シベリア鉄道で茶旅する2016(7)ウランバートル 寺院とお茶の関係は

 S氏は言葉が通じない場所での切符の買い方には慣れている。行きたいところの駅名を書き、窓口で見せる。若い女性はなんとか英語を使おうとしているが、分り難い。外国人がここで切符を買うことなど珍しいのだろう。いや、鉄道ファンでもなければ、ここから鉄道に乗ることもないのかもしれない。我々が乗るのは国内線、ロシア国境の街、スフバートルまでだから、なおさら難しい。何とか筆談して、料金が表示された。S氏が『ここは一番安いのでいいですか?』と聞いてくるので、不安はあったが、思わず頷く。まあ9時間だから、大丈夫だろう、と強気になる。モンゴルの三等車、どんなのだろうか。明日が楽しみになるほど、余裕が出てきている。

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駅前でホテルを探す。これもS氏の基本だ。閑散とした駅前だが、ホテルという文字は見えた。この時期はオフシーズンなので、すぐに見つかると思ったが、最初に訪ねたところは提示された料金は意外と高かった。2軒回ったが、他になさそうなので、民宿のようなところに決めた。フロントに『レセプション』という英語が書かれており、若い女性は英語ができた。3人部屋はなかったので、私は一人になる。1部屋5万t。これは少し高いがやむを得ない。部屋はそこそこに広く、暖房は聞いているので問題はなさそうだった。

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カンダン寺

外は晴れてはいたが、相当に寒い。日差しがあるうちは良いが、日が暮れると恐ろしく寒そうだった。ウランバートルでやるべきとはあまりなかった。万里茶路に関する遺跡も残っているという話はなかった。ただ駱駝隊はモンゴル高原では、野宿していたが、ウランバートルのような街では、寺院に宿泊していた、との話が耳に残っていた。だから、ウランバートルで一番有名なカンダン寺に行ってみることにした。

 

カンダン寺には数年前にも行ったことがある。その位置は、駅からほぼ真北にあった。これはやはり昔の名残だろうか。以前の社会主義的な団地が並ぶ道。雪が凍って滑りやすい。寺に向かって歩いていくと、ソウルストリートなる道があった。サムソンの事務所などがあるようだ。そういえば東京ストリートもあったな、この街には。さほど遠くないところに寺はあった。前回は夏に来たので、結婚式の写真撮影が行われていたが、今はコートをまとった人々が寒そうに歩いているだけ。ハトも心なしか寒そうに飛んでいる。

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本殿の方は新しい雰囲気なので、横にある古い廟を訪ねる。こちらには各種マニ車が置かれており、この寒さの中、チベット仏教徒がきちんとお参りしている。中には五体投地を始める男性もいた。坊さんもこちらにいるようで、たまに出てきて祈っていた。このあたりに茶葉を積んだ駱駝隊が荷を下ろして休んだのだろうか。しかしチベット仏教徒であれば、漢族ではなく、モンゴル人ではないのだろうか。

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もしやすると、漢族、例えば山西商人と、モンゴル商人が共同で茶葉を運んでいたのでは、と思ってしまう。鄧九剛先生にこのあたりのことを尋ねたところ、『その可能性はある』との回答だった。寺は商人や貴族からの寄進で成り立っていた部分があるから、それも頷ける。日本のように仏教と茶が密接に関係しているのとは違い、こちらは商人と寺院が密接に関係しているように思える。まあどこでも寺を維持するためには強力な支援者が必要ではある。

 

お寺とお茶の関係を示すものを探したが全く見付からない。仕方なく、モンゴル人がよく飲む、ブロック型の磚茶の売っているところを探した。しかしモンゴルでも都市部では既に磚茶を飲まずに、紅茶のティバッグを飲むのが主流になっており、普通のスーパーでは見かけなくなっている。唯一あったのが、寺の横にあった仏具店と雑貨店。やはりお寺で使うお茶はこれなのだろうか。また真の仏教徒は家でもこのお茶を飲むということだろうか。そういえば、モンゴル伝統の祈りの場には、この磚茶が供えられていることが多い。モンゴルでもソ連の傘下にあった時代、宗教は弾圧され、寺は荒れていたと聞くから、ことは複雑かもしれない。

 

体が冷えていたので、寺の前にあった店に入る。ミルクティーを飲むためだ。靴がかなり濡れており、床がびしょびしょになってしまった。それほどに外と中に気温差があった。室内は本当に暖かい。スーヨーチャ、というと何となく通じた。だがそのお茶は既に作られてポットに入っており、カップに注ぐだけだった。何だかつまらないが、これが現代モンゴルだろう。300t。庶民の飲み物だ。味はゲルで飲むほど濃厚ではないので、私にも飲みやすい。水分補給という感じが強い。後から入ってきた男はどことなく怪しかった。何も頼まずに時折こちらを見ている。スリではないか、との見方もあったが、どうだろうか。

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