シベリア鉄道で茶旅する2016(6)哀愁漂う駅の物売り

 3月9日(水)
4. モンゴル
ザミンウデから

それにしてもエレンホトでも博物館に行けなかった。ここも駱駝隊が休息した宿場があった場所。万里茶路的には降りてみたいところだったが、何しろ警戒厳重な国境であり、我々国際列車の乗客に自由はなかった。高い金を払って自由がないとは理不尽だと思ったが、何とも仕方がない。列車が動き中国を離れると、完全に気が抜けてしまった。やはり陸路の国境越えは何といっても緊張するものだ。ウトウトしていると、モンゴルの最初の駅、ザミンウデに到着した。こちらも真っ暗で何もない。

 

そして今度はモンゴル人のイミグレ職員が乗り込んできて、パスポートを回収した。列車を降りて、列に並んで入国手続きしないというのは、優遇されているということなのだろうか。眠気に負けて寝入る。そこへ女性が入ってきた。税関職員だという。ちらっと部屋の中を見て、すぐにOKと言って出て行ってしまった。国境というのは写真を撮るのにも気を遣う。しかも暗い。ほとんど何もしないうちに、手続きが終わり、また列車が動き出す。

 

S氏とNさんはお酒が好きで、いつも酒とつまみをやっている。私は飲まないので、すぐに眠たくなる。既に午前2時、横になるとあっという間に意識がなくなり、気が付くと、薄暗い中、どっかの駅に停車した。午前6時、文字が読めない。後で調べると、サインシャイドという駅だった。それから周囲は徐々に明るくなっていった。窓の外から見えるのは、雪が積もった草原ばかり。勿論ここがどこかも全く分らない。時々小さな家が見え、また時々羊の群れがいた。のどかというより、荒涼とした、寒々とした風景が広がっていた。こんなところを茶葉を載せた駱駝が隊列を組んで歩いていったのだろうか。

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10時頃に駅に着いた。チョイルという名前。この駅の次に停まるのは終点ウランバートルだった。駅と言ってもふきっさらしのホームがあるだけ。乗っているのにも飽きたので、降りてみたところ、その寒さは半端ない。天気が良いので分らなかったが、風が強いこともあり、体感温度は零下20度以下ではなかっただろうか。そんな中で数人のおばさんがカートを押して、何かを売っていた。言葉は通じない。中身を見ると、飲み物やカップ麺だった。横には弁当箱のようなものがあった。中を開けると包子が湯気を立てて出てきた。ショーホー、と言っているように聞こえた。いくらか分らなかったが、これまでモンゴルの通貨に両替できそうな場所などなかった。

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人民元しかないので、10元札を出すと受け取ってくれた。なんだかうれしかった。このおばさん、全く商売になっていない。何しろ乗客が殆どいないのだから仕方がない。これで生計が立てられるのだろうか。一日に1本列車が通るかどうか、他人事ながら心配になる。この寒風吹きすさぶ中、帽子をかぶり、マフラーを巻き、重装備の服装で寒そうに立っている。そして何より哀愁、という言葉が絵になる。列車に戻り、急いでショーホーを開けた。羊肉がジューシーだった。ちゃんと作っているんだね、おばちゃん、有難う。そんな感じだった。

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その後廊下を歩いていると、いい匂いがしてきた。何と洗面台で中国人車掌が野菜を切っていた。そして中華鍋で調理をはじめたのには、驚いた。実はモンゴル国境で台車を付け替えたが、その際食堂車も付け替えたらしい。昨晩のあの安い中華食堂が一変、豪華なモンゴル食堂に変わっていた。そうなると、中国人はそこでは食事をしないので、自炊することになる。因みに服の洗濯をしている車掌もいた。ある意味でここは生活圏なのである。

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その豪華食堂車に行ってみた。その内装はモンゴル風でもあり、ヨーロッパ風でもある。これぞ、国際列車、という雰囲気を出していた。だがメニューを見ると、ロシア風の肉料理などばかりで、モンゴル料理は何もなかった。料金も昨日の中華食堂とは大違いでかなり高い。すごすごと引き返した。食事をしている人も殆どいなかった。午後2時にはウランバートルに着くのだから、当然かもしれない。

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切符とホテル

列車は全く遅れることもなく、定刻の午後2時半にはモンゴルの首都ウランバートルに着いた。この駅はこの街の端にあり、列車から急にビルが立ち並ぶ大都会が見えた。私は過去2度来ているので驚きはなかったが、列車から街を眺めると、その薄っぺらさがよく分かった。駅は立派に見えたが、白人乗客を迎えに来たガイドぐらいしか人はいない。汽車の展示があるぐらい。改札もなく、すぐに外に出られた。

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S氏はいつものように『まずは次の切符』というので、駅に入ろうとしたが、締め切りだった。張り子のトラ?モンゴルの通貨トゥグルグも持っていない。両替所も全く見当たらない。駅の横に建物があったので、文字は読めないが、何となくここかな、と入ってみる。外は寒かったが、中は暖かかった。人もおり、ここが切符売り場であることが分かった。S氏はATMでキャッシング、私は両替所で米ドルを出して、両替した。モンゴル滞在は短いので、最小限の両替に留めたが、切符の代金すらわからないのでかなり困った。

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