駅近くまで連れて行ってくれて、そこで夕飯を済まし、そこでテイクアウトしたローティーを今朝食べただけだという。急いで検索して、日本人がやっていなさそうな料理屋を探す。そこへ行くのは地下鉄を乗り換える必要があったが、距離的には近そうだった。大学から最寄りの駅は既に彼女が覚えていたのでスムーズ。駅で切符を買おうとする彼女だが、どこまで乗るのか、一生懸命探さないと、料金すらわからないのが日本のシステム。

 

毎回これでは大変だと、窓口に行き、スイカのような現地のICカードを購入して渡した。こうすれば、切符を買わなくても済むし、バスにも乗れ、東京や大阪でも使える。外国人の目線で見ると、地下鉄の乗り換えでも容易ではない。何しろ表示が分り難いうえ、英語は限られている。更には到着駅から地上に上がると日本人の私でさえ、方向感覚を失う。スマホがあれば地図を検索できるが、シムカードがなければWi-Fiは飛んでいないので、検索できない。

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