茶の源流を訪ねるベトナム茶旅2015(19)ベトナム茶道の心

ハノイ散歩

そしてどこかのホテルの2階でランチを食べる。ここもきれいだが、お客は殆どいない。お客がいないので、ツアー客を格安で連れて来る、という構図が見え見えである。基本的にはビュッフェスタイルで、料理が並んでいるが、それをとる人は誰もいない。従業員が暇そうに欠伸をしている。それでもなぜか我々にはセットメニューが用意されている。そして例のドリンクメニューが配られるが、昨晩と似たような料金体系になっており、もうだれ一人、手を出そうとはしない。皆この話には疲れてきている。責任者の説明に納得する人などいないのだ。食事はまずくはなかったが、その場の空気はお通夜のようだった。

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それからハノイの旧市街を散策した。古い教会が相変わらず、いい感じで建っている。道端では美味しそうな食べ物が売られ、一般庶民が楽しそうにランチしている。私もこちらに混ざって、B級グルメを堪能したい、と心からそう思った。樹齢100年は超えるだろうと思われる、如何にも雰囲気の良い木の下で食事がしたい!欲求不満が募ってしまう。

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何故か韓国料理のファーストフード店が紛れ込んでいる。韓国はベトナムでも強さを発揮しているが、韓流ブームの影響もあり、ベトナムの若者にはイメージが良いようだ。メニューを見ると、海苔巻なども売られている。今やアジアの日本料理屋の多くが韓国人経営とも言われている。

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漢字が書かれた門がある。中に入ると小さな廟である。ハノイは中国の影響を色濃く受けている。この廟もそんな時代を反映しているのかもしれない。現在では中国人を嫌っている人が多いと言われているが、既に生活に染み込んだものは、自国文化として取り込んでいる。中国を嫌う日本人も沢山いるようだが、日本も全く同じ状況ではないだろうか。

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ベトナムではバイクに乗る人がかなりいる。道路上の大気汚染は中国ほどではないが、かなりひどい。そこでマスクをして乗るのだが、若者、特に女の子は、キティちゃんの絵柄など、お洒落なマスクをしていて、目を引く。マスクは白、というイメージはここにはない。白だとすぐに汚れが目立ってしまうからだろう。面白い土産になると、買い込む人も。値段交渉をすると、言い値の70%引きに下がってしまう。やはり観光客向けの商売だった。

 

スオンさんの店で

疲れたのでガイドが行き付けのカフェに入る。コーヒーが2万ドン。若者が店の前の小さな椅子に座り、何をするでもなく、ボーっとしている。Tさんが『日本でも若者がこんな感じお茶を飲んでくれるといいんだが』とポツリ。『お孫さんに小さなカフェを開かせて、対面式で抹茶ラテなど売ってみては』と素人考えを披露する。

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過去2回訪れた文廟横にあるスオンさんの店へ行く。M先生とぜひ引き合わせたいと思っていたが、暑い中の散策が堪えたのか、先生はバスで休んでいるとのことで、残りのメンバーで行く。いつもながら古民家を使ったショップは雰囲気がとても良い。ベトナムを代表する茶人であるスオンさんも忙しい中、店にやって来て、我々を待っていてくれた。

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今回はお茶関係者が来ると伝えたせいか、ベトナム茶道について、一通り話してくれ、一部実際に披露もしてくれた。作法はゆったりとしており、日本に通じるものもあるように思われた。だが一番違っていたのは『お茶を飲む時はそれを作った人に感謝します』という言葉。日本の茶道では作り手に感謝することはないそうだから、これには一同感銘を受ける。ベトナムでも、このような茶道をたしなむ人はごく一部だろうが、その感覚は素晴らしい!

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ジャーナリストでもあるスオンさんは、PCに収めた画像でセレモニーの様子を上手に説明してくれた。お茶も渋いが良質な緑茶から、古茶樹を使ったプレミアムティー、更にはジャスミン茶なども飲ませてくれた。スオンさんがセレクトしたお茶、中には産地で茶農家と一緒に作ったお茶もあるようだった。予定の1時間半はあっという間に過ぎてしまい、M先生の待つバスに引き上げた。

 

夕方水上人形劇を見た。私は前に見たので不要だったが、これもセット。ガイドはチケットを買ってきてくれたが、一人10ドル徴収された。そんな料金ではなかったはずだと思い、チケットをもらうと、なんと5ドルという表示。一人から5ドルの手数料をとっている。きっと彼も安い給料で働かされ、チップや両替の手数料などで補うように言われているに違いない。そんな思いで人形劇を見ると、何とも味気ない物になってしまった。夕飯はまた立派なフレンチレストランで。大きな鶏肉を食べて腹一杯になる。ここでも一番安いお茶だけを飲む。ツアー旅行は食事が楽しみ、だったはずが、食事の時間が憂鬱になってしまったのは、誰のせい?私のせい?日本的団体行動にはやはり馴染まないのだろう。

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今晩の日本行きフライトは午前0時半。夕飯を食べ終わると、まだ午後8時台だったが、早々に空港に向かった。3時間半前でもチェックインできるベトナム航空。ガイドは早く仕事を終えたくて、仕方がない様子。それからの長い時間、我々は空港内で、土産物を買い、飲み物を飲み、転寝をして過ごした。驚いたことに、この夜行フライト、日本行きが名古屋、成田、大阪、福岡と4便も運航している。これは日本人の乗客が多いからではなく、ベトナム人や中国人、他のアジア人が乗っているという事実を再認識した。

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今回の旅では茶の木の源流を訪ね、植物学的、また民俗学的に見たお茶、という新しい切り口を学んだことはこれから茶旅を続ける上で、とても大きな収穫があったが、同時に日本の旅行業界の現状を大いに認識し、暗澹たる思いを抱いたのも、また真実である。飛行機は早朝成田に降りた立ち、旅は終了した。

 

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