埔里から茶旅する2016(7)美容室がお茶屋

美容室がお茶屋

そしてMさんから紹介された葉さんの店を探す。住所は持っていたが、Mさんからのコメントには『住所は奥さんのやっている美容院』と書かれており、かなり首を傾げる。お店はないので、美容院で待ち合わせなのかと思う。しかも電話したところ、本人は農場に行っており、不在らしい。取り敢えず紹介されたので行ってみる、という感じになっていた。ちょっと探すと大きなホテルの向こうに、確かに美容室があった。

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ちょうど出てきた女性に声を掛けると、中に招き入れられた。美容室の椅子があり、お客さんがパーマをかけている。我々はなぜここに来たのだろうかと不思議な気分になっていると、男性が出てきて、美容室内に設けられた喫茶スペース?に座れという。そこで彼はゆっくりとお茶を淹れ始める。美容室内で、パーマをかけている人を見ながらお茶を飲む、なんともシュールな光景だった。如何にも台湾らしい、柔軟性の高い世界がそこにあった。

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男性は葉さんのお兄さんで、勿論この街の出身ではあるが、今は台北在住で、たまたま戻ってきたので、対応してくれたらしい。ただ茶葉の置いてある場所も分らないので、その度に奥さんに聞くと、彼女はお客対応の手を止めて、茶葉を出してくれた。Uさんはお茶を2-3倍飲むと、『洗濯物を干してあるので』と言って、鹿谷に帰って行った。雲行きを見て、雨が降るかどうか、わかるらしい。これも如何にもお茶屋らしい。後で聞くと、実際に雨が降ったようだ。

 

Mさんから『もし天府農場のお茶があったら、買ってきてほしい』とメッセージがあったので、聞いてみると、お兄さんは電話で葉さんに確認してくれ、『既にすべて売り切れた』と回答してきた。そして我々が今飲んでいるお茶は、別の高山茶であるという。これは結構美味しいなと思い、興味を持つ。ただその農場も場所も聞いたことがなかった。お兄さんも説明に困っている。まあそんなものなのだ。

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Iさんの目的は日月潭の紅茶にあった。その話をすると、彼は急にどこかに電話をかけ、『もし興味があるなら魚池の茶農家に連れて行く』と言ってくれた。これは願ったり叶ったり、有り難い、ということで、その話に乗り、そして彼の車に乗り込む。すると今度はYさんが『18℃』に行きたいと言い出す。中国語のできないYさんだが、18℃と言うと、その単語は彼にもわかるらしく、行こうという。訳が分からないのは私の方だ。

 

18℃というのが、お店の名前だとわかるのに、時間が掛かった。というより、車がそこに着いて初めて理解した。チョコレート屋さんとか、アイスクリーム屋さんとか言われたが、そこはちょっとしたフードコートのように見えた。実は3年ぐらい前に、ここに一軒の店を出したところ、大繁盛して次々に店を広げ、今では埔里の観光名所にもなっており、大型バスが乗り付けてきていた。お兄さんによると、この付近の不動産価格は18℃のお陰で高騰したという。こういう町おこしの仕方もあるのか、と感心する。ジェラートを食べてみたが、美味しかった。ラーメンなどの食べ物もあり、午後3時なのに、賑わっていた。

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日月潭の紅茶

車は先ほど鹿谷から来た道を戻っていく。そして昔私が行ったことがある紅茶屋さんのある道に入った。まさかそこへ行くのだろうか、と思っていると、あっさりと通り過ぎてしまった。だがそのすぐ近くで車は停まる。そこには茶工場があった。井古茶堂と書かれた看板がある。向かいの斜面には茶畑が見える。中に入ると、女性が待っていてくれた。巫さんは突然の訪問にも拘らず、にこやかに迎えてくれた。この茶工場は、数年前に女性3人で始めたと聞いて驚く。茶業は力仕事、というイメージがある。その昔は紅茶を作っていたようだが、紅茶の低迷期は止めており、ここ数年のブームで生産を再開したという。

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造りが実にシンプルな大きな屋根の下、お茶を頂く。この付近、日本時代は日本人の茶畑だったらしい。その時代に植えられた茶樹はほぼなくなっており、目の前の茶畑の茶樹は30年ぐらい前に植えられたものらしい。中にはかなり新しい木もある。数年前に茶業改良場の指導を受けて、その品種を使い、植えたものだという。巫さんは『茶畑見ますか?』と言って、率先して案内してくれた。かなりゆとりのある植え方で、品種もいくつもあり、ちょっと面白かった。ただ斜面は結構きつく、収穫はそれほど期待できないように見えた。恐らくここは、我々のような見学者のためにあるのだろう。

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もう一度工場前でお茶を飲み始める。Iさんは興味津々で、紅茶に関する質問を始める。女性3人を中心に、親戚も手伝って、紅茶作りをしているという。巫さんのお母さんが出てきて、食べ物を置いていった。初めて食べるフルーツのようなもので、ちょっと辛しのようなものが付いており、ピリッとする。これがさわやかでとても美味しい。農家で出されるこのようなちょっとした食べ物、実に美味しいし、有り難い。このお母さんの人生に思いを馳せる。

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