真冬の韓国散歩2015(2)ソウル 心底満足したタッカンマリ

冷え込む韓国

3号線に乗り、仁寺洞へ向かう。駅5つほどであるから、これは便利だ。仁寺洞は観光地だが、寒さのせいか、人通りは多くなかった。前回訪ねた明金湯の平安を訪ねる。彼女から韓国の茶産地や歴史についてレクチャーを受け、大いに勉強した。その時点では年末に店を閉めて引退したいと言っていたが、まだ店はやっているのだろうかと、先日メールで問い合わせたところ、やっている、との回答で再訪となった。

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店はほぼそのままで、平安もそのまま座っている感じだった。1年半ぶりの再会だったが、何だか最近も会った気がするのは不思議だ。店内に座り茶をすすりながら外を見ると、客足はやはり少ない。韓国は昨年から景気後退が本格化し、商売も難しくなっているらしい。特に昨年のセウル号沈没事件以降、個人の消費心理が落ち込み、財布の紐が固くなっている。

 

セウル号事件は韓国の様々な問題が露呈し、国民の政府に対する信頼が極度に低下している。200名を越える高校生を、助けることもできずに目の間で死なせてしまった国民感情は計り知れない。4年前の日本の震災の時と同じように、全てが自粛ムードとなり、イベントは中止、消費マインドは冷え込んだ。

 

『韓国人はラテン民族、熱しやすく冷めやすい』、これは私が20年前に4年弱韓国を担当した率直な感想だった。日本に対しては『恨』などと言う感情を持つと言われる韓国人だが、その実粘り強さはない。今回の事件を契機にこの雰囲気が醸成された。そうなると後は悪いことばかり。最近の大韓航空のナッツリターン事件など財閥偏重に対する国民の厳しい対応が目を惹く。

 

そんな話をしていると、平安が電話で人を呼ぶ。呼ばれてきたのは、韓国のお茶雑誌、『茶道』の編集長。韓国語で書かれたきれいな雑誌で、中国茶や紅茶なども紹介されていた。編集長は日本語ができ、日本茶に関しての知識もあり、さすがにお茶関係の人。私の茶旅に興味があるようで、いくつも質問が出た。将来何か繋がりが出来ると面白いと思うが、まだその時期ではないようだ。

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編集長が帰り、平安とゆっくり話をしようと思っていると、お客が入ってきた。茶器に興味があるようで、長居する気配だったので、こちらは退散することにした。今日のところは、前回好評だった古茶樹の紅茶の購入は控えた。そして寒い、寒い屋外へ出て、東大門を目指して歩き始めた。

 

タッカンマリ

仁寺洞から東大門まではそれほど遠くないと思い込み歩き始めたが、意外や、地下鉄駅で2つ以上あり、しかも陽が落ちてきて相当に寒い。地下鉄に乗ればよかったと後悔したが、遅かった。ひたすら歩くしかない。

 

途中に市場があり、着いたかと思ったが、そこは広蔵市場という別の場所だった。ここは李氏朝鮮時代からある大きな市場で、一時は東大門市場とも呼ばれていたらしい。寒さを凌ぐつもりで入ってみると、相当細長いアーケードに店が並ぶ。そして中央付近には暖かな湯気が立ち込め、大勢の人が食事をし、酒を飲んでいた。ポジャンマチャと呼ばれる飲み屋屋台、おでんや海苔巻など日本風の食べ物も並んでおり、そそられる。

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だが私には目的地があった。先ほど宿でFacebookを見ると、大学の後輩のS嬢から『ソウルに行ったら、是非タッカンマリを食べてください。絶対美味しいですよ』と言うメッセージが入っており、それに従うことにしたのだ。それが私の旅、その信念?により、屋台を振り切り、またも極寒の街路を歩く。

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そしてついに東大門に着いたが、お目当ての店は見付からない。市場自体がビルになり、その横の道を探す。何とか細い路地に入ると、そこではサバやサンマを焼いている。おばさんが『美味しいよ』と声をかけるので、その誘惑に危うく負けそうになる。ようやくタッカンマリのその店を見つけたが、外から見ると大きな鍋が出ている。そして一人で食べている人もいない。

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タッカンマリは鳥を一羽、鍋にぶち込む豪快な料理、とても一人では食べ切れない。そして料金も2万ウォン(2000円)はするので、足が向かない。その道で何軒か見てみたが、みな同じ仕組み。ついに意を決して最初の店に飛び込むと、店員が『一人?あっち』と日本語で声をかけ、席を作る。そして何と『鳥半分ね』と半羽にしてくれた。この辺の柔軟性が良い。鍋はぐつぐつと煮え、寒さのせいか、鶏肉はウマかった。スープも出汁が効いている。湯気を見るだけで体が温まる。

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隣のテーブルを見ると若い女性が二人で食べているが、私の鍋とは色が全然違う。相当に味噌や辛子を入れている。店員は日本人の私の好みに合うように作っているのだ。よくできている。キムチを食べながら、トッポギを入れる。たれがまたさっぱりしていて、茹でた鶏肉を付けると絶妙だ。一人なのにだんだん楽しくなる。

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鶏半羽でも満腹だったが、店員が『うどん』というので、ククスを入れてしまう。これがまた鶏肉の出汁が出たスープによく合うのだが、さすがに腹が収まり切れない。ついにギブアップした時には、椅子から立ち上がるのさえ、億劫だった。久しぶりに心底満足した。韓国は食い物が美味い!

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