埔里から茶旅する2016(12)台北 夜10時に工業団地へ

5. 台北
宿探し

バスターミナルで降りて、Yさんと別れる。私は今日の宿を決めていなかった。バックパッカーらしく?駅前を歩いて宿を探してみようと思っただが、この考えは間違っていた。バックパッカーっぽい、Yさんだって、馴染みの宿をちゃんと予約していた。今どきのパッカーはネットで宿を予約するのだ。そう気が付いたときはもう遅かった。駅前のきれいなホステルに飛び込んだが『満室です』と3軒で言われ、しかも『今日は土曜日だからどこも一杯かも』と悲しい助言まであった。以前宿泊したことのある日本人経営のゲストハウスはすでに閉鎖された、と聞いていた。最近は当局の規制が厳しくなり、無許可の民泊宿がかなり姿を消したことも、満室の要因らしい。

 

雨が降っており、何となく疲労感が出てくる。駅前には立派なホテルが何軒もあるが、当然料金はかなり高い。それでもそのホテルに入りそうな誘惑にかられる。ここから移動するか、高くても妥協するか、選択を迫られた。普通ならネットで検索すればよいのだろうが、それなら最初からネット予約すればよかった、という後悔が立つので、敢えてスマホからも目を逸らした。すると急に1軒のホテルの看板が目に入った。ここはどう見ても昔ながら駅前ホテル。

 

入っていくと受付の若い女性が何とも優しい感じ。今やこういうところに泊まる客は少ないのか、部屋は開いていた。料金は私の描いていたものより少し高めだが、もう疲れてしまったので、ここに投宿。ツインの部屋でかなり広く、バスタブもある。NHKワールドプレミアも入る。台湾のケーブル放送ではちょうど日本のプロ野球をやっていた。日本ハムの試合は全試合完全中継すると書かれている。日本の台湾選手、陽岱鋼の人気は凄い。陽は福岡の高校に野球留学、そのままドラフトで日本ハムへ。二人の兄もプロ野球選手、妹はバスケの台湾代表というスポーツ一家。台東、アミ族の出身だ。

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そんなことをしていると、すぐに時間が経ってしまい、夕飯に出掛けた。今晩はさっき別れたばかりのYさんの声掛けで、料理人のSさんと昨日先に戻ったIさんと湖南料理を食べるという。Sさんは台北にある日本食の定食屋さんで腕を振るっている。久しぶりの再会である。台北駅前から地下鉄に乗り、市政府前を目指す。ところがYさんからメッセージが入っており、『お店は市政府ではなく、中山でした』と言うので慌てて、乗り換えようとしたが、実はその店の所在地は中山国中。これはだいぶ離れている。二転三転、テンヤワンヤである。

 

店は実にきれい。チェーン店で急拡大しているらしい。如何にも、という感じで、セットメニューがあり、ドリンクなどもおしゃれである。だが台湾人が湖南料理など食べるのだろうか。日本でも湖南料理は知られておらず、四川料理として経営している湖南出身の中国人が多いと聞く。因みに中華料理では一番辛いのは四川料理、と日本人は思っているが、中国人に同じ質問をすれば、ほぼ全員から湖南料理が一番辛い、という回答があるだろう。当然このお店の味付けは台湾人用になっていた。

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夜のデリバリー

楽しく食事をしていたが、時間となり、私だけ退出する。夜も9時過ぎ、どこへ行くのかと言うと、それは全く未知の場所だった。地下鉄なども通っておらずに、仕方なくタクシーを拾う。果たして辿り着けるのか、ただただ心配だった。内湖とは不便な場所であり、その中の工業団地のような場所に行くよう、指示されていた。土曜日の夜10時に工業団地、どうみてもミステリー事件の現場へ行く感覚。

 

タクシーの運転手に行き先を告げると『分った、大丈夫』と言い、快適に車を進めた。これは問題ないな、と安心したが、いざ、団地内に入ると迷ってしまったらしい。私の方が先にそのビルを見付けたが、彼は『いや、こっちだ』と言って別の方へ向かった。そして最終的に私の指したビルまで戻ることになる。『いやー、申し訳ない。老眼なんで』と言い訳したので、私も夜、文字を読むのは辛いから、と料金を支払うと、『いや、これは私のミスだ』といって、50元を返してきた。これが中国なら大もめになりそうだが、台湾の運転手は、自分のミスに対して、責任を取るんだな、と痛く感心してしまった。

 

実はなんでこんなところに来てしまったかと言うと、私が愛用しているPCが壊れてしまい、東京での修理が難しいとわかったからだ。このPCは台湾メーカーのもので、知り合いの香港人が『うちの台湾支社の人間のお兄さんがそのメーカーに勤務しており、修理できると思う』という素晴らしい話を得たので、現物を引き渡しに来た、というわけだ。ところがその紹介された女性に連絡を入れると、『この週末は台北を離れるので、会社の同僚に渡してほしい』といわれ、その会社の所在地が内湖だったということだ。因みにその人はその日、夜勤だったようだ。

 

そのビルの前から電話を入れると、その見ず知らずの男性は『あ、まだ会社に到着していないので、守衛さんに預けて』と言うではないか。携帯を守衛さんに渡して彼に事情を説明してもらい、預かってもらったが、大切なPCを簡単に預けてよかったのかどうか、あとで急に心配になる。この辺が如何にも台湾的な、いい加減さだろう。とにかくミッションは終了した。そしてポツンと、人影もない夜の工業団地に取り残された。

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