インドムナールお茶散歩2014(10)コーチン ビジネスクラスはステータス

ビザトラブル

食事中からまたラトールさんの携帯が鳴り出し、彼は食事もとらずに対応に追われていた。昨日の入試問題がまだ片付かないのかと思っていたら、今日はまた別の問題だった。実はラトールさんの奥さんビバさんと娘ナイニーカは5月に日本旅行を計画していた。これはナイニーカの中学卒業祝いであり、本人の強い希望でもあった。ラトールさんも行けばよいのだが、なぜか2人だけ行かせることになっている。ラトールさんは過去何回か日本へ行っており、今回は行ったことがない2人で、ということらしい。

ところでビザの件である。日本はビザの発給が遅いとか厳しいとかいうことをよくアジアの国で聞く。具体的にどのようなことが起こっているのかは定かではないが、政府が『ビジットジャパン』などというキャンペーンをやっている割には、この辺がお粗末なのかもしれない。

ただ今回のナイニーカの件は、これとは違っている。彼女のパスポートはあと3-4か月で切れるため、ムンバイの領事館がビザを発給しないのではないか、と代行業者が言っているらしい。これは大抵の国の規定に書いてある。『ビザ発給要件:パスポートの残存期間が6か月以上あること』と。しかしなぜそのような規定がそもそもあるのかはよく分からない。パスポートの有効期限内でビザを発給すればよいではないか?

結局ラトールさんが知り合いの領事館員に聞いたところ、ビザは出る、という回答で決着した。まあ逃亡の恐れもない母親付の15歳の少女だ。問題はない。しかしやはり解せない。『余白は2ページ以上あること』はビザを押すためのスペースの問題だから理解できるが。ラトールさんは2日続けててんてこ舞いになっている。

因みにこの2人の日本の旅行、どこへ誰が連れて行くかで、その後も大変だった。正直ただの外国人ではない。肉を一切食べない、日本語がほぼ出来ないインド人母子。食事一つとっても簡単ではない。ビジットジャパンは、このような旅行者にどう対応するのだろうか?

午後はムナールのお茶の歴史に関する資料を探す。だがこの街には本屋がなかった。新聞などを売る店が片隅に本を置いていたり、学校で使う教科書のような物を置いている店はあったが、普通の本屋、というものは存在しない。

仕方なく、一番大きなティーショップへ出向き、聞いてみる。だが『歴史に関するものなど何もない、博物館にあるだろう』と素っ気ない。確かにお茶を買う人がお茶の歴史に関心を持つかと言えばそうでもない。博物館以上の歴史はどこにもないのかもしれない。

カタカリ

夕方車で出掛けた。ラトールさんが『折角ここまで来たのだから、カタカリを見ましょう』という。何だそれ?『日本でいえば歌舞伎に似ている』と言われると、一応見ておこうということになる。街の郊外にある劇場に着くと、既に開演の5時は過ぎていたが、チケットを買って中に入るとちょうど始まった。

確かに顔のメークなどはどことなく歌舞伎に似ていなくもない。上半身裸の男たちが楽器を打ち鳴らし、男女が出てきて掛け合いのようなことをする。かなりユーモラスな所もあり、笑える。お客さんを舞台にあげて、笑いを取るようなこともする。これは劇というより、一種のショーだ。1時間があっという間に過ぎた。

すると別の場所でもう1つの出し物が始まるというので移動した。こちらは格闘技系。券を使ったり、肉体を使い、戦いを再現する。火輪を潜るなどかなりアクロバティックな運動が入っている。男子だけではなく、女子もある。これだけの運動能力をもし他の競技に使えば、オリンピックでメダルが取れるかもしれない、と誰かが言ったのを思い出す。

4月26日(土)涼しさよさようなら

ムナール最後の日の朝を迎えた。何だか警備が厳重で、庭やホテルロビーにもちらほら。聞けばケララ州の首席秘書官が泊まっているらしい。そういうステータスのホテルに4泊も泊まれたことは、私のこれまでの旅にはなかったこと。ラトールさんに感謝しよう。

朝食を食べて、ネットをチェックして、チェックアウト。8時にはホテルを出た。今日はコーチンに戻り、そのまま飛行機でムンバイまで行くため、早めに動き出した。インドでは何が起こるか分からない。

段々山を下って行くと、暑くなってきた。1600mの高地、ムナールが如何に快適な場所であったかが身に染みる。汗が出る。もう止まらない。どうしよう、水を飲むと余計に汗が出た。道の両側にヤシの木が見える。ケララとは元々椰子の木という意味らしい。実に南国らしい木だ。この木を見ていると少し涼しさを感じる?

道は空いており、相当早くコーチン空港の近くまで来た。早めのランチを取る。道端のチャイは美味い、ということを知っているので、敢えて小さなレストランに入った。ホテルで飲むチャイより、こういう店の方が美味い。更には道端の出店の方がもっと美味い。それはなぜなのか、きっと使っている原料が違うのだろう。ホテルは上品すぎるのだ。それではチャイの良さが出ない。

食事はカレーしかないというので、ご飯と共に食べる。これもまたムナールのホテルと違って上品さはないが、あっさりしていて美味い。私は高級料理は口に合わなくなっているのだろうか。それは決して悪いことではない。

ビジネスクラスはステータス

空港に早く着いた。ラトールさんのプネー行きが先に出る。何と私のフライトは早過ぎてチェックインすら1時間先しかできない。空港は小さく、時間を持て余す。土産物屋を見ると、バナナチップを売っている。お茶会用に購入。

実は今回帰りのチケットを間違えてビジネスクラスで買ってしまっていた。あり得ないミスだが、タイバーツとインドルピーの通貨表示を見誤り、安いと思って購入したら、実は結構な額でビジネスだったというオチ。それでも折角買ってしまったのだが、インドのビジネスクラスを楽しもうと思い、チェックインカウンターへ。

普通はビジネスクラスのチェックインの方が速いと思いきや、そこはインド。ビジネス客の方が注文も多く、また捌きが遅いため、エコノミー客がどんどんチェックインしているのに、進まない。イライラ、ところが私の後ろの人々は悠々と並んで待っている。そうか、ここに並んでいるのは速いからではなく、ステータスなのだ。地位のある人は騒がず悠然と待つ。イギリス式だな。私には耐えられない。

更にラウンジは何とチェックイン後に出入り口の方へ戻る。如何にも小さな空港で仕方がない。ラウンジ内も簡単な飲み物があるだけ。実に殺風景だった。WIFIも繋がらず、ラウンジにいる意味をあまり感じない。ボーイも暇そうにボーっとしている。ボーディングの合図もない。そんなコーチン空港を定刻に飛行機は出発した。南インドの茶旅は終わった。

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