茶旅 静岡を歩く2022(4)丸尾文六を追って丸尾原へ

バスで御前崎方面へ向かう。先ほどの丸尾家が御前崎の出身ということで、何か分かればと訪ねてみた。終点まで乗り、そこから図書館を目指す。この辺は浜岡、あの浜岡原発のある場所だった。図書館の人に『丸尾文六』と言ってみたが、誰ですかという顔をされたので驚いてしまった。そして資料もほとんどないので更に驚く。

図書館から2㎞ほどのところに、丸尾記念館があるというので行ってみた。ここは丸尾文六の弟の家系3代を記念している建物で、最近はずっと休館している。横にある高校の初代校長も務めた人物の記念のためにあるようだ。文六についてどれほどの展示があるのかわからない。

御前崎は空振り。それでもどうしても丸尾文六を追いたくなり、文六が開拓した牧之原丸尾原を訪ねたくなった。だが浜岡から丸尾原へ向かうちょうどよいバス路線はなかった。仕方なく菊川行バスに乗り、一番近そうなバス停で下車して、そこから歩くことにした。Googleで一生懸命見ながら、ここだという場所で降りた。小笠高校前だった。

ここから丸尾原を目指す。道は分かりやすい。何と途中、神尾辺りからほぼ茶畑だけが見える。こういう道、思いの外テンションが上がってしまう。ちょうど行き会った茶農家のおじさんとお話しすると『今日は急に暖かくなったが、雨が少ないから今年の茶はちょっと』という。こちらは雨がないと歩くのに助かるが、農業には雨が必要だ。そこから山登りが始まり、喘ぐように足を前に出して頑張った。昔のようには体が動かず、もどかしい。何とか登りきると、そこもまた両側茶畑。何と気持ちが良いことか。

バスが通りそうな道まで出て南下する。ちょうど車から降りた女性に『ここは丸尾原か?丸尾文六さんを調べに来た』と話しかけると、『うちも文六さんと一緒に入植した17人の一人がご先祖。川根の方から来た仲田』というではないか。そして彼女が教えてくれた『丸尾文六記念碑』を探しているとお墓が見えてきた。

近づくと、声を掛けられたので、丸尾文六について聞くと『うちは浜岡から文六さんと一緒に来た』という。ここでは浜岡から来た人、川越人足、元武士の3つの集団が混在しており、それは現在でも続いており、4-5代目で今も茶業を続けている人がいる。墓苑は丸尾家のものだったが、現在の当主は大学教授でこの地におらず、管理委員会に委託されているという。墓石を見ると、明治時代以降、この地の開拓に努め、茶を作った人々が葬られている。

丸尾原水神宮に行ってみると、そこには丸尾文六と仲田源蔵の石碑が並んでいた。ただ古いもので文字は良く読めない。今や丸尾原と名前が付く場所を探す場合、この水天宮が目印だろうか。丸尾文六に始まる茶園、茶作りが今に繋がれているのはさすが静岡だと思うし、ここへ来れば丸尾文六を偲ぶことができると感じられる。

ここまで歩いてきたのは良かったが、いったいどうやって帰ればよいのだろうか。まさかまた歩いて1時間半か。いや歩いて行ってもそこでバスに乗れる保証はない。検索してみると何と、この水天宮前からコミュニティーバスで菊川駅まで行けるという。本当だろうか。バス停を見ると1日に6本出ているが、最後の一本がもう少しすれば来ることになっていたので、それに賭けてみる。

バスは確かにやってきた。いや実に立派な小型バスだったが、乗客はいなかった。しかも料金は100円だけ。このバスのルートは、何と私が歩いてきた道を戻っている。いや全く逆ルートであっという間に小笠高校前、そして菊川病院で停まった。何とここで10分休憩するからトイレに行っておいたら、と言われる。コミュニティーバスの利用者の中心はお年寄りであり、一番行く場所は病院なのだ(だから夕方は誰も乗っていない)。反対周りのバスもここで休息している。

そこから菊川駅を目指して走っていく。私は思い直して、駅の少し前、図書館で降りた。折角丸尾原まで行ったのだから、この歴史を調べておきたいと考えたのだ。古めかしい菊川市の図書館に入り、丸尾文六関連、牧之原開拓史などの資料を探してもらった。さすがにいくつもあり、閉館時間も近いのでコピーを取って持ち帰ることにした。

ところがここでトラブルが発生した。この図書館、コピーは自分で取ることが出来ず、お願いして職員に取ってもらうシステムだった。必要な部分が多くなってしまったのは申し訳けなかったが、お願いすると、半分ぐらい取ってきて『後は大体同じだから取らなくても良いのでは?』というので驚いた。確かに閉館時間が迫っており、また他に業務があるのも分かるが、まさかコピーを拒否されるとは思ってもみなかった。

仕方なく上司と思われる男性のところへ行き、『自分でコピーを取らせてほしい』と訴えると、彼は面倒くさそうに、私の方には何も言葉を発生せず、突然自らコピーを取り始めた。これまで全国で数十の図書館を訪問し、色々とお世話になってきたが、ここの図書館ほど、対応に問題がある例を見たことはない。正直驚いてしまい、言葉も出ない中、料金を払ってコピーを受け取り退散した。

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