静岡茶旅2023(3)藤枝から草薙へ

私が訪ねたのは伝統的な問屋さん。ここに戦前静岡で作られた磚茶が保存されていると紹介されたからだった。ただ問屋さんでは先代社長が退き、代が変わっていたため、お知り合いの問い合わせに対して、わざわざ探してくれていた。だが見せられたお茶は皆戦後の黒茶類であり、残念ながら国産磚茶を遭遇することは叶わなかった。まあ、歴史的に見ても静岡で磚茶が作られた時期はほんの一瞬であり、磚茶自体が知られていないのも、無理からぬことだった。

日が暮れた頃、宿に帰り着き、部屋で少し休む。今晩はお知り合いのIさんとSさんと会う。二人ともお茶の専門家であり、学ぶところは大きい。お店は宿の横にあり、地元食材を使った料理がどんどん出て来て、美味しい。それにしても静岡はお茶王国、その歴史も多過ぎてとても整理できない。

4月6日(木)藤枝から草薙へ

朝はゆっくり起きる。今日は天気がイマイチ。それでも傘をさして散歩に出る。昨日と同じようなルートで30分ほど歩いて行き、蓮華寺池公園を目指した。この付近が東海道の旧藤枝宿。昔は栄えていただろうと思える場所。歴史的な雰囲気が漂うと共に、何となく雨も止んでくる。

この公園には『とんがりぼう』と呼ばれた藤枝製茶貿株式会社の建物が移築されていた。確かにきれいになっており、中は土産物屋などが入っていて、歴史的雰囲気は薄れていた。公園内は非常に気持ちよく散歩できる。さくらも満開でよい。藤枝の茶業関連の碑もここに建てられている。郷土博物館もあったが、今回は入らずに駅まで戻る。

荷物を取りだしてJRで草薙駅へ行く。図書館へ行く前にかつ丼を食べようと、駅から歩いて行くと、思ったよりずっと遠い。そして注文したかつ丼はお母さんが一からゆっくり作ってくれる。味噌汁も熱々。というわけで、美味しく頂いた頃には、既に図書館行バスは行ってしまっていた。バスは1時間一本なので、静鉄で隣駅まで行き、そこからゆるゆると登りを歩いて行く。結構疲れる。

図書館ではいつものように歴史資料を漁る。いつ来ても何か発見があるから面白い。ちょっと見たことがある人がいたが、声を掛ける前に居なくなってしまった。きっと静大のK先生に違いない。雨が止んだのでちょっと外へ出る。ドリンクを買ったのだが、それは国産烏龍茶のペット飲料。ついに日本も烏龍茶を自前で作る時代に入ったのだろうか。

裏庭に何と鈴木梅太郎の胸像があると知る。鈴木はビタミンの世界的な研究者で、東大で研究していた他、理科研の創立メンバーにも名を連ねている。牧之原の出身であり、あの山本亮の師匠でもあった。ここでお会いできるとは、何と光栄な。でもなぜここにあるのかは誰も教えてはくれない。

夕方5時を過ぎ、バスに乗って草薙駅に戻る。今晩はタイ人のA先生と待ち合わせ。A先生はティーツーリズムの研究者で、以前タイで出会い、数年前和歌山大に居た時に、シンポジウムにも参加した。彼は今静岡に移っていたので、ちょっと顔を見ようと連絡した。何とも懐かしい。

彼が連れて行ってくれたのは、駅前のタイ料理屋だった。彼の行きつけの店であり、常連さんも多く、皆知り合いのようだった。タイ人がご飯を食べに来る場所なのだろう。奥さんがタイ人でご主人は日本人。奥さんが主に料理を担当している。美味しいチェンマイソーセージなどが出てきて、ご機嫌になる。

A先生はティーツーリズムの本を出版(チェンマイで知り合ったリー先生と一緒に)するなど、精力的に活動している。タイ北部、アカ族の村の事業推進を、ピアポーンと一緒にやっているらしい。次回機会があれば、私もその村へ行ってみたいがどうだろうか。とても有意義な時間を過ごすことが出来た。再会に感謝したい。

夜8時、A先生と別れ、草薙駅から静岡駅へ引き返して、新幹線に乗る。まあ夜帰る場合は新幹線が何といっても便利でよい。窓の景色も何も見えない。ただ目を瞑っていると、あっという間に東京に着いてしまう。これでもう少し料金が安いと有難いのだが、それは無い物ねだりだろうか。

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