初の中央アジア カザフスタンを行く2014(9)ジャールケント 新疆から移住したカザフ人

中国系カザフ人を訪ねる

このまま帰るのか思いきや、車は北の方へ走り出した。ジャールケントの農村を訪ねることになった。車で1時間ぐらい行き、小さな村へ入る。結構家があり、目的の家を探すのに苦労した。

 

家には奥さんがおり、ご主人は出掛けているという。早々にチャイが出る。N教授はインタビューを始める。この家は7年前に新疆のイリ県から、こちらへ移住してきたカザフ人だという。特に親戚もなかったが、この村で温かい歓迎を受け、イリでは農業だけだったが、こちらではジャガイモなどを作りながら、羊なども飼っている。

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『新疆に比べれば、こちらのほうがずっといい』と言い、その理由を聞くと『新疆では政府に全て搾取されるが、こちらでは全て自分でやり、やった分だけ収入になる』と。そして更に『カザフにきてようやく漢族とウイグル族という2つの重い荷物を下ろすことが出来た』と静かに語る。この言葉は衝撃的だった。新疆では漢族の支配が強まっているが、実はその陰でウイグル族によるカザフ族いじめ、も進行していた。新疆では事あるごとにウイグル人が『新疆はウイグル人の土地だ』と言っているが、歴史的に見れば、南新疆は確かにそうだが、イリやアルタイなど北新疆には元々ウイグル人などいなかったというのだ。少数民族同士の諍い、これも新疆問題を複雑にしている要因かもしれない。

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羊の煮込み料理が出てきた。特にこの家で作ったジャガイモが絶品。お腹は空いていなかったが、つい手が出てしまい、いつの間にか腹が膨れて動けなくなるほど食べた。羊の脂がよく染み込んでいる。カザフでは塩を入れる以外調味料などを使わないようで、実に自然な味わいがある。

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ようやく家の主人が帰ってきた。我々はどこかへ出かけていく。実に雄大な山間部の平原。その道なき道を突き進む。途中に羊や牛の放牧に出くわす。少年が馬に乗り、統率している姿は格好がよい。まるで絵に描いたような大自然の風景が圧巻だった。

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その大草原に定住している家があった。決して豊かそうには見えない作りの家。ここには80歳をこした長老がいるとのことだったが、残念ながら不在。お嫁さんが馬乳酒を振る舞ってくれた。これが目的でやってきたようだ。因みに酒を飲まない筈のノルジャンも馬乳酒は飲んでいた。この国では馬乳酒は酒に分類されないらしい。かなり酸っぱいので私は遠慮したが、皆はどんどん飲んでいる。お椀によそう際、大きなボールに入った馬乳酒をゆっくり掻き回す。その動作が実にいい。

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この家は昔アルタイ辺りを遊牧していたプロ集団だった。羊500頭、牛20頭、馬も数十頭を有する大家族。子供や孫、ひ孫も羊や馬の世話をしている。小さな可愛い女の子もいる。どう見ても冬は厳しい寒さが襲うであろうこの地に何故4年前に定住したのか、長老不在で分からなかったが、何らかの事情があるのだろう。

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帰りは少し余裕が出てきて、この草原走破を大いに楽しんだ。途中まで送電線が来ていたが、先ほど訪ねた家までは通じていない。モンゴルでは大規模ソーラー発電機を持っている遊牧民もいたが、電気なしの生活はどうだろうか。確かストーブはあったようなので、オンドルのように熱を家の中に送り込み、暖を取っているのだろう。

 

大規模農場を行く

朝来た道とは別の道でアルマトイを目指す。しばらくは山間部が続いたが、その後は大草原、いや大穀倉地帯に見える大規模農場がずーっと続いた。この辺りはソ連時代のコルホーズだったのだろうか。所々に飼料倉庫なども見える。またそれなりの集落も点在している。

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カザフの農業は独立以降衰退したと聞いていたが、この辺りではまだ健在だという印象を持つ。恐らくは国家政策で大規模農業を支援しており、昔の官僚などが上手く土地を集めて、栽培しているではないか。外国人による農業分野への参入も可能だと聞いたが、ロシアなどは入ってきていないのだろうか。

 

それから延々、この国道を走る。途中で何回も道路工事で片側車線が閉鎖されており、予想外に時間がかかった。日本でもあることだが、カザフでは夏しか道路工事が出来ないのか、あまりにも多過ぎる感じがした。

 

夕陽が落ちる頃、大きな湖が見えた。ずっと道路の左側に水が見える光景、これはカザフでは珍しいだろう。そして夜、道の片側に突如ネオンサインが出現した。それも1つや2つではない。それがカジノだと分かるまでいくつか通り過ぎていた。確か飛行機の機内誌の広告にあったカジノも登場している。こんなにカジノがあってもお客は来るのだろうか?と心配になる。ノルジャンに寄れば、客の多くは中国人で、カジノは更に作られていく予定だそうだ。1つずつの規模は小さいのだろうが、ちょっと考えられないバブルのようだ。

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4時間ほどかかって夜10時に帰還した。ララさんがラーメンを作って待っていた。スープは羊スープ、実に美味い。肉の王様は実は羊ではないか、と真剣に思う。

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