中国地方西部茶旅2020(3)佐々木小次郎と静御前の墓参りをして

7月20日(月) 山中で驚きの発見

朝食は早めに食べた。おにぎりとみそ汁、サラダにたまご、十分な量だった。宿泊客がそれなりに居たことはこの時に分かった。食堂にスタッフはいたが、フロントはやはり誰もいなかった。チェックアウトはカギをボックスに入れるだけ。とても簡単でよい。

9時にUさんが車で迎えに来てくれた。Uさんは島根県と山口県の県境に住んでおり、車で1時間ぐらいかけて萩に来てくれた。事前打ち合わせはしておらず、彼女は今日、萩を回ろうと考えていたようだが、私の昨日の行動を聞いて、素早く全てを変更してくれた。この機転は素晴らしい。

『じゃあ、これから珍しいお城の跡を見に行こう』と言われ、キョトンとしていると、萩市大井の海岸沿いに着いた。昔漁港だったのだろうが、今は実に静かで人影もない。そこから少し上ると、鵜山(うやま)という丘があった。そこに壠(グロ)と呼ばれるお城の外壁、石組みのような構造物を突如出現して驚く。

グロはかなり高い石垣で、沖縄で見たグスクを思い出す。グロとグスク、どこか音も似ている。ここは城なのか?元寇の時の防御だったのか?グロに関する詳しい資料は全くないとのことで、真相は闇の中である。近くには湊古墳などもあり、この地域がどの程度の歴史を持っているのかも含め、まさにミステリーだ。そして簡単な丘なのに、道に迷ってしまうという不思議。なんだろう。

そしてなぜUさんはこんな場所を知っているかも謎だった。その理由はいとも簡単で、『山の中に野生の茶樹が生えていないかを探して、島根、山口などの山間部を訪ね歩いていると、自然と出てくるのだ』というので、これまた驚いた。まさにUさんならではの茶旅が展開されている。

そこから今晩のおかずを買いに行く。新鮮な魚が沢山車に積み込まれた。私はただ車の助手席に座っているだけで、どこへ行くのか、今どこにいるのかもよくわからない。そして今度は『お墓参りに行きましょう』と言われ、また車に揺られる。阿武町という土地の山間に到着する。何と佐々木小次郎の墓と書かれているではないか。その墓は古びており、文字もよく読めない。正直『小次郎って、いつ死んだんだ』などという愚問が頭を過る。そう、彼は巌流島で死んだのだ。

佐々木小次郎という名は有名だが、その生涯について知っていることはわずかだとこの時気づいた(先日小倉城には行ったが、何も勉強しなかった)。そしてここにあった説明書きに興味を持ち、調べることにした。まさか小次郎の妻がキリシタンで、と言われると、もう頭は真っ白だった。そしてササっとウキペディアで小次郎を探ると、何と巌流島の小次郎は69歳だったとある(戦前の定説?)ではないか。妻は妊娠中とあるから、小次郎は69歳で子をなしたのか(何となく加山雄三の父、上原謙を思い出す?)?調べた結果がこちら。

それから、道の駅「うり坊の郷katamata」というところにも寄った。田舎では何といっても道の駅が頼りだ。むつみ肉と書かれた猪肉を中心に奥あぶ清流米やトマトソフトクリームが名物だという。ここには日干番茶が売れられており、今回の旅の目的、『日本の山間部の茶業を訪ねる』がようやく登場した。

そして更に墓参りが続く。今度は何と静御前だ。静御前は小野小町などと並び、美人ということもあってか、その墓は全国にあるという。だが義経や静ゆかりの地といえば、東北、京都、鎌倉などと思われ、少なくとも山口に関係があるとは思えない。

田んぼ道を行くと、『静御前の墓』という看板が数十メートルおきに出てきてびっくり。よほど行政が力を入れているのだろう。しかしよく見ると『伝説』という文字も見える。その墓は少し山を入ったところにあった。母親磯禪尼と義経の子の墓も一緒であるが、かなり古びており、ちょっと崩れかかっている。果たしてこれは本物なのか。

そんなことを考えている私の横でUさんは真剣に何かを眺めていた。このお墓に通じる参道に茶樹が植えられていたのだ。こちらはどう見ても最近のものだが、一体だれが植えたのだろう。その意味を知りたくて、そして静御前の歴史を知りたくて、何と町役場に押し掛けた。静については、一応資料はあるものは正直よくわからない(義経と壇之浦が結びついた?)いう。

茶樹についても『そんなのあったっけ?』と言われるも、その時偶然電話が鳴り、何と掛けてきた人のお父さんが植えたことが判明する。その家を教えてもらうとさっきの墓のすぐ近くだったので訪ねて行ったが、あいにく留守で事情を聴くことはできなかった。しかしこれは何とも面白い展開だった。帰り掛け、教えられた道の駅に行くと、静御前の像まで建てられていたが、地元の人も訳がわからないのではないだろうか。

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