鉈先生と行く雲南ラオス茨の道2016(5)夜間決死行と昼間のハイキング

迫力の茶作りと決死行

完全に夜の闇に包まれたマーラー村。村長の帰りを待っていた我々だが、彼のバイク音は一向に響いて来ない。そんな中、家々の灯りが灯り、そしてそこに設置された大鍋で茶葉を炒る作業が始まっていた。上半身裸、筋骨隆々たる男が大量の茶葉を炒る姿は、ある種宗教儀式のような荘厳な感じがある。それにしても釜炒が夜行われるとは。

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夕方まで摘んでいた茶葉を少し干してから、ゆっくりと炒る。普通の緑茶製造では、すぐに殺青を行い、処理してしまうが、そこは完全に製法が違う。ミャンマーでもそうだったが、プーアール茶の原料を作るようなものであり、出来上がった茶葉をすぐに飲むとかなり強いため、半年ぐらい置くと飲み頃になる代物である。釜で炒った後は、女性がざるの上に茶葉を広げて揉んでいる。今晩の作業はここまでのようだが、釜炒りは延々と続いていた。

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夜の8時になっても村長は戻らなかった。鉈さんは、カメラの充電が切れ掛けていたが、この村には充電する場所もなく、彼は充電ケーブルを持っていなかった。村人はしきりに『ここに泊まっていけ』と勧めてくれたが、決断の時が来た。鉈先生たちは前回ここに泊まったようだが、私はやや強引に『今日は帰る』と主張して、何とか受け入れられた。やはり乗り捨てた車とその中に置いてきた荷物のことも気にかかる。疲れがあり、ごろ寝は堪えると思ったこともある。

 

しかし帰ると言っても5㎞の暗い夜道を歩いて引き返す勇気などとてもない。村の若者が3人、バイクで送ると言って準備してくれた。それからがまた恐怖の連続だった。真っ暗な中、かなりのスピードで山道を走り過ぎる。一昨年のミャンマー決死行を思い出さざるを得ない。するとまた恐怖が増す。あの時は山道がよく見える恐怖だったが、今回は何も見えない恐怖。どっちが本当は恐ろしいのだろうか。ほぼ20分間、生きた心地はしなかった。

 

何とか車が見えて一息ついたが、今度は相当に狭い山道を車で走る恐怖が待っていた。幅がぎりぎりの山道を走るのだから、一歩間違えば、当然下に転落する。しかし周囲に灯りはなく、車のヘッドライトのみが頼りとなる。王さんの運転技術が発揮される。烏太の灯りがうっすらと見えた時は、取り敢えず生還したことに、心から安堵した。

 

烏太の街と言っても規模は小さい。今度は泊まるところを探すが、ゲストハウスの看板があっても、やっていなかった。何とか部屋が確保できるホテルに辿り着いたときは、相当に遅くなっていた。ここの部屋はかなりきれいだったが、ツインの部屋はなく、今晩は珍しく一人部屋となる。しかしあると言っていたWi-Fiは結局繋がらず、疲れも手伝い眠りに就く。

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4月10日(日)

バイラオウー村から

翌朝はスケジュールがよくわからず、早めに起きたが待機となる。例の村長と連絡がなかなかとれなかったようだ。8時半頃宿をチェックアウト。因みにこの宿には中国商人が何人か泊まっており、朝から持ち込んだカップ麺を食べていた。こんな僻地に何の商売があるのだろうか。Wi-Fiは故障しており、全く繋がらなかった。我々は街外れの食堂で朝飯の麺をすすった。

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それから車で約1時間、昨日行ったマーラー村へ向かう山道を行く。今日も同じ村へ行くのか、何の用事があるのだろうかと思っていると、途中に一軒だけあるガソリンスタンド付近で待ち合わせをしており、村長以下3台のバイクが待っていた。またバイクで山道か、と思っていると、村長ともう一人が私の横に乗り込んできた。今日は車で別の場所へ行くらしい。

 

車で20分ほど行くと、小さな村があった。名前をバイラオウーと呼んでいた。一軒の家に入ると老婆が孫と遊びながら、茶葉の枝取り作業をしている。庭には茶葉が干されていた。彼女はやはりヤオ族だった。村長の村とこの村はともに1970年代の文革中に、雲南省の思芽付近から移住してきた同族らしい。なぜここに移住してきたのか、『思芽でもめ事があり移り住んだ』という説明の中に、文革が何か関連しているのだろうか。実に興味深いがそれ以上の説明はなされない。

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そしてそこからは徒歩になった。かなり古い茶の木がある場所まで行くらしい。村長たちはいるものの、地元の人の案内が必要ということで、10歳の少年が先導役になって進む。初めは意気軒昂に歩き始めた我々だったが、きつい山登りに次第に遅れがちなる。勿論民家など一軒もなく、すれ違う人もいない。本当の山の中に入り込んでいく。このいつ終わるとも知れないハイキングは、体力を相当に奪い、鉈先生なども段々よれよれになってくる。

 

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1時間後には奥深い山中に分け入り、その30分後にはバイクが停まっているのが見えた。とうとう着いたかと安堵したが、それはさらに山に分け入った人のもので、目的の古茶樹は全く見えなかった。小休止後、少年や村長が周囲を探し出す。目的地は近かったが、特に目印があるわけでもなく、本道から脇道に入って探している。我々にはもうそんな気力も体力もなく、言われるがままに進むのみ。そして出発から2時間後、とうとうその場所を発見した。

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