タイ茶を訪ねる茶旅2015(3)バンコック 景気が悪いタイ

フェリーでチャオプラヤ川を

フェリー乗り場は本当に小さかった。そこは地元の人しか利用しない場所。チケットもそこで物を売っているおばさんから買う。何故か欧米人親子がやってきた。赤ちゃんを連れていたので、皆がそこに集まってきて、あやし始める。タイ人は本当に子供好きだ!タイ人の赤ちゃんもやって来て、賑やかになる。如何にもタイのローカルといった風景に、大いに和む。先ほどのシンハでの張り詰めたミーティングの雰囲気が一気に吹き飛ぶ。これぞタイ!

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15分ほど待ってフェリーがやってきた。出発してすぐに、あの獅子のマークの建物が見えてきた。広大な敷地、船上から見るシンハの建物群は実に立派に聳え建っていた。タイの象徴とも言えるその光景と、その大手企業が作るお茶、今後どう展開していくのだろうか。興味津々である。

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これまでチャオプラヤ川のフェリーには何度も乗っているが、いつも行くのはチャイナタウンやワットポーまで。今回は相当上流から乗って下って行く。乗客のいる乗り場のみ停まり、後は無視して進んでいくのが面白い。乗客がいることを知らせる何かがあるのだろうか。結構なスピードで通過していくので、急に停まることなどできはしない。一般的に観光客はチャオプラヤクルーズという名前の英語アナウンスが付く料金の高い船に乗ることが多い。このフェリーに乗るのはこれを移動手段にしている地元民であり、その数が意外に多いことも分かってくる。やはりバンコックはチャオプラヤを中心に栄えてきたのである。

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ただこの川を通行する船舶の量は昔と比べてかなり減っているような気がする。以前は船がぶつかりそうになるほど、船が交錯していたこともあったが、今はスイスイと進んでいく。上流だからだろうか。かなり大きな橋が見えてくる。アーチが三つもあり、かなり鮮やかな橋である。少し大型の船は身を屈めて、橋の下を通っているように見えるのがおかしい。

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下流の方に来ると、数十年前に建てられたと思われる歴史的建造物が目に入ってくる。これはずっしりと重く建っており、中には現役で使われているものもある。往時西洋から取り入れた建築手法は今に息づいている。そして高級ホテルが立ち並ぶ現代的建物。そのコントラストにも歴史が感じられる。

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タクシン橋でフェリーを下りる。30分以上乗っていたことになる。行きのタクシーは30分で200バーツ以上かかったが、このフェリーは僅か15バーツ。何とも有難い。ここからBTSでサラディーン、そしてその先はバスで宿に戻った。たった半日なのに、大旅行をした気分。かなり疲れたので、昼寝をした。

 

じいさんの店で

夜はいつもここに泊まると行く、客家のじいさんの店でご飯を食べる。もうここに通い始めて4年になるが、『商売はどうか』と聞くと、いつも『まあまあ』と答えが帰ってくる。ところが今日は『いや、景気が悪い』とはっきり言う。珍しいことだが、それが今のタイ経済の真実なのであろう。

 

『タイ人はその日のことしか考えない。今日金があれば、外で飯を食い、金がなければ家で食う』というのである。昨年ぐらいから景気が悪いとは感じていたが、いつに庶民レベルではっきりと表れてきたのかもしれない。タイではクーデターや洪水など毎年何かのイベントがあり、経済的な数字が落ちても、みなそのせいと言われてきているが、実際は中国経済の減速をはじめ、いくつもの要因から、かなり厳しい状況にあるのではないかと思う。

 

銀行の預金金利も、この2年の間で1年物の定期預金が4%から2%以下と半減している。投資の減速、そしてクーデターなどによる観光客の減少もあり、タイ経済は思っているよりも悪い状況と言わざるを得ない。しかし日本ではこのような報道はあまりなされず、軍事政権だから、といった論調も目立っている。じいさんなどは『軍事政権の方がむしろ安定していてよい』と言っている。日本ではよく『安倍首相が民主化を促す』などと言っているが、それはあくまで建前に過ぎない。何より庶民はタクシンだろうが、軍事政権だろうが、自分に危害を加えなければ、安定して商売でき、生活できる政権が一番であるのは当然だ。

 

この店は奥さんが全ての調理をしており、80歳を過ぎたじいさんは皿を出したり、ご飯を盛るだけの存在だ。ただこの周辺に住んでいるのは華人ばかりであり、華人でない奥さんには何か壁があるのかもしれない。勿論華人と言っても皆がタイ語を話し、普通話を話せる人は実は多くはない。私がじいさんのところへ行くのも、実は言葉が通じることが大きい。

 

奥さんしかいない時は言葉が全く通じないが、長年通っているので、あるもので適当に作ってくる。いわゆる賄い的な飯であるが、これが何とも美味い。中華料理の要素がかなり入っており、エビやカニも入った炒め物は絶品である。更にはタイ料理のカレーなどが出てくることもある。スープは中国から入ったと思われるゲンチュウというタイの定番スープ。基本的に1食、100バーツを支払うようにしているが、そのボリュームと質から考えるとかなり安い。

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因みにこのじいさんの波乱万丈の人生は、既にコラムに書いている。そのコラムが掲載された雑誌を持っていった時、じいさんは目が悪くて入院していたが、奥さんたちが大変喜んでくれたのを思い出す。その後本人がこれを見てどう思ったのか、全く聞いたことがない。

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