タイ北部、中部を旅する2019(10)戦場にかける橋

取り敢えずカンチャナブリと言えば『戦場にかける橋』だから、そちらの方へ歩いてみる。1㎞程度で橋の近くまでやってくる。そこには慰霊の碑が建っていた。昭和19年に日本軍鉄道隊が、泰緬鉄道建設で亡くなった人々を弔うために建てたと書かれている。毎年3月、ここで在タイ日本人有志が慰霊祭を行っているともある。

 

その横には博物館があったので、まずはそこでお勉強、と思ったが、展示物は多いが核心は突いていないように思えた。諦めて出てくると、ドリンクを売るおじさんが『下も見に行け』という。横に川が見えた。慰霊の塔も建っている。日差しがかなり強い。

 

階段を下りてみると、そこには古い木造の橋の一部が残されていた。これが1942年頃に作られた最初の橋らしい。ここから現在の鉄橋もよく見え、ちょうど列車が通過している。博物館の下に本当の歴史があるように思われた。歴史というのはどのように見るのが良いのだろうか、と考えてしまう。

 

博物館を出て、実際の橋に行ってみた。川の袂に駅があり、ちょうど列車が入ってきたところで、列車を降りる人、写真を撮る人、などでごったがいしていた。多くが橋を渡り始める。私も橋を渡り、その景色を眺めた。橋はとても頑強に見え、景色も良いのだが、この橋が作られた際の過酷な労働、そしてそれを日本軍が強いた、という歴史を考えると楽しめるものではなかった。僅かに来ていた日本人の若い女性たちが、橋でポーズを取り、僧侶をバックに写真を撮ろうとしている姿には、思わず嫌悪感が出てしまった。

 

橋を渡りきると寺が見えたので、そちらへ降りていく。寺の裏側には、中国からやってきた遠征軍を慰霊する場所があった。戦場にかける橋では、欧米人捕虜の悲劇だけがクローズアップされているが、中国人や東南アジア人も沢山犠牲になっていることを伝えていた。こういう歴史は誰かが維持し、語り継いでいかないと、どんどん埋もれていってしまう。

 

寺の方は最近できたものらしく、規模が大きくきれいだったが、特にみるべきものはなかった。川沿いにはレストランなどもあったが、今は誰もいない。お茶を飲むこともできない。暑かったので、また橋を渡り、トボトボと宿へ帰った。ただ明日は電車に乗ってみようと思うようになった。

 

思ったよりずっと暑くて消耗した。部屋でゆっくりと休み、夕方夕飯を探しに出た。すぐ近くにレストランがあった。まだ客はなく、子供がテーブルで学校の宿題をしていた。何となく洋食の気分だったので、簡単なステーキを食べた。そこの料金は本当に良心的で、コーラも20バーツしか取らない。我が宿もそうだが欧米人が多く来るところなので、英語も通じる、こういう店ができるのだろう。

 

7月20日(土)
泰緬鉄道で

フロントの愛想はとても良かった。実はこの宿には日本人の長期滞在者が一人いるというのだが、今はちょうど日本に帰っており、明日帰ってくるらしい。仕事での駐在のようだが、観光客と違い、常駐するとなるとやはり大変だ。朝食は宿に付いており、簡単に食べた。既に多くの宿泊者はツアーなどに出かけたのだろうか、食堂は閑散としていた。

 

取り敢えずカンチャナブリ駅まで歩いてみることにした。2㎞以上あり、ちょっと辛かった。列車の出発は10時半だと確認して、まだ時間があるので付近を散策した。すぐ近くに連合軍の共同墓地があった。イギリス、オランダ、オーストラリアなどの捕虜がここで労働して、命を落とした。一人ずつの墓石があり、名前や年齢がしっかりと刻まれていた。悲しいくらいに日差しが強かった。

 

その横には泰緬鉄道博物館があったので、入ってみた。ここにはその関連の展示がかなり多くあった。一番驚いたのは、この鉄道敷設で最も多く亡くなったのは、マレーシアやビルマから徴用された労働者で、欧米人の何十倍もいたことだった。こういう歴史はやはり語られないのだろうか。時間が来たので、駅へ戻る。

 

駅ではチケットの販売は始まっていなかった。その横にデスクがあるので覗くと、『特別チケットを買わないか』と誘われた。特別車両で、座席指定、ドリンクなども出るのだという。この鉄道の料金は、観光用ということか、外国人はなぜか一律100バーツなのだが、特別チケットは300バーツもする。でもどんなものか知りたくてつい買ってしまった。

 

バンコックのトンブリから来るはずの列車はなかなか来なかった。さすがにタイの鉄道らしい。でもなぜか一部車両は既に停まっている。遅れて来た列車とその車両は何とここで連結された。その作業を見ていると、手でワイヤーを繋いでいたので驚いた。私は特別車両に乗り込んだが、私以外に乗ってくる人はおらず、何と一両貸し切りとなった。こんなことは生まれて初めてだろう。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です