奈良、吉野、熊野、堺茶旅2020(6)堺 謎の南宗寺から仁徳天皇陵へ

南宗寺の門を潜って入っていくと、三好長慶の像があった。この寺は長慶が、1557年父の菩提を弔うために建立した。昔の堺の町割りでいえば、一番端に南宗寺はあったらしいが、大坂夏の陣で焼けてしまい、あの沢庵和尚が再建、現在のかなり広い敷地に移ったという。三好長慶についても、これまであまり注目されてこなかったが、畿内を、そして幕府を支配した信長の前の天下人との呼び方もあるようなので、調べてみたい人物だ。

その敷地内をずっと歩いて行くと、天慶院があった。その門の前には山上宗二供養塔という文字が見えた。山上は利休の高弟で、秀吉により殺された点も利休と共通点がある。この寺は利休との関係が深く、宗二の供養塔は最近建てられたとある。もし戦国末期の茶の湯を知る必要があれば、山上宗二も重要人物ということになる。

その奥に南宗寺があり、拝観料を払うとボランティアガイドに案内される。堺は主要な観光地にガイドが配置されており、何も言わなくても無料で案内してもらえるのがすごい。境内は撮影禁止なので、ただただ集中して話を聞きながら歩く。ここには千家供養塔が並んでいる。利休だけではなく、表、裏、武者小路の三千家がずらっと並ぶのはすごい。しかしなぜここにあるのだろう。因みに利休の墓は京都大徳寺に三好長慶と並んで建てられているという。

津田宗及の墓がある。ガイドは『彼はキリシタンでしたが、死ぬまで言いませんでした。ただ墓には十字架が、灯篭にはマリアが彫られています』というのは印象的だった。利休や宗久はキリシタンを疑われながらも、恐らくは違うだろうと言われているが、宗及だけは本物だったわけだ。古田織部作と伝わる枯山水庭園や利休ゆかりの茶室、実相庵などを茶関係として興味深く拝見する。

何と歩いて行くと、徳川家康の首塚や墓にも出会ってしまう。言い伝えでは夏の陣で真田勢に追われた家康は、後藤又兵衛の槍で刺され、ここまで落ち延びて絶命し、その後の家康は影武者だったというものだ。江戸時代は歴代堺奉行が赴任後先ずここを参拝したとの話などが信ぴょう性を高めているが、どうだろうか。唐門は旧東照宮の門だった。

そこで一旦宿へ帰ろうかと考えたが、地図をちらっと見て驚いた。何とこの南宗寺から僅か1㎞ちょっとの場所に、あの仁徳天皇陵があると書かれているではないか。私は小学生の時から歴史好きだが、一度は仁徳天皇陵を見てみたいと思って50年になる。これは行かねばなるまいと歩きだす。江戸初期から古代へのタイムスリップはすごい。

だが仁徳天皇陵、という行先表示は見付けることができなかった。方向は間違っていないのでそのまま行くと、堺市の図書館があり、先ずはここで資料を漁る。キリシタン関連の本など興味深いものが多くあったが、とても読み切れないので出てきた。そしてその横には堺市博物館があり、更に歴史見識を高める。ここの古墳群が世界遺産に登録されて、注目が集まっているようだ。外には利休だけでなく、紹鴎の像などもある。

そしてついに博物館の向かいに見える古墳に向かった。ここがいわゆる仁徳天皇陵であったが、その参拝所に行って見ても、あの教科書に載っている写真のような古墳は全く見えない。大き過ぎるのだ。向こうに渡ることもできない。だから博物館で「仁徳天皇陵古墳VRツアー」が行われていたのだが、何とか実物は見られないのか。前には堀があり、その向こうにはこんもりした林が見えるだけだった。ここにもガイドがいたので聞いてみると、『一応お勧めは三か所』と言われたので、そこへ行って見ることにした。もう何となく意地でやっている感がある。

最初に訪ねたのは、JR百舌鳥駅南側の陸橋の上だったが、ここではほぼ何も見えなかった。そこから古墳の端を歩いて1つ向こうの駅へ行く。みくにん広場というショッピングモールの上から見ると確かに古墳の一部は見えるが、木々に深く覆われて全貌を見るまでには至らない。そして最後に堺市役所高層館21階展望ロビーにも上ってみた。ここなら高いところなのでよく見えるだろうと思って勇んで行って見たが、遠すぎて僅かしか見えなかった。結局ヘリコプターに乗って上から見ない限り、あの風景には出会えないことを結論付けて終わった。何とも寂しい。

一体どれだけ歩いたのだろうか。相当疲れた上に、昼ご飯すら食べていないという現実に直面した。だが時刻は午後3時を過ぎたばかり。こんな時間に食事ができるところとなると、チェーン店しかなく、牛丼屋で牛鍋を食べて何とか落ち着く。そして30分ほど歩いて宿に辿り着き、チェックインすると、もう外に出る気力は全くなく、その日は部屋で寝込んでしまった。ここ数日はずっと人と一緒に行動したので、一人で好き寝られる喜びもあったかもしれない。

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