真冬の韓国散歩2015(4)ソウル ロッテワールドタワーと懐かしのパン屋

ロッテワールドタワー

Yさんに夕方まで付き合ってもらい、楽しく過ごした。そして久しぶりに江南方面へ行く。待ち合わせまで時間があると思われたので、ゆっくりと地下鉄に乗り、出来れば宣陵にある世界遺産、王墓群へ行ってみるつもりだった。ところがここでも勘違い、4駅も前で降りてしまい、行く気力を無くした。最近は思い込み、勘違いが実に多い。ボケの始まりか。

 

仕方なく、待ち合わせ場所のロッテホテルへ行く。ここにはショッピングモールも併設されており、時間を潰すには便利だ。家電売り場へ行くと、ちょうどサッカーアジアカップの韓国の試合を放送しており、テレビ売り場の前でオジサンたちが手に汗握り、じっと見入っていた。私もつられて、見入る。まるでその昔の街頭テレビのようだ。しかしテレビ売り場以外にお客は殆どいない。セールの張り紙が空しい感じだ。これを見て景気が悪いとは判断できないが、少なくても、商売が厳しい様子は良く分かる。

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ロッテホテルで会ったのは、お知り合いのソウル在住K社長ご紹介のCさん。元々はK社長と会うはずが、彼が日本出張となり、一昨日東京で既に会っていた。韓国事情を知りたいというとCさんを紹介してくれたという訳だ。Cさんは韓国有数の教育研修会社の副社長で、日本での留学、勤務経験もある方。日本語も堪能で有意義なお話を聞く。現在の韓国情勢については、これまでの人々と同様に、景気が悪いのは国民心理の作用が大きいこと、また大統領を支持する気になれないこと、など、精神面での落ち込みが語られた。

 

我々が食事をしたのはロッテホテルの向かいに新たに建設した、ロッテワールドタワーという韓国一高い建物。高さ555m、123階建て、現在90数階まで完成しており、工事は続いている。ロッテグループが総力を挙げて建設しているシンボルタワーだ。中に入ると非常に豪華な印象の内装が目を惹くが、ここもお客があまり居ない。こんな立派な建物なのに、なぜお客がいないのか、立地が悪いとも思えない。

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実は度々、床や天井に亀裂が入り、事故も起こっていると報道されているという。確かにこのビルが崩壊するなどと恐れている人のネット記事もいくつもあった。中には『123階建てのセウル号』などと評するブログも見られた。おまけに周辺道路が陥没するなど、すこぶる評判が悪い。お客足が遠のくのも無理はない状況かと思われる。

 

現在韓国では財閥偏重の経済に厳しい目が向けられており、先日大韓航空のナッツリターン事件もそうだが、このロッテの件も、必要以上にバッシングがあるのでは、と感じられる。ただ勿論安全性は最重要だし、お客は他の店に行けばよいので、ここにわざわざ来る必要なく、Cさんもこの近くに勤務していながら、来るのは初めてだと言っていた。因みについ先日ロッテの創業者が長男を解任したという報道があったが、あれとこのタワーは関係があるのだろうか。

 

Cさんがビビンバでも食べようというので、食堂のあるフロアーを目指したが、非常に分かりにくく、何度も聞いて、ようやくたどり着く。単に広すぎるというだけの理由ではなく、使い勝手もよくない。そして夕飯時なのに、このフロアーにもあまり人がいない。ビビンバは美味しかったが、何となく寂しい。人がいない、ということの空しさを味わいながら食べた。

 

日本人を引き継いだ伝統的なパン屋

その後同じフロアーにあるパン屋さんへ行く。Jさんが『ここのパンがおいしいと評判だ』というので付いていく。午前中にイテオンで見た行列が頭を過る。まあここはお客もいないだろうと思っていくと、何とこの店だけは行列が出来ていた。我々はアンパンと野菜パンを買い、暖かい緑茶を飲みながら店内で食べたが、普通の人はコーヒーを注文しており、また大勢の人はテイクアウトするようだ。本当に韓国はパンブームなのだ、とよく理解できた。

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パンを食べてみると、実に懐かしい味がした。Jさんも『子供の頃に食べた味だ』としみじみという。どうしてこんなパンがあるのかと聞くと、『この店は日本統治時代の製法を受け継いでいるから』というではないか。確かに私が食べても懐かしいし韓国人が食べても懐かしいのであれば、そうなのかな、と納得する。韓国最古のパン屋、と呼ばれ、郡山市に1920年代に日本人が開いたパン屋を1945年から引き継いだとある。本店は平日でも長蛇の列らしい。

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歴史的な経緯は別にして、最近韓国でも、台湾や香港のように日本統治時代を懐古する機運があるのだろうか。もし少しでもそれがあるとすれば、やはり中国大陸からのプレッシャーへの無言の反発だろうか。朴政権は中国への依存度を急速に高めたが、それはちょっと拙速だったのではないか、というムードも反映しているのだろうか。今の韓国の若者はアンパンについては何も知らないだろうから、政治や歴史など気にせず、ただブームに乗っているだけだと思うが、その根底にあるものを少し見てみたい気がしないでもない。

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帰りはまた地下鉄に乗る。夜10時を過ぎて、お客はそれほど多くない。寒さのせいだとは思うが、やはり何となく勢いが感じられないソウル。宿へ向かうと寒さが一層堪えた。明日は遂にプサンへ行く。ソウルよりは5-6度気温が高いと聞いており、期待が持てる。

 

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