ベトナム南部茶旅2023その1(5)ダラット郊外の茶園で

バスが来たと係員が教えてくれて、乗り込むと、やはり先ほどと同じ型のバスで、全く同じ場所をあてがわれた。ここなら一番前なのですぐに降りられるという配慮だろうか。外が暗いということは、これほど怖いものだろうか。やはり行き先が分からない不安は大きい。私はどこに向かっていくのだろうか。

劉さんからは2時間で着くと言われていたが、何と1時間半ほどした所で、突然車掌が下りろという。しかもそこはバスターミナルでもなく、ガソリンスタンドの前だった。本当にここかと尋ねる間もなく、バスは私を残して走り去る。さっき一度連絡した呉さんに電話を入れると迎えに行くと一言。

もし違う場所で降りてしまったらどうなるのだろうか。不安な5分間だったが、車はやってきた。しかも運転手は6年前ダラット空港に迎えに来てくれたベトナム人だったので、一気安堵した。呉さんは夕飯を一緒に食べようと待っていてくれたが、不要だと知り、すぐに事務所へ向かった。

私は6年前確かに呉さんの家に一泊したのだが、ここはちょっと違うような気がする。彼はすぐに茶を淹れて飲ませてくれたが、そのまま寝てしまったので、私もシャワーを浴びてすぐに寝てしまう。やはり今日1日は長く色濃いものだったので、疲れが出ており、ここがどこかも分からないままぐっすりと寝入る。

6月29日(木)ダラット郊外の茶園で

朝早く目が覚めた。周囲は既に明るく、鳥のさえずりが聞こえる。呉さんの姿はなかったが、お茶を淹れた形跡があり、起きていることは分かる。外へ出ると建屋の裏には茶畑が広がっており、牛がのんびり歩いていた。何だかこの茶畑風景、台湾東部でも見たような気がする。

ここは呉さんの会社の事務所。そこから車に乗り、約1時間かかる山の茶畑と茶工場を目指す。その前に腹ごしらえ。ブンボーの店だったが、無料で付いてくる野菜が新鮮で美味い。ホーチミンの野菜の多くはこの付近から来ているらしく、当然鮮度が全く違う。スープもとても美味しい。いい朝だ。

それから車は徐々に山道を行く。途中までは舗装道路で、6年前の印象はなかった。前に車が停まっている。よく見ると軽トラが道に嵌って動けない。どうするのかとみていると、呉さんが率先して降りていき、周囲の車の運転手らに声を掛け、一緒に車を押して、何とか道路上へ持ち上げた。言葉はあまり通じていなかったが、この統率力が、20年もの間、この地で茶業を指揮してきた経験から出ていることは間違いない。

その先は土の道。だんだんと昔が蘇ってくる。当たり前だが6年の間に、大いに進歩があった訳だが、私的には土の道が恋しい。ようやく見慣れた茶工場が見てきた。茶畑はこんなに広かったかなあ。何とも懐かしい。今週茶作りはお休みとのことで、作業している人はいない。従業員もここの宿舎に寝泊まりしているが、どこかへ遊びに行ったのだろうか。静けさが漂う。

茶工場を見学すると、以前と同様の台湾製製茶機械が並んでいたが、その中のいくつかはもう使われていなかった。より自動化を図るため、新たな機械を導入しているという。また現在台湾向け輸出が厳しいこともあり、ベトナム人向けの茶の開発も行っている。更にはちょうど前回訪れた時から始まった茶飲料向け茶葉の生産量が増えている。

呉さんは疲れてしまったようで、寝てしまう。こんなのどかなところにいれば眠たくなる。私は茶畑見学に出た。広々として茶畑、斜面にきれいな風景が広がっている。一部では、数人が作業している。彼らは当番なのだろうか。ここは標高1000mを越えており、ホーチミンの暑さは全くない。ずっとここを散歩していたい気分だった。

昼前に茶畑を離れた。呉さんの車でダラットの街へ向かう。呉さんもしばらくダラットに行っていないと言い、喜んで送ってくれた。6年前も1泊したダラットだが、今回も1泊してからホーチミンに戻ることにした。呉さんが昼ご飯を食べようと言い、以前よく行ったというカレー屋を探した。何とインド人経営らしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です