カンボジアご縁の旅2015(3)プノンペン 逞しく成長した25歳の店長

そして再び店に行くと『来ました』というので、見てみると、何と店長の渡辺さんがいた。確か店員の話では彼女は今日は休み、だったはずだが。『今日は休みなんでしょう』と声をかけると驚いたように私を覗き込む。昨年のイベントで会ってはいるが、あの時は人が多くて覚えていない。話している内に思い出してくれたようだ。そして『私、今日自分が休みだったことを忘れていました』というではないか。それほど開店以降、厳しい日々を送っているんだな、と分かる。私も昔こんな生活をしたことがあるので、彼女の体調が心配になる。

 

実は温井さんは事情があり、急遽帰国していた。その事情をスタッフも知らないほど急だったようだ。Facebookにメッセージが入っていたが、スマホを使わない私は気が付かずに店に行ってしまったという訳だ。渡辺さんは私が来ることなど知らされておらず、それで驚いたような顔をしたわけだ。

 

だが彼女はそんな心配をよそに、商品の説明を丁寧に始める。かなり広い店内には、デザインコンテストのデザインを使ったポーチなどの他、カンボジアの自然な素材を使ったココナッツオイルや石鹸を扱い、そして日本コーナーでは、メイクアップアーチストを呼んで、メイクを施したりもしている。日本の可愛いグッズの販売も行っている。昨年6月末に開店してから、紆余曲折を経て、今日の店があることが一目でわかる。

IMG_2556m

 

『ランチはどうしますか?』と渡辺さんが聞いてくれたので、一緒に食べに行くことにした。モールの上の階に、いくつもの店が入っており、出店者たちもここで食べているので、ランチの時はお客が結構いるらしい。今回は彼女のリクエストで中華に挑戦してみた。意外や奥が深い店内、そして意外やお客がいた。地元の人か観光客かは分からないが、中国系の人が多い。

 

料理は何となく創作料理風か。スープが大きな土瓶に入って出てきた。日本料理の土瓶蒸しを想起させる。味は甘めで、癖がない。野菜炒めなども食べやすい。飲み物はタイから入ってきたペット飲料を注文したが、何でこんなにまずいのか、と思うほど、味が甘く、しかも不思議であった。無料のお茶が出てきてホッとした。このお茶、どこから来たのか、そんな興味が湧く。

IMG_2560m

 

お店に戻り、石鹸とその入れ物として小袋をお土産にする。石鹸は泡立てネットがなければ泡が立たない天然物ということで、3点セットを作ってもらった。この辺も店長、渡辺さんの提案力による。スタッフが一生懸命包んでいる。このモールは朝9時から夜10時まで開いているので、店も開けなければならない。その拘束時間の長さは凄い。人繰りも大変だろう。その分、店長の負担も半端ない。昨年会った時に初めて人を採用するのだと緊張していた彼女を思い出す。店の外には自らがモデルになった写真まで貼ってある。

IMG_2565m

IMG_2562m

 

記念写真を撮ろうというと、ちゃんと店の商品を持ち出し、手に持たされた。この1年の間の彼女の苦労、そして相当に成長した店長を見て、逞しくなったな、としみじみ思う。人間は与えられた環境で成長していく。私も若い頃、一人で台湾に送られて苦労したが、その時が一番成長した、と今でも思う。渡辺店長の将来、楽しみだな。

IMG_2569m

 

テレビと夕飯

それから歩いて宿まで帰る。トゥクに乗ればよいとは分かっていても、またどんなに暑くても、私は歩くのが商売だから、仕方がない。と言ってもかなり遠いので疲れ果てる。部屋に戻り、しばし休息。のつもりが心地よいエアコンのお陰で寝入ってしまい、起きると午後5時になっていた。

 

NHKの7時にニュースを見る。最近見ていないな、ニュース。昔はニュースとスポーツだけは見ていたのだが、今ではニュースも嘘っぽい。そして最近は子供の誘拐や自殺の話が多い。既に世の中、見なくてよいものを沢山見る時代に入ってきたようだ。その中を如何に生きていくのか、それが課題だ。

IMG_2572m

 

腹が減ったので夕飯を食べに外へ出た。外は既に暗く、周囲にレストランは見えない。古いオルセイ市場の方へ行くと、角のキャピタルから始まり、いくつもの店が軒を並べている。でも何となく美味そうに見える店がなく、市場まで来てしまう。市場の前の屋台で焼そばを注文してみる。

 

後ろのテーブルに座り、焼きそばを待っていると、横のテーブルから日本語が聞こえてきた。若者が二人で話し込んでいる。聞き耳を立てたわけではないが、聞えてきたのはサッカーの話題。それもカンボジアのプロリーグに関するもので、この2人がサッカー関係者、場合によっては選手本人である可能性が出てきた。今や日本人選手がアジアで活躍する時代、そんな話が隣であってもおかしくはない。

 

焼そばはウマかったが、一緒に出てきたスープには味の素がたっぷり入っていた。こんなスープ、久しぶりだな、と何となく懐かしいが、大量には飲めない。ここで働く人々はこの薄暗い空間で、何を思って生きているのだろうか。あるいは何も考えず、目の前のことに追われているのだろうか。

DSCN2672m

 

帰りになぜか肉まんを買ってしまった。婆さんが、ウマイよ、という顔をしてからだが、実際に買うと愛想も何もない。プノンペンに華人は多く、またどこにでもいるが、皆強かに生きていることがよく分かる。この国には華人受難の歴史もある。その中を生き抜いてきた婆さんに、私が敵う訳がない、と諦めて、部屋で肉まんを噛みしめる。

DSCN2675m

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です