バンコックの茶商を訪ねて2018(3)ヤワラーに残る老舗茶行

10月12日(金)
再度ヤワラーへ

メーソットからドムアン空港へ降り立つと、かなり疲労感が漂っていた。やはり本調子ではない。ただ特に予定もなかったので、ゆっくり空港バスに乗り、地下鉄に乗り換えて同宿に戻った。基本的には3日ほど休養するつもりだった。その旨を伝えにYさんにところに行く。

 

ちょうど話がヤワラーの茶商になった。そうか、先日発見した茶荘の末裔が、『ヤワラーに福建出身の古い茶荘が残っている』と言って、電話までしてくれていた。折角だから彼には会いたいと思ったが、店の場所もよく分からない。するとYさんの会社のスタッフの一人が華人系で、中国語の住所をタイ語に訳して、その場所を示してくれた。

 

そこはファランポーン駅から近かった。電話を掛けると、『明日と明後日は休みだから月曜日に来い』と言われたが、月曜日はもういないかもしれないと思い、『今から行く』と答えてしまった。もう体調のことなど、すっかり忘れてしまい、慌てて宿を飛び出した。地下鉄でファランポーンまで出て、歩いていくとその店はすぐに分かった。

 

集友茶行、この名前も安渓商人の中に入っていた。まさかまだあるとは夢にも思わず、ちょっと興奮気味。中に入ると奥でオーナーの王さんが、お茶を淹れていた。ちょうど台湾人のお茶好き女性が飛び込んできて、3人で工夫式で淹れた鉄観音茶をお茶を飲みながら話をした。

 

この店は王さんのお父さんが若い頃、大いに繁盛したという。97歳のお父さんは健在で、今はバンコック郊外で娘家族と暮らしているという。恐らくはお父さんに聞けば、先日の建峰茶行のことも含めてバンコック茶業界のあらましが分かりそうだったが、それは叶わなかった。

 

それでも王さんから、ヤワラー付近の華人茶商の変遷など、貴重な話を幾つも聞いた。やはり無理しても来てよかった。伊藤園が80年代に出版した『福建烏龍茶』という本を持っていて驚いた。林奇苑の集合写真もこの店の中に保管されていた。あそことは親戚関係にあるのだという。どんどん謎が解けていく。

 

今やバンコックも華人の数が減り、茶を飲む人口も減少しているという。建峰のようにヤワラーを出ていく人も増えている。実は王さんも店はここにあるが、自宅はずっと前にバンナーに引っ越しているというのだ。ヤワラーは生活空間ではなくなってきているのだろうか。王さんの代がいなくなるとタイの華人も完全なタイ人になってしまいそうだ。

 

店を出ると急激に疲れが出てしまった。やはり無理だったのか。気持ちが切れてしまい、ほうほうの体で宿に戻る。その際、近くのパン屋でブドウパンなどを買い込んでみた。宿に帰ると、なぜか食べたくなり、むしゃむしゃ食べた。それからは食事も取らずずっと寝ていた。水分だけは買い込んでおり、とにかくひたすら休息する。これは病気ではなく、単なる疲れだと分かっていたので、その点は安心だった。

 

10月13日(土)
翌日朝起きても体調はすぐれなかった。取り敢えず溜まっていた洗濯物をいつものように1階に出しに行き、後はまた寝ている。そういえばミャンマーのモウラミュインにいた時もなぜかホテルでNHKが見られた。この宿も見られたので、ボーっとテレビ画面を見ていた。それでも少しも回復の兆しはなく、食事も全く頭になかった。

 

普通なら半日寝ていれば、腹が減って起き上がり、外で食べ物を求めるのだが、不思議なほどにその気配がない。洗濯物を回収しても、それ以上は何もしたくない。疲れているので、いつも受けるマッサージすら、その気分になれない。どうすればよいのかと考えているうちに日が暮れてしまう。また残りのパンをゆっくり食べて寝てしまう。また旅の過程である体の調整だろう。

 

10月14日(日)
不思議なことに眠れるのだが、食欲はない。そして熱もなければ、体の痛みもない。腹の調子も悪くない。こいつは何年に一度かという『動きたくない病』に掛かったらしい。全身の力が抜けており、いわゆるやる気がない状態だ。こんなことは久しぶりだが、ちょうど頑張る必要もないので放置していた。

 

それでも明日はタイ南部に向かう予定なので、何とかしなければならない。まあ旅に出てしまえば、最低限には動けることは分かっていたが、出来ればもう少しシャキッとしたいところだ。さすがに何となく腹が減ってきたので、昼にテスコで買い物した際、フードコートで麺を食べてみた。マズくはなかったが、全部は食べられなかった。

夕方にはまた腹が減った。やはりこういう時は日本食が良いのかと思い、近くの大戸屋まで出向いてみた。午後5時過ぎに行っても家族連れが何組もいて驚く。本当にバンコックには日本食が根付いている。私は無謀にもカツ煮定食を注文し、ほぼ完食した。やはり好きなものは食べられるのかもしれない。

 

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