熊本佐賀福岡茶旅2021(4)玉名から伊万里へ

雨の中を出発する。今日の午前はお墓探しの旅である。台湾魚池で紅茶を最初に作った持木壮造。彼のお墓が熊本玉名にあると聞き、これまで色々と調べてきたご縁も考えて、訪ねてみることにした。手掛かりはお寺の名前だけ。それでも行けば何とかなるというかなり甘い考えで進む。

1時間ほどで玉名のお寺に到着。案内を乞うと最初は怪訝な顔をしていた住職夫人だったが、私が壮造のお孫さんからもらった家系図を取り出すと『あ、それはこの寺にある家系図を写したものだ』と言い、後は色々と教えてくれた。最近は個人情報もうるさく、身元調査を称して個人を調べる人も来るので警戒しているらしい。とにかく分かったことは、持木家の菩提寺はここだったが今墓はないということ。

それから教えられたもう一つの寺へ行く。こちらではさっきのお寺の名前を出したのでスムーズに取り合ってくれたが、何とここにも壮造の名前はなかった。現在の持木家の当主に連絡すれば何かわかるかもしれないと言われたが、それは私のやるべきことではないと思い、後はご子孫にお任せした。いずれにしても今、日本のお墓制度は崩壊しようとしていることが分かる。

そこから30分。今度は大牟田に寄る。三井三池炭鉱は、三井財閥の収益源だったが、ここから出て、三井の2代目総帥になった男、團琢磨ゆかりの場所として訪ねた。團はもともと福岡出身だから、地元でもっと顕彰されてよい人物だと思う。炭鉱跡はきれいな庭のあるレストランになっており、そこに團琢磨の胸像が置かれていた。もう一つ、新幹線の新大牟田駅前にも團の銅像が建っているが、どれだけの人が彼を認識できるのだろうか。いずれにしても日東紅茶の生みの親は團琢磨だと思っている。

山鹿に向かう途中、道の駅でランチを探す。田舎へ行く時には何といっても道の駅が役に立つ。そして偶にはお茶を発見する。ここでは馬すじゴロゴロコロッケ(通称バカコロ)を頂く。牛筋は食べても馬筋は食べたことがない。元々牛筋が好きなこともあり、美味しく頂く。

それから車で1時間、山鹿に到着した。先ずは山鹿紅茶を復活させているFさんを訪ねた。実は5年ほど前、宮崎で紅茶伝習所の話を聞いていた時、山鹿ならFさんがいるよ、と言われてその場で電話したことがあった。何とFさんもその時のことを覚えていてくれたらしい。

Fさんのところでは、現在は紅茶だけでなく緑茶も作っている。というかこの地は緑茶が主流だが、山鹿伝習所の歴史を踏まえて、Fさんが紅茶を作っているというのが正しい。お茶を頂きながら、色々と資料を見せてもらう。ただいくつか気になる点があった。特に伝習所の場所がよく分からない。

続いて役場に移動して、こちらでもお話を聞く。山鹿もかなり広く、伝習所の場所はやはり特定できない。ここでも志那風とインド風の伝習所が開かれており、特に最初の場所は難しいらしい。さらになぜこの地が伝習所として選ばれたのかについてもよく分からない。ただアレンジした人が意外で、実は緑茶を指導しようとしていたかも、と思ってしまった。

岳間茶の碑も見に行った。大変景色の良い場所に比較的最近建てられたようだ。元々山鹿は江戸時代からの茶産地で、藩主細川家にも茶を献上していたという。明治に入り岳間茶といえば、紅茶から緑茶に切り替えた中川正平を思い出すが、彼もまた可徳乾三と共にシベリア視察に行っている。結局中川の岳間茶は残り、可徳の紅茶は消えていったということだ。最後に岳間小学校に行き、お茶の歴史関連の展示を見学した。明治大正昭和の製茶や茶もみ唄など面白い展示がある。車に乗り込むと同時に雨が降り始め、途中は暴風雨のようになったが、佐賀に着いた時は何となく止んでいた。

6月4日(金)伊万里から糸島へ

佐賀の朝はぐずついていた。本日はOさんとの茶旅、最終日。佐賀市から伊万里へ向かう。伊万里といえば有田と並ぶ焼き物の地であり、お茶関係者は茶碗などを見にいくところだろうが、我々の目的は全く違っていた。この地で生まれた森永製菓創業者、森永太一郎を訪ねる旅だった。

先ずは伊万里川沿いに太一郎生家跡を探す。古民家を改造したおしゃれなカフェがあり、そこで聞くと生家は隣だという。このカフェ、とても居心地がよさそうだったので、ここで現代の伊万里紅茶を飲み、サンドイッチを頂く。するとこの伊万里紅茶を作っている茶農家さんもやってきて、面白い。

お隣は今割烹料理屋になっている。江戸時代から森永家はここで陶器と魚の問屋を営んでいたが、父が早くに亡くなりここを去ったとある。太一郎の苦労の始まりであろうか。続いて伊万里神社を訪れる。ここの上に太一郎の胸像があった。そして何と神社の横には菓祖中嶋神社がある。香橘神社もある。Oさんにとって興味のある分野らしい。和菓子の伝来、伝承、面白い。その街から西洋菓子で成功した太一郎が出たことはどう関係するのだろう。

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