NHKテレビで中国語コラム『アジアの中華メシ』2015年2月号第11回『具を包むから包子』

「餃子と饅頭はどのように区別されているのでしょう」と聞かれたことがあります。これまでの経験でいうと、中国の饅頭は具が入っていない物を指すようです。具を入れて包むので包子というのだと理解していますが、例外も沢山ありそうですね。

餃子も包子の一種でしょうか? 中国には上海の小籠包や広東の叉焼包など美味しい包子が色いろ々いろとありますね。筆者は台湾へ行くと、台湾の有名な小籠包屋さんの豆沙包という餡子入りの包子を、デザートとして必ず注文しています。

中国内モンゴル自治区では「焼麦」という包子を見つけました。小麦粉で作ったごく薄い皮の中に、羊肉やみじん切りの野菜、調味料を加えたものを包んで蒸したもので、元代より伝わる巾着形できれいな形をしています。「焼き」と書きながら蒸すのが特徴で、面白いですね。因ちなみに北方では〈焼麦〉、南方では〈焼売〉というとのこと、あのシュウマイの原型のようです。

内モンゴルの北にあるモンゴル国では肉まんをボーズ(包子から派生)といい、こちらも千切りの羊肉がたっぷり入った包子です。新疆ウイグル自治区カシュガルの市場で食べた羊肉入り包子。蒸籠の中の包子の上にナンを載せて、その汁を少し吸い取ります。その後そのナンはシシカバブーの皿になり、我々の目の前に登場しましたが、このナンの味が忘れられません。ナンには塩気があり、羊肉の肉汁との融合が素晴らしいです。お茶の時間には老人が格好いい帽子を被り、茶をすする光景を見ました。お茶請けは焼き羊肉まん、肉汁が大量に出てきますので、熱々で食べると火やけど傷しそうです。

カザフスタンではマンティという名前で出てきました。マンティは饅頭から派生した呼び名だと思われますが、羊の肉が具として入っています。かなり時間をかけて蒸されたマンティはやはり羊肉の肉汁たっぷりで実に美味しかったです。

チベットでは肉まんをモモと言っています。一瞬果物を連想しましたが、インドの東北部、チベットにほど近いカリンポンで食べたモモは形も中身も完全な日本の肉まん。インドでは豚肉を食べることが非常に少ないので、この地で久々に食べた肉まんは日本人としては絶品でした。中国の清朝時代、この地域がチベットやモンゴルと近しい関係にあったことから、伝わったと考えられています。

ミャンマー、ヤンゴンの道端の喫茶店で、ミルクティーを注文すると偶たまたま々出てきた包子。やはり叉焼が入った肉まんであり、発音もバオジと、バオズと類似していました。ちょっと甘い叉焼包を食べながら、甘いミルクティーを飲むと美味しく感じられたのは、ヤンゴンの暑さのせいでしょうか。

アジア各地に広がった包子。若干の発音の違いなどはあるものの、多くは聞き取れる範囲内で、それほど変化していませんでした。同時に味についても、それほど大きな変化はなく、アジア全域に受け入れられた様子が分かります。やはり手軽で便利な食べ物、ということでしょうか。このような食べ物があるとアジアの旅も安心できますね。

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