茶の源流を訪ねるベトナム茶旅2015(13)食事もお茶も雰囲気次第

おじさんの家を辞して、車に乗り、弁当を食べる場所を探した。あまり適当な場所はなかったので、道路脇の平らな場所で弁当を開くことになる。弁当の中身は分かっているのだが、外で食べると気分が全然違う。何となく部屋で食べるより、解放感があり、美味しく感じられる。食事には環境、雰囲気が大切だ、としみじみ。

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食後のお茶はどうするのか。朝からSさんは悩んでいた。そこで私が自分のバッグを探ってみたが、出てきたのは、何と日本のビジネスホテルに置かれているほうじ茶のティーバッグ。こんな物、お茶のプロの皆さんに出すのは失礼だ、と思っていると、Sさんが『これがいい』と言い出す。半信半疑で持っていく。Sさんはちゃんと厨房からお湯をポットに入れて持ってきている。プラスチックのコップすら用意している。そこへほうじ茶バッグを入れる。

 

食事中に皆さんに配ると『これはうまいなあ』という声が聞こえる。皆さん、お茶の専門家である。まさかこれが安いほうじ茶のティーバッグだとは言い出せなくなる。しかし自分で飲んでみても、何とも味わいがある。そうか、食事だけではなく、お茶も環境に左右されるものなのだ。そして長らく日本のお茶を飲んでいなかったので、その味が懐かしく思われる。このような状況下であれば、お茶の質など、大きな問題ではない。これは面白い実験だった。しかしこれがいいと選んだSさん、包丁の見立てだけではなく、商才もあるな。

 

格好いいおじいさん

午後、どのような経緯からか、ある家を訪問した。そこの集落の子供たちがみんなで遊んでいる姿が微笑ましい。するとUさんがバッグから何か取り出した。何と小さな独楽を持ってきていた。ちょっとやってみせると、子供たちの目が輝き、皆がやりたいと寄ってくる。私も何十年ぶりかで回してみた。上手くはできないが、独楽が回ると嬉しい。子供の頃を思い出す。

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この家にも対聯が貼ってある。ヤオ族の家であろうか。天井からとうもろこしが大量につりさげられていた。これは食べるのだろうか、家畜の餌なのだろうか。中からすごく絵になる、白髭を蓄えたおじいさんが登場した。ここは一体何なんだろうか。このおじいさん、近所でも評判のお茶好きだったようだ。早速お茶を淹れてくれる。あのタリエンシスの葉っぱが出てくる。

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これが近くに沢山植えられているようだ。家の裏を上って行くと、丘があり、そこにポツポツと植えられていた。お茶を大量生産しようという計画があったのかもしれないが、どうみても自家用になっている。おじいさんも『今の若者は茶など飲まない』と嘆いており、金になる作物に変わっていくだろうと、将来を悲観していた。まるでどこかの国の話のようだ。

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ホテルに戻ったが、まだ時間が早い。やることもないので、周辺をフラフラした。ここからライチョウという街までミニバスが出ているが、そのバスは韓国の現代製だった。若い女性が民族衣装を着て、バイクに乗りながら携帯で話している。バイクも中国製の安物から、ベトナム製造の日本ブランドに変わってきている。ベトナムの経済的な底上げは確実にある。

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市場へ入っていくと、Sさんが既に馴染となっているヤオ族のおばさんのところへ行く。Uさんが縫っている上着を見て気に入り、値段交渉に入った。おばさんはまけてあげる、とは決して言わず、逆に『このステッチを縫い付けると素敵でしょう』という身振りをした。確かにそれが良かったので、それを込みの料金として、実質値下げがなったものと安心していたが、その場で器用に縫い付けたおばさんは、ちゃんとそのステッチ代金も要求してきた。今更要らないとも言えず、結局おばさんの言い値になる。なかなかやるな、おばさん!

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市場の真ん中で、豚の丸焼きが始まり、皆の興味を引く。このようなパフォーマンスが美味しく感じさせるのだろう。市場の外でも串焼き屋が豪快に肉を焼いていた。腹は減っていないが、何だか食べたくなる。するとSさんが既に包まれていた物を買い込む。持ち帰って食べてみようというのだ。ついでに飲茶で出てくる腸粉のような食べ物も買う。これはうまそうだ!

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ホテルに帰り、皿などがないので、慣れ親しんだ厨房へ行く。おじさんが『何買ってきたんだ』という顔をして、覗き込む。品物を見ると、手際よく、必要な皿やフォークを出してくる。腸粉は、何と甘い味のデザートだった。これにはライムをかけるとうまいぞ、という感じで、奥からライムまで出してきた。

 

そして包まれていた物体を開けたが、それは肉などではなく、本当に謎の物体だった。するとおじさんは、これをつけて食べるといいよ、という感じで、酢や調味料を混ぜ合わせ、付けるためのたれを用意してくれた。この親切には、本当に驚いた。訳の分からない物を買ってきて、と言われても仕方ない中、何とかしてあげようというおじさんの心意気には感じるものがあった。しかし食べた物が何だったのか、最後まで分からなかった。おじさんとは言葉が通じない。

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今日も夕飯はホテルだが、それを簡単に済ませて、外の店で先ほど食べられなかった串焼きを食べ、ビールを飲もうという計画が密かに進行していた。さすがに明日はこの地を離れるので、最後ぐらいはいいだろう、という思いがあった。ところが、何と急に雨降り出した。それもシトシト降るのではなく、ザーザー降り。これは外へ行くなという天からの合図だっただろうか。

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