10月31日(土)
モン族の可愛い子供たち
ついにシンホ村を離れる朝が来た。このホテルには何と4泊もした。朝ごはんをいつもの定位置で食べていると、さすがに飽きてはいた。だが、何となく離れ難いのは、ここの従業員のおじさん、おばさん、お姐さんの、不思議な優しさ、素朴な気遣い、などに魅了されたからだろうか。
いつも1階のフロントに座っている若い女性、Sさんは彼女に洗濯物を頼み、乾かないな、と言いながら、一緒に笑っている。Sさんのように常にアクションを起こしていると、自然に周囲と打ち解けていく。彼女には幼い男の子がおり、すっかり顔なじみになった。だが彼はママに構ってもらう以外、大体一人で遊んでいる。何人かの子供たちが、ホテルの敷地内に入って来て、遊んでいる。それはそれで可愛いのだが、どうにも彼のことは気にかかっていた。
そうこうしている内に、荷物をまとめ、出発した。名残惜しい!5日前に来た道をただ戻るだけだが、気分は大いに違っていた。天気も悪くない。途中で車を停めて、眼下に山並みの中に霧が立ち込める見事な景色を眺めながら、私がここに来た意味を改めて自分に問う。道にはいつ起こったのか、土砂崩れの跡も見える。自分の生きている意味を考えさせられる。
時間はたっぷりあるので、途中でモン族の村に立ち寄る。子供たちが沢山出てきて、恐る恐るこちらを見ている。男の子は普通の格好だが、民族衣装を着ている女の子がいる。皆元気についてくる。彼らは学校へ行っているのだろうか?今日は土曜日で休みなのかもしれない。大人には休みがないようで、農作業で出て行ってしまって留守だった。農作業をする小屋にも人影はない。
子供の中に顔はモン族なのに、髪の毛は金髪の女の子がいた。どうみてもハーフかなと思うのだが、どうしてこんな山の中にいるのだろうか。お父さんがフランス人で、わけあってお母さんの故郷に戻ったのだろうか。どう見ても余計な妄想が広がり始める。ベトナムには、様々な深い歴史がある。
ランチで
それからまた車で移動した。ちょうど昼頃、道路脇のレストランに入った。見ていると、皆鍋を食べている。どうやらここは、新鮮な鶏肉を1羽鍋にぶち込む、豪快な鍋が売り物のようだ。ここでもSさんが鍋奉行として活躍、湯気の立つうまい鍋にあり付けた。何しろ4日間、ホテルの食事に飽き飽きしていたこともあり、ぷりぷりした鶏肉は実にうまいと感じた。
このレストランにはWi-Fiもあると表示されていたが、パスワードを入れても全く反応しなかった。まあこの田舎でWi-Fiは望み過ぎかもしれない。食事が終わると、慣例に倣って席を移して、お茶を飲む。いつもの渋いお茶を飲んでいると、食事したテーブルに柿とみかんの入った袋を置き忘れたことを思い出す。だがそのテーブルに戻ってみたが、袋はなかった。
きっと片づけてしまったのかと思い、ウエートレスに聞いたが知らないという。おかみさんらしい人も知らないというが、厨房の方へ行くと、何とそこに柿がポツンと置かれているではないか。これは何だ、というと、やはり知らないという。だが袋も見つかったので、もう完全にこの人が私の柿をとった、ということが判明した。ではみかんはどうしたと聞くと、悪びれることもなく、『捨てた』と言い放った。さすがに驚いたが、何ともしようがない。
ガイドがやって来て『田舎ではよくあることですから』と取り成したが、本当に田舎では人のものを確認もせずにとってしまうのだろうか。それにしても『謝る』とか、『言い訳する』とか、いうこともない。『あー、見付かっちゃった』という雰囲気である。ちょっと憤慨して車に乗り込むと、ガイドが『お詫びのしるしです』と言って水を一本くれた。うーん?
田舎の人だから、『外国人が怒っているのにどう対処したらよいのか分からなかった』という意味だろうか。ただもう一つ、分かったことは、この辺では、みかんは一般的なものだが、やはり柿は高価なものらしいということ。だから、おばさんもみかんは捨てて、高価な柿だけ残したのだろう。