NHKテレビで中国語コラム『アジアの中華メシ』2014年9月号第6回『バクテー(肉骨茶)』

今回は皆さんにはあまり馴染のない料理を紹介したいと思います。その名はバクテー(肉骨茶)といい、主にマレーシアとシンガポールで食べられている鍋料理です。「お茶」と聞くとすぐに反応してしまう筆者は、かなり以前にクアラルンプールのチャイナタウンで初めてこの名を目にして、朝から注文してみたのですが、何と「お茶は入っていない」というのでがっかりしたのを覚えています。おまけに味は漢方薬臭い、うーん、何だか残念な気分で、その後この食べ物に手を出すことはありませんでした。ところが先日シンガポールで知り合いに勧められ、久しぶりに口にしてみると意外なほど美おい味しかったので、取り上げることにしました。

「肉骨茶」を「バクテー」と読むのは、福建の言葉。福建では本当に様さまざま々な美味しいものが作られていますが、この料理も福建の土鍋料理から来たようです。マレーシアに移住してきた福建人が、削落としきれなかった豚肉が付いた骨を使い、大茴香や桂皮、胡椒などの漢方の生薬と醬油を入れて煮込んで作ったもので、主に貧しかった肉体労働者の食べ物だったということです。因ちなみに名前に茶が付くのは「スープの色が烏龍茶のように濃い褐色だから」と言われました。

シンガポールで人気のお店に行くと、ランチに行列が出来ており、テーブルは外まではみ出していました。お味の方はスープにニンニクが効いており、肉も骨に十分に付いていました。昔のイメージはいっぺんに吹き飛んでしまい、最後までスープをすするほどでした。地元の人から観光客まで、皆笑顔で食べていました。因みにこのお店、ランチの忙しいとき以外は、お茶を注文してゆっくり過ごすことも可能のようです。今や日本よりかなり高い地価の国シンガポール、バクテーの代金もどんどん上がっているようでした。

一方本家を自称するマレーシア。相変わらずチャイナタウンなどでは昔ながらのバクテーを試してみることも可能ですが、繁華街のブキッビンタンあたりにバクテーの美味い店が出来ているとのことで連れて行ってもらいました。オープンスペースに心地よい風が吹く夜、中国をはじめアジア各地からやってきた観光客、ビジネス客が中国語を使って、楽しそうに会話していました。

ここのバクテーは、シンガポールの物より濃厚な感じで、オリジナルに近いと思われますが、それでも漢方薬の臭みなどは消されており、食べやすくなっていました。ご飯を頼んで汁をかけて食べるのも美味しいですね。そして一番驚いたのは、最近流行り始めたというドライバクテー。これは汁なし、ということですが、肉に汁の味がよくしみ込んでおり、絶品でした。豚肉の好きな中国人の口に合うようにできています。ご飯のおかずとして美味しく頂きました。

因みにマレーシアは人口の60%以上がイスラム教徒で豚肉を食さないため、バクテーはあくまで華人のための料理でしたが、最近では海鮮、鶏肉などを使ったバクテーも出てきたようで、今後はアジアに広がっていく可能性も感じられまた。

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