ある日の台北日記2019その1(2)慈湖 蒋介石象の墓場

1月13日(日)
蒋介石象の墓場

先日食事を一緒にしたTさんから『慈湖に行くけど』と言われたので、ついて行くことにした。慈湖と言えば、35年前、私が初めて台湾に来た時、当時同級生の台湾人、陳さんに連れられて行ったことをはっきりと思いだす。当時は山深い場所だったということと、蒋介石の遺体が安置されている建物の前で、突然衛兵の号令で3回頭を下げさせられた。それ以来、何度台湾に来ても行くことはなかった場所。

 

板橋で待ち合わせた。三猿広場の前で、と言われていたが、三猿って何だろうと思っていた。そして何と読むのだろうかと見てみると、何とそのまま『Sanzaru』と日本語ではないか。最近台湾には本格的な日本も導入されているが、未だ不思議な名前を付けているケースも多い。

 

もう一人初対面のFさんも同行していた。Fさんも80年代からずっと台湾にいる(関わっている)古参。この3人が出会えば、懐かしい名前が飛び出したり、80年代から90年代前半の出来事が突然思い出されたりと、話に花が咲く。Tさん運転の車で慈湖まで、あっという間に感じられた。

 

当然ではあるが、私が来た35年前とは雰囲気もかなり変わっている。しかも今日は何と蒋経国の命日とあって、要人の参拝などもあるのか、警備も厳重で、午前中はそちらには近づけないと言われた。広場の様な場所に行って見て、ビックリした。胸像、座像、立像など、無数の?像が、ところ狭しと置かれているのだ。しかもその像は基本的に蒋介石、そして蒋経国と孫文の3つだけ。2000年頃に開園したこの場所、数百体の像はどうしてやって来たのだろうか。

 

聞くところによれば、蒋家の時代には、どの町、どの学校、どの職場にも蒋介石象、蒋経国像はあった。その時代が終わった後、その像をどうするのか、議論があったようだ。確か中国でも毛沢東像をどうするかという話があったので、それに似ている。結果的にここにかなりの数が集められ、展示?されるようになった。それはある意味で、蒋介石象の墓場とも言えるかもしれない。

 

それにしても様々なポーズ、様々な顔、様々な年齢の蒋介石がいるものだ。国民党が台湾に来た頃は、製造特需だったに違いない。ただ明るい内は問題ないが、もし夜にここに来たら、それはそれは、恐ろしい光景になるだろう。肝試しをこういう場所でやると言えば、不謹慎だろうか。

 

河沿いを歩いて行くと、経国紀念館という建物に出くわした。中には蒋経国関連の資料が沢山展示されており、興味深いものもあった。その向かいには御陵があるようだったが、命日のため一般人は立ち入れなかった。それではと先ほどの場所に戻り、更に行くと、今度は蒋介石の御陵がある。

 

蒋介石は将来中国に戻るということで、遺体は火葬されていないと聞いている。35年前はその安置所に入れたと思うが、今はガラスの壁があり、建物内に入ることは出来ない。これは昨年、事件があったからだ、と言われたが、よく分からない。一人の年配の女性が『なぜ私は中に入れないのだ』と訴えており、スタッフが丁寧に対応しているのが印象的だった。最近台湾にも色んな人が色んな主張をしているらしい。台湾人観光客?が周囲を取り囲み、写真を撮っている。

 

昼になったので、車を走らせ、道沿いのローカル食堂を探す。台湾の場合、立派なレストランではなく、昔からあるB級食堂が本当に美味いし、満足できることが多い。それをよく知るTさんは、毎回ふらっと目に付いた食堂に入り、地元の人が食べている料理に目を走らせ、ウマそうなものを注文しているという。今回も確かに豆腐や油条が旨かったな。

 

午後は桃園神社に向かう。日本時代、神社は台湾中に作られたが、光復後、その殆どが壊されたと聞いている。今ある神社も後から復元したものなどが多く、残っているのは鳥居や灯篭だけというところが多い。そんな中、桃園神社は社殿など、建物が日本時代のまま残っている台湾でもほぼ唯一の神社だと聞き、大いに興味が沸く。ところが行って見ると、10か月間の修復工事に入っており、中には入れなかった。外からちょっと見る感じでは確かに雰囲気がある。次回修復後に再訪しよう。

 

車は板橋に戻り、今日の反省会?がスタバで行われる。それにしても日曜日の午後のスタバは混んでいる。そして3人分のコーヒー代は、ランチの食事とほぼ変わらない料金。何だか不思議な感じがする。今日は台湾の歴史について、再度考える機会が与えられた。国民党とは一体何なのか、そして台湾に及ぼした影響は。話題はいくらでもあるが、時間には限りがある。

 

1月14日(月)
コーヒーを飲む

朝昼兼用の食事。これが何もない日の日課である。今日は大好きになったサンドイッチ屋に行ったが、いつも同じものばかりではと、推薦されたハンバーガーを食してみた。ところがやって来たバーガー、そのあまりの高さ?に唖然。これ、どうやって食べるのだろうか。思わず店員に聞くと、自分で袋に入れて押しつぶして食べるらしい。味は悪くないが、食べにくいこと甚だしい。もう一度頼む気にはなれない、食べるのに疲れる。

 

夕方MRT芝山駅に降り立つ。今日は旧知のSさんとコーヒーを飲むことにした。実はシェフのSさんが、コーヒー屋さんに転職したというので、その仕事場を訪ねることにしたのだ。彼は非番なので、そこでゆっくりお話しする。このコーヒー店、日本人経営で、既にかなり有名。

 

ベテランスタッフが手で入れてくるコーヒーは1杯300元と高いが、非常に上質な感じがする。コーヒーブームに乗り、このようなコーヒーが台湾に受け入れられ始めている。合わせて食べたスコーンも美味しい。Sさんも早く自分の手でコーヒーを淹れてお客さんに出したという。これは面白い挑戦かもしれない。台湾のお茶はどうなるのだろうか。

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