ある日の埔里日記2017その6(5)水沙連珈琲フェスティバル

12月10日(日)
水沙連珈琲フェスティバル

雨が心配された今日だが、何と朝から快晴だった。これは何を意味するのだろうか。ついにその日がやってきたという感じ。いつもはIさんの車に乗せてもらうのだが、今日Iさんは早くも演習林で写生をしているはずだ。私はとぼとぼ歩いて、イベント会場である演習林に向かった。

 

水沙連珈琲フェスティバル、私が何かしたわけではないが、この3か月、打ち合わせに参加したこともあり、感慨深いイベントである。北大から来られた来賓も到着、日本人メンバーも集結し始めた。そして各ブースでは早くも珈琲の香りが漂ってくる。いつもは殺風景な演習林が、今日は何だか立派に見える。

 

9時過ぎに来賓が集まり、開幕式が行われた。南投県、埔里鎮などの偉い人や黄先生など何人かが祝辞を述べ、そして北大からの祝辞も読み上げられた。このイベントの実質の主催者である、18度Cの茆さんも感慨深げにあいさつに立つ。またこのイベントの言い出しっぺである日本人のSさんは功労者として紹介された。

 

それからこの地区のバリスターが100人の来賓にコーヒーを淹れるイベントが始まる。私も北大の方に交じって、コーヒーを飲ませてもらったが、お茶と同じようにコーヒーも淹れる人の個性が強く出るようで、実に柔らかい味わいに驚いた。聞けば、この付近の若手No.1が淹れてくれたらしい。

 

イベントに訪れた人の多くはコーヒーが目当てだったかもしれないが、そもそも演習林とは何か、なぜ今日このイベントがあるのかに注目する人もいた。そしてその100年前の建物をじっくり眺めては、首を傾げたりしている。地元の人にとっても、この建物と敷地は謎だったに違いない。僅かに70歳以上の人の一部がここの由来を記憶している程度だ。

 

日本人会担当の珈琲豆の種飛ばし大会もついに始まった。果たして参加者がいるだろうかと心配されたが、何となく興味を持つ人が多く、途切れることなく、種が飛ばされていった。ほとんどの人が初めてなので、うまくは行かないが、それがまた笑いを誘い、和やかな雰囲気に包まれる。司会はあの下山操子さんが引き受け、非常に上手いリードで参加者を募り、激励していたのは印象的だった。下山さんの教え子という人も何人か現れ、彼女の歴史を少し見ることができた。

 

昼ごはんは弁当が支給されたが、とても豪華だった。これまで台湾では見たこともないような立派さ。聞けば何と茆さんがイベントスタッフ、ブース出展者のために特注、自腹で配ってくれたらしい。何とも驚く気配りだった。北大の人たちもこのイベントの盛り上がりと茆さんの配慮には驚いたようだった。北大は戦前、朝鮮半島や樺太にも演習林を持っていたようだが、今もってこのような扱いを受けることなどなかっただろう。

 

午後も引き続き種飛ばしは行われたが、人出は午前中ほどではなかった。それでも最後までやり切り、男女及び子供の1-3位を決めて、表彰式まで行い、商品が手渡された。その間、下山さんはずっと立ったままで、マイクを握って司会を続けていた。70歳を越えているとはとても思えない、驚くほどの体力だった。やはり鍛え方が違う。

 

片付けが始まったが、何となく皆に達成感があるように見えた。ブースでの珈琲の売り上げは分からないが、イベントとしては十分に成功したのではないだろうか。そしてここに正式に日本人会も立ち上がり、地元の人々と一体となってイベントに参加したことの意義は大きいように感じられた。来年以降も続くだろうか。お楽しみだ。

 

一度部屋に戻り、夕方Iさんの車で出掛けた。今晩は北大の人々の歓迎宴を茆さんが自らのレストランで開くというのでついでに御呼ばれした。牛耳という、郊外にある観光スポットに茆さんは鉄板焼き屋をもっていた。この辺ではかなり立派な場所で驚いた。しかも2つある鉄板の周囲に約20名が座り、ほぼ借り切り状態となる。

 

そして牛肉のステーキは勿論、魚のバター焼きやホタテなど魚介類まで豊富に登場し実に立派な食事が供された。最後は鉄板で作るどら焼きまで、趣向が凝らされており、単に豪華なだけでなく、お客は楽しめる内容となっていた。埔里ではこんなの食べたことがない。茆さんは世界中を旅して、美味しいものを探してくるようだ。

 

実は2人だけこの会と関係ないお客さん、カップルがいた。茆さんはそれに気が付くと、すぐに彼らのもとに行き、居心地が悪いだろうと、色々と気配りを始めた。男性が誕生日なのでここへ来た、と分かると、さっと自社のチョコレートをプレゼントするなど、そのやり方は実にスマートですごい。最後は台湾人同士だから、皆が仲良くなり、お開きとなる。イベントと言い、夕食と言い、茆さんにはすっかりお世話になってしまったが、満足いく1日だった。

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