ある日の埔里日記2018その3(7)台南の老舗茶荘

5月7日(月)
月曜日に台南に向かう

一度東京へ戻る日が近づいていた。そんな中、Sさんから『八田与一の作ったダムに一緒に行きませんか?』とのお誘いが来た。日にちは5月8日、帰国前日なので予定もなく、行ったことがなかったので行ってみることにした。実は5月8日は八田与一の命日であり、毎年法要が行われているという。ただ昨年は直前に八田与一像を壊される事件が起き、色々と大変だったと聞く。

 

折角南へ向かうのだから、ここは台南へ行こうと思い立つ。ダムのある烏山頭も台南の一部らしいので、ちょうどよい。台南にある国立歴史博物館は一見の価値があると言われていたので、是非見てみたいと思い、前日から行く日程を立て、ホテルも台南に予約していた。

 

ところが直前になって、『博物館は月曜日、休みでしょう』と言われ、初めて検索すると本当に休館日だった。完全にやらかしてしまった。さて、どうしようか。一緒に行く予定のKさんがちょうど台南にいたので聞いてみると、『それなら茶荘巡りでもしましょうか』と言ってくれたので、それに乗っかってしまう。何ともいい加減なことだ。

 

取り敢えず埔里から台中高鐵駅へ出て、新烏日から区間車で嘉義に向かった。1時間40分かかって嘉義に着くと乗り継ぎの間に駅弁を頬張る。それからやって来た莒光号に乗り、待ち合わせ場所の新栄に向かう。ここはあっという間に着いてしまう。莒光号の車内への出入りは自動ドアではなく、手動なのがなぜだろうととても気にかかる。

 

新栄という駅は初めて降りたが、特に何もなさそうな街に見えた。でも駅の近くに今は使われていない引き込み線などが見え、ここも昔は糖業あたりで栄えたのだろうと感じられた。Kさんも台南から来てくれ、彼が以前一度訪ねた茶荘に行ってみることにした。突然店に飛び込むと、店の人と客が怪訝そうな顔をしたが、日本人でFB知り合いだと説明すると、喜んで受け入れてくれた。

 

そこへ6代目という若い黄さんが戻って来た。慶瑞茶荘は何と1850年創業の老舗だというので驚いた。新栄にそんな古い茶荘があるとは。確かに古そうな茶缶が置かれており、奇種などという文字も見えるので写真を撮らせてもらう。歴史について質問すると、『おじさんの工場へ行こう』と若い黄さんは言い出す。どうやら、黄さんとお父さんは、店で販売担当、おじさんが製茶担当らしい。

 

車で10分ぐらい走る。周囲が畑に替わった頃、その工場に着いた。敷地内には相当に古い、立派な木が植わっている。中にはかなり古い製茶道具や茶缶などもあり、博物館でも出来そうだった。黄さんのおじさんは、製茶だけではなく、台湾茶の歴史についても独力で研究している人だった。そして自分は日本時代末期、父親が商売の関係で厦門にいる時に生まれたという。香港の堯陽茶行などとは繋がりがあるらしい。100年前の包種茶は今とは全く違って、相当発酵度が高く、焙煎も掛けて輸出されていたともいう。品質もそれほどではなく、勿論値段も安かった。思いの他、収穫のある訪問となった。

駅まで車で送ってもらい、自強号に乗って台南へ向かう。新栄は自強号が停まる駅なのである。そういえば自強号の車内へ入るドアはやはり自動だった。莒光号との違いはそこか。そんなことを考えていると台南に着く。取り敢えず駅まで予約した宿に行ってみる。ビルの1階に総合受付があり、ビルの上の方、何フロアーかが、客室になっていた。まあ、駅前で800元、そんなものだろう。

 

Kさんの知っている老茶荘に向かった。台南駅前から歩いていく。思ったより時間がかかったが、昔の街並の中にその茶荘はひっそりと建っていた。振發茶行、1836-41年の間に台北で創業し、1860年には台南に移って開業というから、180年以上の歴史を誇る台湾最古の茶荘だと言える。店内には恐ろしく古い茶缶も見える。

 

店は改修、移動をしているようで、今は小さいが往時はかなりの規模で商いをしていたと、6代目の厳さんが語る。土産物を買いに日本人も訪れるようで、伝統的な紙包みは4両の他、買いやすい2両の包みも用意されており、価格表もしっかりしていて分かりやすい。今は若者が跡を継ぎ、伝統を生かした中に新しい取り組み、FBなどSNSでの発信なども行われている。

 

最後は退勤時の満員バスに乗り、ちょっと離れたところにある、梅山製茶廠というお店に行った。郊外の住宅地、なんでこんなところに、と言う感じだった。というか、Kさん、よく見付けたなあ。そこで夕飯として、肉圓をご馳走になり、高山茶を飲ませてもらう。名前から高山茶の歴史が何らかわかるのでは、と期待したが、この店は梅山製茶廠の代理店に過ぎず、成果は得られなかった。

 

バスで何とかホテルに戻り、暗い中、折角なので付近を散策する。台南の思い出は1995年、出張に出来て、駅前の台南飯店に泊まったことだが、今はこのホテルも立派になっている。部屋に帰ると、ちょうど横に洗濯機が置かれており、学生が洗濯しながら大声で話しているので、煩かった。

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