《雲南お茶散歩 2006》易武・孟海(2)

(4)茶の老木を求めて

羅さんが責任者に何か聞いている。そして突然外に出る。責任者がバイクを指差す。全てが現地のコトバで話されている為、全く分からない。羅さんはバイクに跨る。そして後ろに乗れと言う。何とこのバイクに乗って茶の老木を探しに行く。信じられない。

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茶の老木はここから山の中にかなり入ったところにあるらしい。そこまで車では入れない。歩くとすごい時間が掛かる。そこでバイクである。私はこういう乗り物が苦手である。スピード恐怖症である。しかし意を決して後ろに乗る。茶木の為である。ここまで来るのにどれだけ苦労したことだろう。多少の障害は乗り越えねばなるまい。

しかしこのバイク旅行は予想以上に厳しいものであった。何しろ山道はアップダウンが凄い。ちゃんと掴んでいないと振り落とされそうである。まるでロデオ??のようだ。おまけにこの山道、何故か石が敷き詰められている。しかも所々石が切り立っていてかなり危ない。その中を羅さんは懸命にバイクを転がしていく。

 

初めての道でしかもバイクに慣れていないという羅さんの後ろで生きた心地がしなかった。石の合間を上手くすり抜けて行くものの、それなりにスピードを出すと怖い。もし横転すれば、狭い道のこと、下に落ちしてしまう。何度か目を瞑ったが、幸い不幸は起きなかった。

20分ぐらいそんな道を行くと村があった。羅さんはこの先に茶畑があるか聞く為に家に入っていった。私はようやくバイクから解放されて、ホッとしながら周りを見回す。家畜の黒豚がいた。先日今回の旅行をアレンジてくれたQさんに『雲南の豚と人々』(伊藤真理著 JTB)というユニークな本を紹介されて読んでいた。読んだというより写真集なので眺めていた。日本人女性が雲南に何度も通い、豚を取り続けたというのが面白い。その写真で見たのと同じような豚が目の前にいる。

鶏も元気に走り回っている。昼前の暖かい日差しが降り注ぎ、物音も殆どしない静けさの中、私は何となく幸せを噛み締めていた。何故かは分からなかったが、以前もミャンマーの山中で同じ気持ちになったことがある。やはり私は昔こんな場所で生活したことがあるのだろうか??

茶木はさらに先にあるようだ。再びバイクに乗る。すると村から夫婦に子ども2人を乗せた4人乗りバイクに追い越される。向こうは皆笑っている。何と言うことだ。こんな危険な場所で平地と変わらない運転をしている。しかも1家4人が1台に乗っているのである。目を疑ったがあっと言う間に行ってしまった。山の生活は慣れであろうか??

10分ぐらい行くと木こりが木を切っていた。さすがに羅さんも疲れたらしく、バイクを停めて木こりと話している。確かにこの下には野生と思われる茶木がある。勿論古くは無いが。古い茶木は既に殆ど枯れ果てているらしい。証拠にいくつか木の切り株が見つかる。

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暫く茶の木や風景を写真に収める。空気がよい。深呼吸が気持ちよい。ここで昼寝でもしていればさぞや気分がよいだろうと思ったその時、携帯電話が鳴る。F夫人が心配してくれていた。彼女に朝電話した時は電源がオフであったが、その後電話をくれていた。既にタクシーで移動中というと羅さんと話をして色々と指示してくれていた。今回は昼飯をきれいなレストランで食べさせるように羅さんに言ってくれていた。

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同じ道を引き返す。勿論時間は大幅に短縮された。やはり山の生活は慣れである。途中でお茶を作っている家を見かけたが、そのまま通り過ぎた。きっと伝統的な茶作りをしていたのだろうが、羅さんが疲れていたこともあり、戻ることにした。残念ながら老木を見るという目的は達せられなかったが、いい経験をした。

(5)昼食
茶工場に戻り、バイクを返す。丁度昼時である。しかし彼らはまだ仕事中ということで羅さんと2人、レストランの場所を聞いて行く。しかし易武の町は本当に小さい。道の両側に200mぐらい建物があるだけ。あとは山である。全部で数十の建物である。寂しい。

 

