埔里から茶旅する2016(8)魚池から良久へ

巫さんが『山の上の茶畑にも行きましょうか?』と言ってくれ、車で上に連れて行ってもらう。そこには景色の良い斜面に茶畑が広がっていた。向こうの山には茶業改良場がある。魚池だな、ここは。ここにもいくつもの品種が植えられており、ちょうど茶葉を刈ったばかりのところもあったが、鮮やか、といった雰囲気があった。道路脇には小さな家があった。巫さんが子供の頃に育った場所だった。『山の上の狭い家で不便だったが、懐かしい。1999年の921地震の時は、下の家が倒壊し、家族全員でここに避難してしばらく暮らした』という。今は農機具などを置く小屋のようにして使っているが、壊すことはできないようだ。それだけの思い出が詰まっている。

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ある意味で921地震があったことにより、この付近の紅茶が復活したというのは、何とも皮肉なことだ。震災からの復興政策の一環として、日本時代に植えられた茶樹の葉を使った紅茶を作ったところ、折からの旧懐日本ブームや紅茶ブームもあって、ヒット商品となった。紅茶で町おこし。台湾と言えば凍頂烏龍茶や高山茶しか思い浮かばなかったが、変化が求められたのかもしれない。ここ数年、台湾各地で蜜香と呼ばれる紅茶が作られ、台湾人も紅茶を飲むんだな、と思わせるようになってきた。日本人も東方美人のブームにより、台湾の蜜香に人気が高まっている。一方英国式紅茶を愛する世界の人々からは、『パンチがない』とか『甘い』とか、評価はそれほど高くはならない。同じ紅茶の世界なのに、何とも面白い傾向だ。

 

夕飯

魚池からあの美容室に戻る。何と我々が来たことを知った葉さんが、3時間も運転して、わざわざ山の上の農場から降りてきてくれたというのだ。これはもう、申し訳ないとしか、言いようがない。そして夕飯に行こうと誘ってくれた。すぐ近くに行くのかと思ったが、車は街を外れて行き、真っ暗な中、高速道路のあたりを通っていく。一体どこへ行くんだろうか、と思っていると、畑の中に大きな建物が見えた。

 

その巨大な建物がレストランだった。魚の養殖が行われており、付近の新鮮な野菜と合わせて調理され、かなり繁盛しているようだった。葉さんと奥さん、可愛い子供、お母さん、そして我々を案内してくれたお兄さんも加わり、賑やかな夕飯となった。昼間見たマコモダケも登場、初めて見た。鶏は地鶏なのか、特に美味しかった。地元の物を地元の人と食べる、何とも楽しい夕飯だった。葉さんはMさんから聞いてはいたが、ものすごく面倒見のよい人だった。そして紹介があったとはいえ、我々を丁寧に扱ってくれた。これは人柄というものだ。

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また美容室に戻り、ちょっとお茶を飲んで帰った。葉さんは『明日連れて行きたいところがある。7時に集合しよう』と言ってくれた。どこに行くのかよくわからないが、我々は明日の午後、別の茶農家の人と会う約束があったが、午前中に戻れるというので、その厚意に甘えることにした。それにしても彼は、若いとはいえ、相当に疲れているはずだ。それでも我々を最大限もてなそうしているくれることに軽い感動を覚える。

 

宿に戻るとYさんが『行き付けのカフェに行く』というので付いていくことにした。結構暗い街を歩いていくと、かなりおしゃれな店があった。室内も穏やかな雰囲気でよかった。ここで今日の反省会。今日一日は長く、そして実に濃かった。カフェラテを飲みながら話す。お茶の飲み過ぎだったので、コーヒーも悪くない。埔里も案外いい街ではないか。ふと気が付くと夜も11時を過ぎており、急いで宿に帰り、シャワーを浴びて、すぐに2段ベッドの下の潜り込み、寝る。

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5月20日(金)
良久へ

翌朝は6時には起きて、7時前に待ち合わせ場所に行った。葉さん兄弟が迎えに来てくれた。車は農作業用のバン。この車でないとそこへは入れないという。かなり険しい山道が想定された。朝ご飯としてパンと豆乳を買ってくれる。何とも親切な兄弟だ。車は梨山に登る道を行くが、途中で逸れた。そこからは山道を延々と行く。民家なども殆どない自然の林を抜けていく。大自然の中に突っ込んだ、というイメージが強い。道はそれほど悪くはないが、アップダウンもあり、かなり揺れている。

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山道で何か作業している人たちがいた。葉さんが何か話し掛けているが、その言葉はよくわからない。顔を見ると原住民の人々なのであろうと推察された。山の中で仕事をするには、そこに住む人々との信頼関係が重要だと言われているが、確かに普通の人間がここに入ってくれば警戒されるのは当然だろう。お兄さんは何かお土産まで渡しているから、相当によい付き合いをしているのだろう。『今度は一緒に酒を飲もう!』、そんな雰囲気で別れた。

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