ある日の台北日記2018その2(3)突然淡水へ

9月12日(水)
突然淡水へ

一昨日の夜、偶然出会った李さん。これはきっと何かのご縁だと思い、早々に連絡して、ご自宅を再訪した。李さんはあの大富豪、李春生の4代目、李家に関する資料は豊富に揃っている。前回お会いした時に聞けなかった話を更に聞き、特に洋行との関連について、色々と掘り出していた。

 

すると李さんが1冊の本を取り出した。その本には当時の洋行のことが書かれており、ぜひ欲しいと思った。李さんによれば、これは淡水の博物館が出版したものだから、そこへ行けば買えるのではないか、との話だった。以前台南、というか安平で洋行の支店跡のビルをいくつか見た覚えがある。確かに洋行は淡水も拠点に活動していたかもしれない。

 

そんな話をしていると、急に行きたくなり、李さんの家を出てMRTに飛び乗った。全く計画もなく、何の準備もなしに、淡水に向かった。とにかく目指すは淡水古跡博物館だ。乗った車両はなぜかミッキーマウスの絵が沢山描かれている。MRTで40分以上乗ると、ようやく淡水に着く。今日はいい天気でかなり暑い。ここは得意になったU-bikeを使おうと思ったが、なぜかカードをかざしても上手く行かず歩くことにした。

 

スマホ地図を見ながら歩いていくと15分位で、博物館の場所に着く。まずは海沿いの倉庫や洋館を見てみる。往時ここに税関が置かれ、貿易が行われていたようだ。それから紅毛城と書かれたところへ入り、ここが淡水古跡博物館か、と聞くと、そうだというので、チケットを買い、中に入る。すぐにショップがあったので、聞いてみたが、欲しい本は既に売切れだとか。ここが出版元なのに売切れであれば、もう手に入れる方法はない。

 

登っていくと、そこはまさに安平と同じような紅毛城があり、領事館などが置かれていた様子が分かる。オランダのこと、イギリス歴代総督の話なども興味深い。しかしここが博物館なのだろうか。何だか別にあるような気がして、歩き回るといつの間に外へ出てしまい、気が付くと真理大学という学校のキャンパスに迷い込んでいるではないか。

 

この大学の建物もかなり歴史的で魅力的。特に一角は相当に古い。徳記洋行が一時使用していた建物などが残っており、探し物を見つけた気分になる。だが目指す博物館はない。出入り口があったのでそこの人間に聞いてみてびっくり。『ここの全てが古跡博物館地区なのだ』というのだ。それは内輪では分かる話かもしれないが、外部の人間は博物館と言えば、博物館があると思ってしまうだろう。そういってみても、役人口調で全く埒はあかない。

 

結局分ったことは、ここから歩いて15分ぐらい先に、古跡博物館の管理事務所があるということだったので、仕方なくそこへ行ってみることにした。歩いていくと結構暑い。ちょっと不満がこみ上げてくる。そして目の前に現れたのは、博物館ではなく、何と名門淡水ゴルフ場だったので驚いた。30年近く前、ここで何度かプレーしたことがあるが、キャディは皆セミプロで、我々が使いたいクラブを使わせてくれないことで有名だった。

 

そのクラブハウスの向かいに、その管理事務所はあったが、何と半分は台湾ゴルフ史跡館になっていた。思わず入ってみてみると、懐かしい陳志忠など往年の名プレーヤーの紹介が続々出てきた。青木功など日本人プロの写真などもある。どうやら謝敏男などが寄贈したものを展示しているようだ。

 

入り口で警備員に『ここで出版された本が買いたい』というと親切にも聞いてくれ、係員が出てきて対応してくれた。少し待っているとその本を出してくれ、『これは既に売切れだが、わざわざ日本から来たので、同僚の分を1冊差し上げる』というではないか。これにはかなり恐縮してしまうが、折角なので頂戴した。こういうところが如何にも台湾だった。

 

帰りにゴルフ場の横にある清仏戦争後に作られた砦跡も見学した。何とここが最初に買ったチケットと共通で、入場できると知ったが、如何にもわかりにくい。特に何がある訳でもないが、周囲をぐるっと回ってみた。30年前も当然あったのだろうが、その頃こんな場所には全く気が付かなかった。歴史というのは興味を持って初めて気が付くことが多い。

 

そこから歩いて帰るのは辛いので、もう一度U-bikeにチャレンジしたら、今度は乗れた。どうもまだシステムはよく分かっていない。そのまま帰ろうかと思ったが、途中に洋行の店舗跡があったので、何か資料はないかと寄ってみる。そこはダグラス商会というイギリスの商社だったが、中にはほんの一部の資料しかなかった。聞いてみるとすでに手に入れた本にすべて載っているという。

 

更には教会が目に入ったので寄ってみる。ここと隣の診療所は、あのマッカイ牧師が1870年代、最初に建てたものだった。宣教師たちもまずは淡水を拠点に活動していたことが分かる。駅に戻ろうとすると、今度は地元の寺のお祭りに遭遇する。1日で何とも色々なものに出会うなと、我ながら感心する。

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