《湖南お茶散歩 2008》(1)

《湖南省お茶散歩》2008年9月13-15日

中秋節が近づいてきた。今年から5月の労働節の7連休が廃止され、代わりに中国古来の伝統行事の日が祝日に加えられていた。中秋節の3連休、手帳を見ると何故か何も予定が入っていない。この奇跡は生かさなければ??

5月の連休の時に湖南省の旅行を計画していた。航空券も押さえていざ行こうと言う時になり、母親は日本で入院。急遽帰国した。その後休みは全て日本に帰る生活。自分の中で何か物足りなかった。

 会社に入った新人の女性が『携程』というサイトで航空券を予約すると安くて便利だと言う。今まで一度も使ったことが無かったが、3日前だと言うのにいとも簡単に予約出来てしまった。このサイトがナスダックに上場しているシートリップであることは後に知る。

用意は整った。しかしオリンピックの後、急速に仕事が増えてきた。1ヶ月以上停滞していたのだから当たり前だが、急に仕事をすると結構疲れた。こんな調子で大丈夫か??今回も殆ど何も調べずに行く。唯一の頼りは東京の茶商Qさんから紹介されたお茶工場の人のみ。

2008年9月13日(土)

1.長沙1
(1) 長沙へ

パラリンピック開会中の北京は相変わらず、車の制限がある。出発前日タクシーを予約するが、なかなか返事がない。不吉な予感が??それでもどうにか予約が完了。当日は朝6時過ぎに家を出る。道は空いており、25分で空港へ。既にオリンピックの専用線も一部解除になっているが、車は少ない。

3連休ではあるが、空港はそれ程混んでいない。やはり空港の警備体制などに嫌気して控えているのだろうか??チェックイン、イミグレ共にスムーズ。荷物検査だけはかなり厳密で殆どの人がボディーチェックを受けている。私は見事にクリアー??

8時15分発で少し時間があるな、と思っていたら、何と7時35分にはコールされる。早く出発するのか??それでも北京に慣れた私にはとてもそうとは思えず、悠々とトイレへ。それから悠々とゲートに行くと、バスが。そうか、バスだから早く呼んだのか??しかしバスに乗り込んでもいつになっても動かない。8時過ぎて漸く飛行機へ。機内に入ると既に多くの人が乗っていた。そうか、私は1台目のバスに乗り遅れ、最終収容車に乗ってきたのか。呼ばれたら早く行くべきなのだと悟るが遅い。

機内はかなり空席があり、隣もいないのでゆったり。飛び立つと映画が始まる。勿論個別の画面は無い。いつもは本を読んで過ごすのだが、映画の音がやけに耳に着く。うーん??これは日本語ではないか??エアーチャイナの機内で日本語??顔を上げて画面を見ると何とそこには高倉健がいた。

2006年に公開された張芸謀(チャン・イーモウ)監督作品、日中合作映画『単騎、千里を走る。(中国語タイトル:千里走単騎)』であった。この映画の話は丁度2006年2月に雲南を旅行した時何回か話題に出ていた。しかし映画を普段見ない私は関心を示さず、内容も全く不明。

周りを見ると多くの中国人乗客が真剣に見入っている。高倉健の人気なのか、それとも暇なのか??兎に角最後まで見た。中国の一般庶民が上手く描かれている。あっと言う間に機内の時間が過ぎた。

今回はガイドブックすら見ることなく、10時半に空港到着。しかし着陸直前、突然腹痛が??昨夜の四川料理が中ったのか??なぜだ??何とかターミナルへ。特に下痢ではなく、体の中のものが吐き出される。

何の当てもなかった。取り敢えず岳陽にどうやって行くのか聞くと、直接バスが出ていると言う。しかし聞けばバスの出発は午後2時半、3時間以上もここでどうするのだ。長沙市内へ行く空港バスが出ると言うので、急いで乗る。

市内まで40分、17元。快適。市街地の開発が進んでいるのはどこの都市も一緒。民航酒店までに到着。ここからまたどうするのか?窓口で聞くと目の前に駅があるという。では電車で行こう。駅へ向かう。