易武は明朝時代より茶の生産が始まり、清朝時代初期、中期には生産量が最大となる。当時は付近一帯が茶畑。茶を口に入れると甘みが出ると遠くはチベットの商人が易武まで足を運んで買っていったという。茶馬古道のルートにもなり、茶を扱う豪商が軒を連ねて栄えたと言われている。

しかし今日その面影は全くない。どう見てもそんな雰囲気は無い。殆ど人も通っていない。教えられたレストランがどこかも分からない。すると茶工場の人がバイクで教えに来てくれた。

レストランといっても建物の1階が開いており、中にテーブルが3つあるだけ。勿論お客はいない。この家の子どもが遊んでいた。お客が来るとウエートレス??に早変わり。テーブルを片付ける。羅さんは奥に入って注文している。何があるか食材を確認しているようだ。

戻ってくると突然大きな筒を引き寄せる。タバコに火をつけて、そのタバコを筒の下の方にある受け口に入れる。顔を筒の上に近づけ思いっきり吸い込んでいる。煙が出てくる。これが雲南の水タバコである。はじめて見た。何故か感動した。昔の習慣だと思っていたことを目の前でごく普通にやってくれる。

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料理が出て来た。先ずはスープ。川で取れた小魚が浮いている。飲むと酸っぱい。山菜で酸っぱい味を出すものが入っている。次に春菊のような山菜の炒め物。そして豚のレバーとねぎの炒め物。これは絶品であった。放し飼いの黒豚の新鮮な肝臓がこんなに美味しいとは。

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スープを飲むとそのお椀にご飯を注ぐ。これは台湾の茶農家でもやっている。私のようにスープを飲みながらご飯を食べたい人にはちょっと残念。しかし物凄い量を食べた気がする。雲南に来てから毎日食べ過ぎである。今日はご飯にありつけるか分からなかった。そういう状況であれば、本能的に食べる量が増えるのであろうか??しかしこれだけ食べて僅か35元である。田舎の生活がしてみたい??

(6)熱帯植物園
この町にいる必要は無くなった。しかし羅さんと一緒に来て本当によかった。もし彼がいなかったら、茶畑も茶工場も見ることは出来なかっただろう。それ程この辺りは寂しいところだ。何よりもバスで到着した瞬間、途方に暮れる自分が容易に想像できる。まさに運、いや縁である。

F夫人からまた電話があった。羅さんに色々と指示している。聞くとあと100元払って孟論にある熱帯植物園に行くようにとのこと。もうリモートコントロール状態である。しかしこんなアドバイスが想像以上に良かったりする。行ってみる。

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帰りは来た道を逆に行くだけ。来るときよりは大分早く感じられる。腹も一杯であり、眠たくなる。朝の緊張は全く無くなっている。一仕事終えた雰囲気である。非常に暖かい日差しが車の中に差し込む。

2時間ぐらいで孟論に到着。川沿いに入り口がある。車で中に入る。直ぐに切符売り場があり、60元を払う。結構高い。最近中国の観光名所はどこも入場料が高い。何となく釈然としない。

切符売り場からまた車に乗る。どこまで行くのかと思うほど、走ってやっと停まる。羅さんが言う。ここで待っているから自分で歩いてくれば??確かに広い。彼には昼寝の習慣があるので、ここで休息を取ったほうが良いようだ。

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歩き始めると南国の椰子の木が沢山並んでいる。そして博物館がある。その近くに大きな木が見える。近寄って見ると何と竹が凄い数束になっている。これが遠くから見ると大木に見える。面白い。暖かい午後の日を浴びながら横に芝生に寝転がる。極楽、極楽。

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博物館には団体観光客が沢山いた。暑いので皆屋内にいるようだ。大木が絡み合った不思議なものが展示されている。『締殺現象』と書かれた説明書きを見るとかなり恐ろしい。但しこれは自然の現象であり、決して人を殺したりはしていない。

 

屋外に出ると池がある。まるでゴルフのアイランドグリーンのような場所があり、木々が元気に伸びている。本当にゴルフ場を思い起こさせる。『空中花園』と呼ばれている華やかな大木もある。枝が不思議にくね曲がり、庭に花が咲いているように見えるという意味らしい。空も青い。伸びをすると気持ちが良い。

