真冬の韓国散歩2015(6)プサン 哀愁漂う国際市場

2つ目の駅で降りた。そこに日本家屋が残っているというので行ってみる。乾魚物都売市場、ノリや干物など、乾物を売る店が並ぶ市場だった。その建屋は日本時代に作られたものだが、ちょうど庇があって2階部分や屋根などが良く見えない。勿論店はきれいに改装されている。雨のせいもあり、思ったような写真は撮れなかった。

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それから龍頭山公園へ行く。途中エスカレーターを使い、何とか楽して上がる。観光客もちらほら来ている。その上にプサンタワーがあるのだが、高所恐怖症の私は勿論遠慮する。この公園、今は単なる憩いの場だが、江戸時代は倭館と呼ばれる、対馬藩の出先が置かれていた場所だった。

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そこを反対側に降りていくと、日本時代の建物が見えた。東洋拓殖釜山支店、現在は近代歴史館として使われていた。ちょうど社会科見学の小学生の一段とぶつかり、そそくさと2階へ逃げる。この歴史館、中国ほどドギツイ物はないが、やはり日本統治の暗黒の歴史を伝えている。小学生には愛国教育が施されているのだろうか。ちょっと悲しいが、歴史を振り返る良い機会になる。

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小雨は降り続いている。列車内で駅弁を早めに食べてしまい、腹が減る。とにかく昨日Yさんから言われた焼サバを食べるために市場へ行く。歴史館のすぐ近くに国際市場があった。だがここは魚市場ではなく、サバはない。それでも路上で実にうまそうなおでんを売っている。ソウルともまたちょっと違うおでん。売っているおばさんにもなぜか哀愁が感じられる。

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我慢できなくなり、トッポギ、チジミと食べ、ついにはおでんを食べ始めると、もう止まらない。美味しいというより、この情景の中に身を沈めていたい、という気分だった。何とも切ない。何故こんな気持ちになるのだろうか。その夜、偶然にも『国際市場』という映画が最近封切られ、話題になっていると知った。見てきたとおり、プサンでもこの旧市街地は寂れ始め、客足が遠のいていた。しかしそこは韓国人の深い悲しみ、孤独が刻み込まれた場所であり、歴史に翻弄された庶民の生きざまが現れていた。決して歴史館には展示されない歴史がそこにあった。

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おでん屋のおばちゃんの写真が撮りたくなり、カメラを向けると『こっちを撮って』と指差したのは料金表だった。『うちは安くて美味いんだよ』と言いたかったのだろうが、言葉が通じないため、咄嗟にこれを指したようだ。韓国語と日本語が書かれていた。洋服やカバン、雑貨などが軒を連ねる国際市場、今後どうなっていくのだろうか。再開発され、きれいなビルになっていくのだろうか。雨のせいか、妙に感傷的になってしまった。

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地下鉄で先ほど降りた1つ先の駅へ歩いて向かう。それほど遠くない。チャガルチと呼ばれるエリアだ。ここには公設の魚市場があり、体育館のようなスペースに魚を売るおばさんたちが並んでいた。こんなに沢山いて、皆が売れるのだろうかと心配するほどいるがお客もそこそこいるので商売にはなるのだろう。

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そしてその周辺には魚屋があり、魚をその場で食わせる店もあった。さんまを焼いている店の前で思わず足が止まった。1万ウォンで食べられるらしいが、私の胃腸も既に止まっており、どうしても食べることが出来なかった。本当に無念だ。明日の朝は絶対ここにきて食べるぞ、という強い意思を持って立ち去る。

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地下鉄でホテルへ戻る。雨は引き続き、降っている。特に予定もないので、部屋でテレビを見る。NHKが見られ、相撲をやっている。ローカルチャンネルを見ると、サッカーアジアカップを放映している。さすが韓国、地上波で全試合を中継していた。今日は日本の試合があったので、それに見入る。試合には勝ったが、相変わらず残念な試合を続けている日本代表。最近低迷していた韓国、中国の復活が目覚ましい大会だ。

 

ソミョンのデジクッパ

それにしてもこの部屋、日本の東横インをそのまま持って来たのだろうか。以前一度泊まっただけだが、そっくりに見える。このホテルのカードを作ると日本でも使えるらしい。韓国人の日本観光もターゲットに入れている。またカンボジアのプノンペンに出店するとの広告が目を惹く。以前出店した中国の話題を最近聞かないが、どうしているのだろうか。

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サッカーの試合が終わると夜の8時になっていた。また腹が減る。ソミョンという繁華街があると聞いたので、そこへ見学に行き、何か食べることにした。出来れば焼き魚が食べたい。また地下鉄に乗る。5駅ぐらい行くと、ソミョンはあった。ある意味でここがプサンの中心かもしれない、そんなロケーションだった。

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ただ当てもなく歩く。繁華街、ネオンサインがきつい。歩き回っている内に、美味そうな湯気に出会った。同じものを出す店が3軒並んでおり、競っているようだった。店の前で大きな釜で何かを茹でるおばさんを見ていたが、無反応だった。仕事に集中しているのだろうか。中からオジサンが出てきて、入れ、という合図をしたので、入っていく。オジサン、日本語ができた。デジクッパ、という豚肉の雑炊のような物が出てきた。

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骨付き豚を煮込んでスープを取り、そこにご飯を入れて食べるプサンの名物料理だと後で知る。寒い時にはこれ、と言わんばかりの暖かさだった。あっさりしていて食べやすい。しかし海鮮中心のプサンで何故豚料理が名物なのか。これも北朝鮮方面で食べられていた物が朝鮮戦争の際にプサンに伝えられたことによるという。この街と戦争は切り離せないようだ。夜はどんどん更けていく。おでんの屋台をまた見つけ、卵だけ食べた。

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