鉈先生と行く雲南ラオス茨の道2016(8)ラオスで感じ、考える

5. ウドムサイ
中国人の街

結局4時間ほどかけて、まだ日のあるうちにウドムサイに入った。何だかそれだけでうれしい。今日はここに泊まることとなる。鉈先生は前回もこの街に泊まったようで、かなり立派なホテルにチェックインした。1泊44ドルの部屋が豪華に見えるのは、我々のこれまでの苦闘の旅がなせる業である。久しぶりに街に来た、という感じがよい。

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街自体はそれほど大きくはない。前回シムカードを買った店の横にホテルはあった。この辺は特に中国系が多い場所で、恐らくはこのホテルの資本も中国からのものだろう。中国とラオスの交差する街ウドムサイは、今や完全に中国人の街と化している。夕飯も当然のように中華レストランへ行く。結構広い店内は中国人で溢れていた。料理も中国なら、言葉も中国語であり、ここにはラオスの要素が全くない。ある意味で中国を感じさせないのは鉈先生ぐらいのものだった。

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食後、街を散歩してみるが、2か月前と特に変化はない。前より暖かくなっていることぐらいだろうか。もうすぐ水かけ祭りだが、あれはタイ族の祭りであり、この付近ではあまり見られない。ただバンコックなど大都市でもイベント化しているので、ここでも大型の水鉄砲が売られており、当日は多少の水掛けがあるのかもしれない。その水鉄砲ももちろん中国製であった。

 

鉈先生は道端の屋台でマンゴを買った。鉈で切って食べると意気込んでいたが、ついには車の中に置き去りとなってしまい、どんな味だったかはわからない。ホテルに戻るとそのイルミネーションが中国の街のように輝いていた。暑いシャワーを心行くまで浴び、夜はフカフカのベッドでゆったりと眠る。幸せな気分になれる一瞬。

 

4月12日(火)
国境までに考える

翌朝は当然のように早く起きたが、散歩する気力もなく、ただ何となく過ごす。疲労がかなり溜まっており、もし私一人ならここにもう一泊したのではないだろうか。ボーっとネットをやっているとすぐに時間は過ぎ、階下で朝食を食べる。王さんは既に食べ終わっており、散歩に出た。ホテルの内装などは立派だが、朝食は比較的簡単だったので、粥をすすって終わりにした。

 

8時半前にはホテルをチェックアウトして、今日こそは中国へ戻る。ラオスに入ってからはや5日目、これまで中国へ戻るのを心待ちにすることなどなかったが、今回は取り敢えず中国へ戻りたい、そしてこの旅を早く終わらせたいという気分になっている。それがどうしてか、自分でもわからなくなっている。

 

車は5日前に来た道を戻っていく。ポンサリーからの山道に比べれば、平たんであり、道も悪くない。何となく文明に近づいている感覚になる。今の中国が文明的かどうかはかなり疑問だが、物質的な豊かさは、人間の心理に大きく影響していることは当然だろう。ただそれに蝕まれてはいけない、そう思うのだが、つい便利さを求め、楽な方を選び、それを心地よいと感じてしまう。何となく修行者のような気分になり、そんなことを考えながら車に揺られていった。

 

1時間半ほどで行くと、来る時にも寄った少数民族の物売り屋台が見えてきた。鉈先生はまた車を停め、先日の女性を探したが今日はなぜかいなかった。赤ちゃんにチェキを向けると、大泣きされて困る。するとお兄ちゃんが寄ってきて、彼をなだめ、一緒に写真に収まっている。なんだかとても家族だな、と思ってしまう。

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ここに居る人々はもしやすると物質的には恵まれていないようだが、精神的には我々より十分に恵まれているのかもしれない。退屈な日常生活から微かな喜びを見出すこと、それが本当の幸せではないか、とふと考えてしまった。そんな気にさせるのも、ラオスという独特の場所にいるためだろうか。

 

鉈先生は彼らの持ち物を物色して、使っていた鉈を売ってほしいと頼んでいる。前回のベトナムでもそうだったが、彼らが使っている何気ない日用品の中に、何となく価値を見出すことができることを、鉈先生により知った。商売の合間に縫っている民族衣装などもその価値はかなり高いものがあるが、現金にすれば知れた額になってしまう。この世の中はどうなっているんだろう。

 

それから約1時間走って、国境までたどり着いた。相変わらずトラックは長蛇の列だが、乗用車はレーンが違っている。だがそこまでトラックが入り込んできて、我々の通行は邪魔されてしまう。ここでイライラしても仕方がない。まずはゆっくり行こう、そんな気持ちでいると突然前が開けたりする。水かけ祭り前の駆け込みか、本当に通行量が増えていた。私は西双版納で水掛けられることだけは嫌だ、と強く思いながら、国境を歩いて越えた。

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