木造家屋が見える。人が住んでいる。従業員の宿舎であろうか?子供達が遊んでいる。長閑な光景である。外に鶏がいる。豚もいる。その向こうには何と数羽の孔雀がいる。その孔雀が、何と何と、羽を広げたり、閉じたりしている。まるで練習しているようだ。何羽物が一度に羽を広げる姿は圧巻である。

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園内には雲南らしく、漢方薬に使われる材料になる木がいくつも見える。サボテンなども使い道があるのを見て驚く。中国人は机と椅子以外四足は何でも食べるといわれるが、きっとどんな木でも食べる、煎じて飲むのであろう。

出口の横には川が流れている。何とも自然である。橋が架かっている。写真を撮りたかったが、橋は軍事機密というのが「中国の掟」??であるから、止めておいた。その後川沿いに景洪に向かうと、途中で川の上に高速道路を通そうとしていた。高架の建設が行われている。羅さんによれば、昆明からラオスを経由してバンコックまでハイウエーを通すという。2000年頃計画を見た時は嘘だろうと思ったが、今の中国にはそれを実行する力がある。あっと言う間に出来るかもしれない。しかしどう見ても長い道のりであるが??

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この他この辺りには2つの計画がある。『西部大開発』の名の下に政府が主導する。アジア縦断鉄道はシンガポールを起点にタイを通り昆明まで。将来アジアのオリエント急行が通るのでは??メコン川―瀾滄江水路は中国、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの6カ国を通る。既に国際航路が造られている。

そんなことを考えながら、約2時間掛けて景洪に戻った。夕方の5時を回っていた。長旅が終わった。

(7)景洪の夜2

再び金版納飯店にチェックイン。しかしただチェックインしないのが私。当然のようにディスカウントを要求した。1泊200元であるが、結局3泊するわけだから、連泊割引を要請した。すると意外にも強気に割り引かないという。

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しかしここで引き下がる私ではない??実は羅さんからこのホテルの現地での値段を聞いていた。170元がターゲットであった。そのことを告げると相手のお姐さんは少し怯んだ。そして『実は改修した部屋で170元のところがあります』と言う。部屋を見に行くと多少狭いが小ぎれいである。2階の角部屋を押さえて満足する。兎に角言ってみるものである。

部屋で少し休んでから、外へ出た。インターネットでメールを確認したかったが、ホテルでは出来なかった。ホテルの裏にネットカフェがあるという。面白そうなので行って見た。私は中国でネットカフェなる所へ足を踏み入れたことが無かった。

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入ると凄い数のPCが並んでいた。殆どのPCで若者がネットゲームに熱中している。ヘッドホンを着けているせいもあり、誰も周りを気にしない。ひたすら画面と格闘している。私も席に着く。受付で貰ったカードを差込むと簡単にメールが見られた。但し日本語の対応には多少時間が掛かったが。

30分後に精算すると何と僅か1元であった。これは安い。この値段なら若者がずっとゲームをやれるわけである。PCは韓国製、ソフトは海賊盤といった安価なもので、これで結構儲かるのかもしれない。

横道に入ると果物を売る屋台がある。南国はバナナが美味い。バナナの屋台に近づくとおばあさんが『美味しいよー』と呼びかける。思わず買い込む。7本のバナナで2元。とても1本買うわけには行かない。その場で食べると熟れていて美味い。

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部屋に戻る時、プールサイドの売店でビールを買う。暑いので冷たい物が欲しい。ビンビールしかない。名前はズバリ瀾滄江。中国各地には地ビールがあり、各地各様の味を提供している。瀾滄江は南国らしく軽いビールで1本簡単に飲んでしまう。そして買ったバナナを3本食べると腹一杯でそのままベットに倒れ込み寝てしまう。

 

夜中にちょっと起き上がるとトリノオリンピックの中継をやっている。しかし中国である。日本選手などは出て来ない。フィギュアスケートもペアが流れていた。フリーの演技で男性が女性を投げた際に転倒し怪我をしたペアが何故か銀メダルを取っていた。中国団団長は興奮して『中国の精神が、魂が・・』と叫んでいた。

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