ある日の埔里日記2017その6(8)港口茶を再訪する

12月18日(月)
屏東へ

朝7時のバスに乗る。いつものように台中へ行き、そこでトミーを待ち合わせだ。今回は南部、それも台湾最南端に向かう。これまでトミーには様々なところに連れて行ってもらったが、泊りがけで行くのは初めてである。どんなことになるのか、それは全て彼に任せている。面白い旅になりそうだ。

 

車は高速道路を快調に飛ばし、途中一度休憩しただけで、12時前には恒春の街までやって来た。ここは昨年来たことがあるので、様子は分かっていつもりだったが、車で来るのとバスで来るのではかなり景色が違って見えた。取り敢えず腹が減ったので道路沿いの牛肉麺屋に入る。台湾牛とか屏東牛とか書かれると、食べてみない訳には行かない。麺は結構いい値段で、ここが観光客向けだと分かる。まあそんなものだろう、という味だった。

 

それから満洲郷へ向かう。恒春の門を出て、東に10㎞、前回も訪ねた朱松雄さんの家があった。ここは道路沿いにあり、分かりやすい。既にトミーが訪問することを事前に告げていたので、朱さん夫妻に歓迎された。ここは1年前に訪れた時と、特に変わった様子はない。『港口茶は緑茶か』という質問への回答はちょっと曖昧になる。

 

トミーが茶を教えていると聞くと『ぜひこの茶の欠点がどこにあるか、アドバイスして欲しい』と非常に前向きな態度で、尋ねてくる。朱さんは定年まではサラリーマンだった人だから、常に勉強しようという姿勢が感じられる。港口茶は初め緑茶だったが、少しずつ改良が加えられた、という話もあったが、確かに常に改良しているのかもしれない。

 

朱さんに伴われて、茶園に向かう。私は昨年も見ていたが、海が一望できる素晴らしい景色だった。今はシーズンオフでお茶は作っておらず、茶樹は修繕されていた。かなり茶の実が付いており、これがまた自然交配して雑種となるのだろうか。別のところには金萱が植えられてもいるようだ。

 

道路まで戻り、朱さんと別れた。我々には気になる所があり、もう一か所、訪問することにした。そこは前回私が行った時は誰もおらず、話も聞けなかったが、正宗港口茶と書かれた古びた建物がある家だった。実はある人に『港口茶は緑茶か』と質問した時、『あそこは兄弟で違うお茶を作っている。弟のところへ行ってみろ』と言われていたのだ。

 

訪ねてみると、主人が出てきた。やはり朱さんという苗字。朱金成さんだった。この地区で茶を作っているのは3軒だけで全て親族だという。彼は松雄さんの弟さんだと思うのだが、親族の話などにちょっとした食い違いがあるが不思議だ。彼の方はずっとこの地で茶を作り続けていたと言い、この辺の一族は皆客家で広東から来たともいう。

 

だが彼の茶園も先ほどと同じところにあるのだ。これは何を意味するのだろうか。結局は、先代からの相続を3つに分けたのではないかと推測する。そしてどうやら親族間には色々とあるようだと感じるが、それは私には関係のないことなので、話をそのまま聞いて、茶を飲ませてもらったところ、こちらの方が緑茶に近かった。なるほど。何故という疑問は色々とあったが、ちょっと茶を買ってお暇した。

 

今晩は屏東市内に泊まるというので、車は北上を始めた。同じ屏東県だから近いだろうと思っていたが、それは大きな間違いだった。何と車で2時間もかかってしまう。屏東は大きいのだ。市内に入っても街は思っていたより大きい。今晩はトミーの知り合いと会う約束だということで彼らの店を探すが、なかなか見つからない。

 

ようやく見つけたそこはやはり茶荘だった。屏東の街も茶荘はかなりある。ただ単にお店を開いていても、なかなか厳しい。彼らは新しい茶荘の形を模索しており、トミーの講座で勉強し、指南を仰いでいた。イベント出店用の格好いい台車やコーヒーを淹れるマシーンのようなお茶淹れ機の話など、茶業界も動いていかなければならないだろう。

 

夕飯も彼らにご馳走になった。新鮮な魚介類などがふんだんに出てきて、満足。お腹も一杯になり、眠気が襲う。確かに今日は朝早くから起きていたので、早めに休みたいが、彼らが予約してくれていたホテルに行ってビックリ。いわゆる汽車旅館、日本ではラブホテルではないかと思うような作りだった。しかも名前は六本木Motelだ。

 

実際部屋の1階に車を駐車して、2階へ上がる仕組みであり、車中の人物は外から遮断されていて見えない。更にはシャッターまで閉まるので、車の番号すら分からない。部屋はかなりきれいで広くて驚くがラブホ感も満載。こんなところに一人で泊まってよいのか、という感じだが、日本と違って台湾では、誰がここに泊まるは自由だった。これで1泊1600元は安い、と言わざるを得ない。何だかちょっと落ち着かない夜を過ごす。

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