アンコールへの旅2014(6)気球、それから伝統の森に

12月20日(土)

華人経営の気球

翌朝も朝食をよく食べた。そろそろセーブしないと不調になるというサインが出ているにも拘らず、食べ捲った。これは一種のストレスではないのか、そう思えた。何に対するストレスなのだろうか?団体行動か、それともアンコールに対するものか、自分では判断しかねた。

 

今朝はまず、気球に乗りに行く。と言っても高所恐怖症の私は皆さんに付いていくだけ。気球など乗ろうものなら、即座に卒倒してしまうだろう。以前トルコの観光地カッパドキアで、絶対に乗るべきだと誘われたことがあるが、一撃で断った。その数か月後、エジプトとカッパドキアで墜落事故があった。私は墜落が怖いのではなく、そもそも上に上がって行くだけでダメなのである。

 

気球乗り場は郊外にあった。行ってみて、かなりビックリした。気球といえば、上に上がり、風任せに動いて行くもの、どこかを一周して戻ってくるものと勝手に思い込んでいたが、何とここの気球は固定式、ようは上に上がるだけで、ロープでしっかり固定されている。これなら、私でも乗れそうな感じだった。

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皆さんが上の風景を楽しんでいる頃、私はそこに中華的な財神を発見した。カンボジアには華人が沢山おり、既に同化しているので、誰が華人かよく分からないが、このような物を見ると、中国を感じてしまう。そして同時に、商売はやはり華人だ、と思ってしまう。昨晩のディナーショーレストラン同様、顧客のニーズを最大限満たし、かつリスクも抑えた結果、この固定式になったのだろう。お客は気球に乗って高いところに行き、アンコール全体を見渡したいのであり、気球で旅をしたいとは思っていないのだから、これで十分なわけだ。確か一人15ドル。

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だが降りてきた人たちは口々に不満を述べた。『朝方は霧か靄がかかり、アンコールワットがよく見えない。絶対に午後か夕方にしてもらうべきだった。急に予定が変更になったのは、気球会社の策略か』と。どうやら午後の方に人気があるので、午前に回されてしまったと思っているようだ。私は事の真相など知らないし、興味もないが、そうであるならば、それもまた華人らしい。

 

IKTT

それからバスに乗り、10年前に日本人の森本さんが作ったIKTT伝統の森に向かう。これが3度目の訪問だ。一番ワクワクする場所。過去2回はサレンのトゥクトゥクに乗り、物凄いアップダウンに耐えて1時間半かけて訪ねた。だが今回バス、しかも道が舗装されており、何だかスーッと眠りに入ってしまうほどスムーズ。

 

過去とは違う道を通り、かなり大回りした状況で、最後にデコボコ道に入った。ここだけが変わっていなかった。初めての皆さんはその道の悪さに驚いたかもしれないが、こちらは道が良くなり過ぎたことに驚いていた。伝統の森を一から作った森本さんの苦労を肌で知るには、デコボコ道を喘いで来るのが良い。ダンプが何台もやって来て道を塞いだ。

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伝統の森の入り口でバスを降りた。バスは村まで入れるとは思ったが、ここに来る時は歩いて入るのが良い。既にいい風が吹き抜けている。森の間の道をゆっくりと歩いていく。それが至極の喜び、というものだろう。5分ぐらい歩くと、工房や事務所のある村へ着く。『あー、帰って来たな』と思わせる何かがある。実にゆったりとした空気が微かに流れている。

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幼いSちゃんは早速歩き始める。工房には赤ちゃんや幼い子供たちがお母さんと一緒にいた。言葉はなくても交流は始まる。ましてやSちゃんは半分カンボジアの血を引いている。ある意味、故郷の大地を踏みしめているようだ。団体行動だが、期せずして工房見学がスタートした。

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そこへ日本人女性がやって来て、案内を始めた。Mさん、確か3年前も日本語の先生としてここに滞在していた。いつの間にか来客が多くなり、お世話係になったのだろうか。森本さんの所在を訪ねると、事務所脇の作業場に居た。そこでは何と繭を茹でていた。『45日に一度しかない作業、みなさんは運がいい』と森本さんの声がした。繭から糸を取り出すのだとか。皆集まって茹でている。

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それから一通り、Mさんが工房を案内してくれた。工房は心なしかきれいになり、若い女性が働いていた。その中で大きな布をハンモック代わりにして揺られている幼子がいた。Sちゃんは気になっているようで近所をウロウロしている。この子は障害を持っており、お母さんは、その横で働いている。伝統の森ではこのような障害を持つ子と親を受け入れている。保育所などは作らず、子供は親のそばで育てる、というポリシーが、ここに生きている。

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その間に森本さんはどこかのマスコミのインタビューを受けていた。本当に忙しい日々を送っている。あとで聞いてみると、それはTBSの『世界ふしぎ発見』という長寿番組の収録だった。メンバーの一人は知らないうちにその情報を掴み、ミステリーハンターと一緒に写真まで撮っていた。この番組、我が家の奥さんも大好きで30年以上見ている。私にはどこが面白いかよく分からないが、黒柳さんがいる限り、徹子の部屋と並んで続く番組だな、と話したばかりだったので驚いた。しかも今回はクイズなし、この番組も変わろうとしているのだろうか。

 

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