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(2)長沙で
ところが駅の切符売り場へ行くと、物凄い人の列。まるで80年代の駅のよう。しかも長沙は内陸部の中心都市。広州からも上海からも武漢からも列車が通るため、始発より圧倒的に通過が多い。大きなスクリーンを見ると『無座あり』の表示がちらほら。ということは席の確保はできない。しかも何時に乗れるかも分からない。

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初めて気が付いた。中秋節の前日は皆が故郷に帰る日であった。日本では既に廃れたこの風習、中国人にとっては重要な日である。さて、どうするか?長沙に泊まるか??岳陽行きのバスを聞くと、『東駅、126番』と言う声が皆から帰ってくる。実は湖南省の方言は結構きつい。よく分からないこともしばしば。駅横のバスターミナルで東駅を探すといくつもの線が出ている。一つに飛び乗る。1元。

バスはゆっくり走り出す。どこで降りるか心配になり、停車駅を確認すると『火星鎮』『馬王堆』等の地名がある。うん??ここは何だ。古代遺跡の跡?思わず降りたくなったが、実際に駅に来て見ると陶器市場があったりするだけで、趣は無いので通り過ぎる。

ようやく東駅へ。ここで初めて126番の意味を知る。126番とは駅から東駅の中へ直接入る専用線のこと。私の乗ったバスは道路の反対側で停まり、大通りを歩いて渡る。長距離ターミナルはごった返していた。各地区へ向かう大型、ミニバスがずらっと並ぶが岳陽行きは見付からない。

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聞けば建物の中とのこと。中は切符を買う人の列がある。仕方なく、並ぶ。10人ほど。しかし果たしてここで岳陽行きは買えるのか??今回は焦らず取り敢えず待つ。窓口にたどり着くと46.5元で買えた。しかし何時のバスなんだ??

兎に角乗り場へ。もぎりのおじさんは『急げ』と言う。良く見ると1時10分発。今は1時5分。何と偶然ではあるが、実にタイミングがよい。バスを見つけて乗り込む。ちょっと古いバス。一番後ろの席しか空いていないので、その一番端に座る。後からカップルが来て横に。更におじいさんがその横に。満員となりいざ出発、かと思いきや、あと2人乗ってきた。

そして『私の席はどこ?』と騒ぎ出す。うーん??車掌が全員の切符をチェックする。2人の切符を持たない乗客が見付かる。一件落着か?と思いきや、大喧嘩が始まる。『乗っていいと言ったじゃないか』『切符無しは違法だ』『お金払えばいいんだろう』『いや満席で席はない』『何だと』『降りろ』途轍もない、大声で果てしなく続く。

最後に一人はしぶしぶ降りて出発。もう一人はついに降りない。残った乗客1人は車掌席へ。どうやって解決したのかはついに分からない。中秋節に一刻も早く家に帰りたいのは誰でも同じはずだが。

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バスが走り始めると直ぐ眠りに落ちる。朝5時に起きてここまで来たのだ。無理もない。1時間後目を開けると道路脇の表示が『汨羅』とある。ここは戦国時代楚の政治家、詩人であった屈原が身を投げたと言われる場所である。屈原といえば、亡骸を魚が食らわないよう魚の餌として人々が笹の葉に米の飯を入れて川に投げ込むようになったと言われこれが粽(ちまき)の由来。またドラゴンボート(龍船)は「入水した屈原を救出しようと民衆が、先を争って船を出した」という故事が由来であると伝えられている。

丁度2時間で岳陽に到着。バスターミナルは街中。さてこれからどうするのか?全く何の計画も無い。

2.岳陽 
(1)岳陽1日目
先ずは中秋節の賑わいを考えて、明日の長沙行きのバスの切符を買う。何しろ列車もバスも混雑している。もしキチンと長沙に戻れなければ、この旅の唯一のルールである、予約してある帰りの飛行機に乗る、が守られない恐れがあった。

バスの停まった横にターミナルビルがある。切符売り場では難なく明日午後4時の切符が買えた。番号も1番。何だ、簡単だったんだ。気が楽になる。それから今いる場所がどこか確認するため、売店で地図を買う。おばさんに現在位置を示してもらうと、街の中心。鉄道駅にも歩いて行ける。

