アンコールへの旅2014(10)何気ない日常を歩く

トゥクトゥクの悲哀

帰りはまたトボトボと、自分のホテルまで歩く。トゥクトゥクの運転手から何回も何回も声を掛けられたが、全て無視した。そういえば4年前にサレンと初めて会った時、私は夜遊びをしないので、私を宿に送ると彼はこのマーケットへ来て、お客を待つと言っていたのを思い出す。一晩待っても一人も客を捕まえられない時もある。そんな時はかなり疲れるらしい。若いから体は何とかなるが、精神的な疲労は相当ある。

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彼はその生活から抜け出すことを常に考えていたと思う。そしていつの間にか、実家の畑を耕していた。今回会った彼は、随分と太っていた。彼とほとんど話をしていないので、本当のところは分からないが、気持ちにゆとりが出てきたのかな、と感じる。彼の村、彼の実家へ行って、サレンに向いているのは、運転手ではないのだと、つくづく思う。

 

そんな事を考えながらも、トゥクトゥクの誘いを断り続ける。確かに乗ってあげれば彼らは喜ぶのかもしれない。でも私は歩きたい。双方が喜ばないことをしても、きっと上手くは行かない。薄暗いシェムリアップの埃っぽい道を歩きながら、あれこれと考える。悠に30分以上かかったが、満腹の腹ごなしの運動にはちょうど良かった。そしてまた、ホテルの部屋で寝つきが悪かった。

 

12月22日(月)

散歩

翌朝も早く起きて、朝食をサクッと食べた。と言ってもかなりの量を食べている。既に食べ過ぎで胃腸が悲鳴を上げている。とにかく歩くことにしよう。昨日まではバスに乗ることが多く、歩く時間が少なかった。今日は午後の便でバンコックに戻るだけだったから、たっぷりと時間はある。

 

ホテルから6号線を越えて、東の方に歩いていく。ちょっと行くとすぐに、田舎の景色となる。車が通るたびに埃が舞い上がるが、それを気にする人などいない。ペットボトルに詰めたガソリンが売られている。ミャンマーでも昔よく見たが、今は田舎でしか見られない。

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高級ホテルの庭が広い。仏塔が再建された場所もある。観光コースにしたのだろうか。きれいな土産物屋さんがいくつか出来ている。従来のマーケットとは違う、ちょっと離れた空間に工房などを作り、その商品を売る。その横では懸命に商品作りに励む姿も見られる。脇道に入ると木々が生い茂り、道路脇には何をするでもない人々が、何となく道を眺めていたりする。この何気ない日常、本来見るべきものは、過去の遺産ではなく、現在の生活ではないのか、とちょっと考えてしまう。

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少し早いがホテルの近くに戻り、ランチを食べる。昨日気になったレストラン、どう見ても中国系がやっており、粥などのメニューがあったので入ってみた。ところが店員だけでなく、店主と目されるおばさんも普通話を解さなかった。顔は中国系なので、勉強しなかっただけだろうが、看板には中国語も書かれており、中国人観光客とコミュニケーションできなくて困ることはないのか、とこちらが心配する。いや、ここには観光客など来ないのだ。

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蛙のお粥を頼む。3米ドルもするのだが、量も滅茶苦茶多い。とても一人では食べ切れないが、この暑い中、懸命に食べる。汗がしたたり落ちる。おばさんに『暑い』というと、扇風機を2台動かしてくれた。その風を受けながら、何と最後まで完食した。何故そうするのか、自分でもわからない。ちょっとムキになってしまった。

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それにしても、ここでも時間が止まり、皆が止まったように動かない。お客も入って来ない。12月だというのに、何でこんなに暑いのだ!当たり前だ、こんなに暑いのに、熱い粥をたらふく腹に収めたら、誰だって汗がどんどん出るよ、おばさんはそんな顔をしていた。それでも乾季のこの季節、雨季に比べればマシのようなのだが。彼女はここで生まれたのだろうが、どんな人生を生きてきたのか。ちょっと興味が湧くが、それを知るすべがない。

 

ホテルに戻り、チェックアウト。空港までのトゥクトゥクを頼むと、『ここで頼むと7米ドル、外だともう少し安いかも』というので、外へ出た。これまで何度か声を掛けてきた運ちゃんだが、一度も振り向かなかった私。目が合うと向こうが『こいつは客じゃない』と目を逸らした。ところが私の方から声を掛けたのでビックリして、何だか6米ドルで行くことになった。

 

昼下がりの街中を走ると、暑い空気が抜けていき、気持ちの良いドライブとは言えない。来た時は夜だったので、実に爽やかだったのに。そういえば4月にインドのバラナシへ行った時、空港まで乗ったオーリキシャ―の暑かったこと。熱風を掻きまわし、叩き付けてくる感じで、喉がカラカラになり、死にそうになったことを懐かしく思い出す。それに比べれば今日のトゥクトゥクなど問題はないのだが、なぜか暑いと思ってしまうのは、昨晩トゥクトゥク運ちゃんたちのことを考えていたからだろうか。

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空港に着くと、2時間ちょっと前なのに、バンコックエアーのチェックインは始まっていなかった。隣のエアアジアは長蛇の列だが、こちらは乗客全員がチェックインを待っているという雰囲気。イミグレを抜けると、ここにもちゃんとラウンジが用意されており、冷たいジュースを飲んで生き返った。

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