タイ茶を訪ねる茶旅2015(4)バンコック 華人経営のタイ茶

7月10日(金)

サイアムスクエアー

翌朝はスッキリと目覚めた。やはり東京にいるより、バンコックの方が体に合っているらしい。日本人でなくなってきていることを実感する。ゆっくりと旅日記などを書き、昼前にバスでサイアムスクエアーに行く。今日は大学の後輩、Hさんと一緒に、タイ茶の調査に行くことになっており、まずはランチを食べるためにここに集合していた。Hさんは4年前にバンコックに少し滞在していたが、広州などで中国茶を習っており、お茶に対する興味は人一倍ある。

 

この一帯、昔来た時はごちゃごちゃと店が並んでおり、観光客で賑わっていた印象があったが、今は人通りも少なく、スッキリしている。BTSの向かい側には、サイアムパラゴンをはじめ、ショッピングモールがずらりと立ち並び、完全に圧倒されている。ただ昼前にこちらのモール群を歩いてみても、お客は殆どおらず、どの程度儲かっているのかはかなり怪しい。

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サイアムスクエアーでHさんが時々行くというレストランに行ったが、閉まっていた。何とも活気がない。仕方なく近くの麺屋に飛び込んでみた。エビ叉焼麺が美味しそうだったので注文したが、よく見るとなんと香港企業の出店だった。値段は屋台よりかなり高いが、ちょっとお洒落なのか、お客はそこそこ入っている。タイに出てくる香港企業、面白い構図だ。

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BTSサイアム駅から川向うの終点駅、バンワー駅まで乗る。いつの間にかBTSはここまで延長されていた。この駅の下には、現在工事中の地下鉄がここまで伸びてくるらしい。確かヤワラーなどを通過するものだが、川を越えてくるのだろうか?周囲は高層アパートも見えるが、何となく閑散としている。

 

Cha-Thai

ここでPさんと待ち合わせていた。Pさんとは2月にチェンマイでお茶イベントを開催した。実はその際、質問の中に『タイ茶はなぜオレンジ色なのか?』というのがあり、タイ人のPさんたちも答えられず、いつか一緒に調べに行こうと話していたのだ。その後Pさんの尽力により、それが今日実現したという訳だ。

 

タイ茶のメーカー、Cha-Thaiにコンタクトを取り、何とか約束を取り付けてくれた。彼らの本社はこのバンワー駅からでもかなり遠い。Pさんが車を出してくれ、何とか向かう。かなり田舎までやって来て、道に迷う。こんなところにタイの大手飲料メーカーの本社があるのだろうか?かなり不安になった頃、停まっているトラックのドアにCha-Thaiのマークが付いているのを発見した。

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そこは3階建ての個人宅のように見えたが、中に入ると、豪華なロビーがあり、更に2階に上がるときれいな部屋に通される。如何にも華人が好みそうは作りだった。今日は社長が会ってくれるというので、緊張していたが、出てきたのは20代に若い女性。彼女はパワーポイントで会社の概要などを説明してくれた。社員かとも思ったが、何となく品が良いので聞いてみると、社長令嬢だった。

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Cha-Thaiは1945年創業の華人企業。元潮州出身で、先祖は広東で貿易に従事していたが、1920-30年代にタイに移住。一族の一人がタイ人に飲んでもらえる茶としてタイ茶を考案したという。戦争前から売っていたが、戦後会社化した。最盛期は50社もあったタイ茶製造会社だが、現在は2社を残すのみ。Cha-Thaiのシェアは大きく、この市場を押さえている。元々茶を飲まないタイ人が好むお茶を、ということで、タイ北部で栽培されている茶葉を使い紅茶を製造し、そこにフードカラーを使ってタイ人が美味しそうに見えるオレンジ色にして見せたところ、大量に飲まれるようになり、タイ庶民の飲料として定着した。いずれにしてもアイスを入れて飲む冷たいお茶が基本だ。

 

工場はチェンライとチェンマイの中間にあるという。工場での製茶作業は社長であるお父さんとお兄さんが担当し、バンコックオフィスではお母さんと彼女が、財務経理、マーケティング、配送などを担当しているという。見事な華人的家内分業体制だ。お母さんがやってきた。タイ語は勿論、英語も普通に話し、そして普通話でも話す。私とHさんが普通話で話し始めると、彼女とPさんは目を丸くした。日本人がタイで普通話を話すのは珍しいだろう。更にHさんはタイ語も流暢に話し、皆が驚く。語学的なセンスが良い。冷たくて甘いタイ茶を飲みながら話す。

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Cha-Thaiは以前卸業が中心で、道端で売る屋台に商品が流れていた。今もそれは変わらないが、少しずつスーパーなどにも浸透し、現在は高級デパートでの販売も始まっている。最近のグリーンティブームもあり、緑茶が伸びているが、スタバで120バーツするグリーンティーラテが、Cha-Thaiは屋台で35バーツで売っている。勿論質は異なるが、タイの庶民にはこちらの方が好まれている。更にはインドネシア、ベトナムなど他のアセアン諸国でもタイ茶が好まれる傾向があり、安くて美味い飲料として、今後アセアン展開を図っていく予定。お母さんは『それは次世代の仕事です』と娘の方を見て、微笑んでいた。アセアン市場でブレークの予感がある。

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最初は緊張して訪ねたのだが、すっかり打ち解けてしまい、8月初旬にチェンライへ行く際に、こちらの工場を訪問する旨、話が進んだ。お父さんとお兄さんはどんな人で、どんなところ茶を作っているのか、俄然興味が湧いてきた。

 

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