かなり疲れていたこともあり、この付近でホテルを探す。ターミナルの向かいのウオルマートが入った立派なビルがあり、その横にホテルの表示があった。結構きれいそうだったので、入る。部屋代260元(朝食付き)で『特別坊』へ。特別って何が特別なんだ??部屋は小奇麗、どちらかと言うとカップルが泊まるような雰囲気。そうか、これが特別だったんだ(ラブホテルと言う雰囲気はない)。これは結構安くて快適な場所が確保できた。

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さて、時間は4時半、取り敢えず岳陽の名所、岳楊楼へ行ってみよう。タクシーに乗る。初乗りが何と3元。安い。運転は地方のそれ(異常に怖い)。10分で到着。何だかきれいなテーマパークに来てしまった感じで少しがっかり。

(2)岳陽楼
岳陽楼の歴史は古い。三国時代、呉の孫権は劉備との戦いに備え、大将魯粛に1万の兵を与え、駐留させた。その際築いた閲兵台がその前身。716年唐代中央より左遷された張悦が楼閣を拡張、南楼とする。北宋時代の重建の際、範仲淹が書いた『岳陽楼記』により名が天下に知れ渡る。その後30回もの改修を重ね、現在の建物は1880年建造。1983年に大改修。唐代の詩人、杜甫、李白、白楽天などの漢詩に詠まれており、風光明媚なイメージあり。武漢の黄鶴楼、南昌の滕王閣と並び、江南三大名楼の1つ。因みにわたしはこれで3大名楼を制覇。

先ずは入場料を払い、中へ。噴水の横には唐、宋、元、明、清の五王朝の岳陽楼のレプリカがきれいに飾られている。特に清代の黄金の楼は目を引く。続いて双公祠へ。双公とは範仲淹と滕子京のこと。中には2人の像が。そして奥には魯粛の胸像もあった。

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岳陽楼は三層。建物の屋根が左右に反り返っており、ユニーク。中には範仲淹の岳陽楼記が刻まれているが、他には特に何もない。3階から洞庭湖を一望すると気分も爽快。陽が西に傾いており、湖面の照り帰りが鮮やか。好きな景色である。

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楼を降りて裏手に回る。岳陽門跡には古い城壁が見える。そして湖に近い場所に茶園があった。入って行くと湖を眺めながらお茶が飲める屋外である。茶店でお茶を注文するとパラソルのある席まで持って来てくれる。よく分からないので50元の君山銀針を注文する。

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細長いガラスのコップに茶葉を入れ、湯をゆっくり入れていく。茶葉がコップの中で舞う。中には一度落ちて又上がっている物も。これを『三起三落』と言うらしい。鮮やかではある。偉大なる毛沢東主席(湖南省出身)も生前愛飲していたとか。

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兎に角お茶も美味しいが、景色もよい。洞庭湖を一望しながら飲むせいであろうか。李白や杜甫になった気分で詩の一節でも出来そうである。屋外の開放感、旅に疲れ、いや北京生活の疲れ、がこの暖かい夕暮れに一気に溶け込んでいく。

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30分もボーっといただろうか。店仕舞いが始まったのを期に腰を上げる。実にもったいない気分である。外へ出ると向かい側に昔の街並みを再現したような建物が見える。行ってみるとよくある土産物屋街。

中に1軒茶店があったので覗く。お姐さんが一生懸命紹介してくれたが、既に少し知識を入れた当方は茶葉を見ても買う気が起こらない。『明日君山の工場に行くんだ』と言った瞬間、彼女も私に興味が無くなった。

鳥の腿焼きを炭火で焼いている屋台があった。思わず購入。5元。ズーランが塗りこまれた味。しかし美味しい。と思って油断すると突然肉から汁が飛び出しズボンが汚れる。ズボンは1枚しかなく、困る。

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そこから岳陽の街を歩き回ったが、これと言って目を引くものは無かった。夕飯はホテルの横のレストランで取る。湖南料理は辛いと聞いていたが、確かに舌に残った。ご飯が何も言わなくてもお櫃で出てきた。何杯でもお代わり出来るようだ。長い一日が暮れた。ベットでぐっすり寝た。

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