ある日の台北日記2019その1(3)東台湾の旅 宜蘭へ

1月15日(火)
東台湾の旅 宜蘭へ

今日から宜蘭、瑞穂、鹿野という東台湾の旅に出る。勿論これは茶旅であり、これまであまりスポットが当たって来なかった、東海岸のお茶の歴史を学ぶのが目的だった。今回も旅のアレンジ、全面的なサポートをしてくれるのはトミーとチャスター、そしてビンセントの3人組。

 

朝8時過ぎに台北まで迎えに来てくれ(彼らは台中からやって来た)、一路宜蘭を目指す。2時間も経たずに、黄さんのところに到着した。彼とは以前一度会ったことがあり、宜蘭で熱心に茶作りをしているという印象があった。お茶などなさそうなところに茶荘があり、横の敷地には最新鋭の設備を備えた工場を新設しているところだった。

 

彼のところはお父さんの代、1970年代に茶業を始め、色々な品種を植え、烏龍茶でも紅茶でも、何でも作って来たという。現在は特色ある茶作りということで、有機栽培を中心に、コンテストでも、有機王の称号を得ている。茶畑は山の方にあるということだった。環境はよさそうだ。様々な種類のお茶を飲み、午前が終わる。

 

昼ご飯を食べようと言って車で出掛ける。道を眺めていて不思議だったのは、空き地のような場所の一角に、ポツンと家が建っているところがいくつもあったことだ。聞いてみると、それを農舎というらしい。どうやら農地に住宅を建てる一つの手法であり、宜蘭までの道が開かれて以降、台北からたくさんの投資があったという。グレーゾーンというヤツだろうか。いや黒にしか見えないが。

 

近くで、と言っていたはずだが、車で30分も離れた食堂へ行った。これは田舎感覚の距離感だ。私にはない発想だが、周囲に店がないということだろう。ちょっと味付けが濃いが確かに料理は美味しい。そして客が次々に入ってくる人気店だ。行列が出来てきたので、すぐに席を立つ。

 

そのまま車は、山を登り始めた。日本時代より前からある茶畑に行こう、というのだ。ここ宜蘭では1885年頃から茶樹が植えられ始めた記録があるという。私も日本時代初期に宜蘭で茶の話が出てくる新聞記事を見ていたので、十分考えられると思って行って見る。確かにかなり古い茶樹が所々に自然と残っていた。

 

そして新しい茶畑も一部にあるが、決して多くはない。日本時代は、山を見れば一面茶畑だったとの証言もあったが、今この山の中腹には淡江大学など2つの大学のキャンパスが作られており、その様相は一変していると言ってよい。ここから見える夜景は素晴らしいので、デートスポットでもあるらしい。街の向こうに太平洋が見える。

 

それから宜蘭県茶業公会の理事長のお店を訪問して、宜蘭茶の歴史のヒントを探る。宜蘭茶の最盛期は光復後のことであり、その後輸出競争力の衰えてと共に、茶作りから茶商へと、変わっていった人々がいたことを知る。一部は中国に台湾茶を輸出しているが、その台湾茶も自分では作っていないというのが現状だろうか。

 

ここには最初に茶業を始めたと言われる一族の人も来てくれ、やはり宜蘭茶は1885年頃に始まったという話を聞く。そして日本時代の茶工場が今も残っているよ、という耳寄りの情報を得たので、是非見たいということで、車で向かう。行って見ると確かに古めかしい、かなり大きな建物があり、ドアなどには日本も感じられる。

 

ただ中に入ると古い製茶機械は残っているが、既に生産はしていない。林さんという老人が、一人でここに住み、先祖が残した茶工場を守っていた。私が日本人だと分かると、一層親切になり、思い出話を色々と聞かせてくれる。この建物は林さんのお父さんが自ら設計して建てたという。かなり凝った造りになっている。もし林さんが居なくなれば、この建物も取り壊されてしまうかもしれない。こういう貴重な建物を保存することは意外と難しいので、困る。

 

宜蘭での調査は終了したので、黄さんを家まで送った後、今日の内に次の目的地である、瑞穂に向かって走り出す。だが瑞穂は花蓮県とは言ってもかなり遠い。まずは花蓮市まで行くのに、2時間以上はかかった。周囲は真っ暗になり、海岸沿いをトラックなどが多く走り、車の運転も何となく危険な感じがする。

 

ようやく花蓮市内に入り、夕飯の場所を探すがすでに夜8時を回り、いいところが見付からない。仕方なく麺屋に入り、4人とも違う麺を頼んで、啜る。何となく味気ない夕飯となったが、やむを得ない。更にここから瑞穂まで、1時間以上車を飛ばした。夜9時半、やっと予約した民宿に入る。

 

民宿の奥さんも我々に早く来て欲しかったようだ。部屋割と簡単な説明をするとすぐに行ってしまう。明日の朝は鍵を置いて勝手に出て行く、と言ったスタイルだ。今日は日中晴れてはいたが、気温はそれほど高くはなった。不思議な作りの民宿の部屋も若干涼しい。疲れたので、早々に寝入る。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です