シベリア鉄道で茶旅する2016(9)国境の街 スフバートル

それでも2-3時間経つと飽きてくるのは仕方がない。外の景色は草原が続くのみ。座席も空いてきたので広いところに移ったが、向かいのおじさんが『お前は上に行け』といったように思えたので、上段で寝ることにした。中国と違って三段ベッドではないので、余裕を持って寝られた。ロシア人の体形で三段ベッドに潜り込むのは無理なのだろうか。2時間ほどぐっすり寝入る。

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その後は窓際の席で外をボーっと眺めて過ごす。腹は減らないので、ジュースを買って飲んでみる。この列車はシベリア鉄道と違い、駅には沢山停まるが、停車時間が短いため、ホームに降りるには難しい。人の出入りも激しいので、返ってストレスがたまる。珍しく長く停まった駅でホームへ降りてみたが、いつ発車するか分らないので気が気ではなかった。言葉が分らないというのはなんとも不便なものである。

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日がかなり傾いてきたころ、ダルハンというモンゴル第二の都市に着いた。ここでかなりの人が降りた。さすがウランバートル以外で駅の周囲に建物が見えた唯一の街だった。3年前に日本のODAで作られた製鉄所を訪問したのを思い出す。あの時すでに経営が厳しいと言っていたが、今はどうだろうか。中国の影響を受けて、沈んでいるかもしれない。産業の少ないモンゴル、中国からの輸入に頼るのは危険であるが、中国はお構いなしに入ってくる。

 

ここから乗ってきた大学生ぐらいの若者がノートを取り出し、わき目もふらずに勉強を始めたのには、驚いた。あまりにすごい勢いなので、周囲もドン引き?我々も恐れをなして他の席に移動した。彼はなぜこんなことをしているのだろうか。この列車は彼の通学列車なのだろうか。何とも不思議だ。若い時は、自分しか見えない、自分だけがこの世で頑張っている、と思ってしまうことがある。彼は自分がモンゴルを背負っている、という気概あるのだろう。空回りしなければ良いのだが。世の中、バランスを取ることも重要である。

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徐々に暗くなってくる。駅もどんどんみすぼらしくなっていく。こんなところで降りても、どこへ行くのだろうという場所がある。数台の車が迎えに来ていたが、それがなければ歩いていくのだろうか。私は1つの不安を抱えていた。それは今日の目的地であるスフバートルには泊まるところがあるのだろうか、ということ。なぜなら以前この駅を車で通ったことがあったのだが、その時ホテルがあったという記憶がなかったからだ。スフバートルと言えば、モンゴル建国の英雄だが、その名が付いた街は、確かかなり寂しいところだったことを覚えている。

 

スフバートルで

そして午後8時前、列車はスフバートルに入った。予想通り、あまり明るい街ではない。乗客もかなり減っており、不安が高まる。列車はスーッとホームへ入るが、ホテル、という建物は見えなかった。駅も暗い。人はどんどん歩いて行ってしまう。Nさんが率先して、ホテルを探しに出て行った。この駅にも改札はなく、いきなり外へ出てしまう。駅前には白タクがおり、客に声を掛けている。中には『ウランバートル』と叫んでいる者もおり、ここからどこかへ行く人が降りる駅らしい。Nさんの『ホテルらしきところを発見しました』という言葉を聞き、ホッとした。

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だがそこへ行くとドアは閉まっており、横に雑貨屋に灯りがあった。呼ばれてやってきた女性も『あっちに行って』という感じで指を指す。仕方なく、もう1つの建物へ行くと、そこはパン屋だった。美味しそうなパンが並んでいるなと思ったが、部屋は別の入り口から入るとのこと。何とか言葉も通じて、3人部屋を確保することができた。ネットも辛うじて繋がっている。だが、お湯は出なかった。ボイラーはあるのだが、壊れているらしい。これにはがっかりした。この辺の人はシャワーを普通に浴びないのだろうか。

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腹が減ったが、午後9時まででパン屋は閉まってしまった。周囲を見渡したが、その横のパブに入るしかなかった。それほど寂しい駅前だった。そのパブにはモンゴル人の若者が数人おり、かなりやかましかった。かなり酒が入っている。その内、若夫婦らしい2人が派手に口喧嘩を始めた。ビックリするぐらいの大音響。我々は隅でこそこそと食べ物が来るのを待つ。ここもステーキとかフライドチキンなどしかなく、何とかサラダを食べて繋いだ。脂っこくて、腹がもたれた。夫婦喧嘩は外へ出ても続いていた。

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3月11日(金)

キャプタへ 翌朝は寒かった。駅前の閑散とした雰囲気が寒さを増していた。キャプタ行のバスでもあるかと思って聞いてみたが、誰もが首を振る。バスの姿も全く見えない。国境へ行くやつなどいないよ、と言わんばかり。周囲には数台駐車された車があり、これが白タクとなっているように見えた。その1台に声を掛け、『キャプタ』と叫ぶと首を振られてしまう。そして向こうの車を指したので、そちらで聞くと『行く、一人15000tで』という。急いでホテルをチェックアウトして車に乗り込む。朝ご飯が食べたいと言ったのだが、まずはガソリンスタンドでガソリンを入れる。彼らは金が入って初めてガソリンを入れるらしい。

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